連載
posted:2024.9.24 from:福岡県糸島市 genre:食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
※野生植物は毒を持つものもあるため、必ず毒性がないか調べてからつくりましょう。
※採取する際は、土地の持ち主さんに許可をとってからにしましょう。
こんにちは。
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
「スーパーには並ばない、オツな味」と題した、
あまり知られてはいないけれど、
身近かつ、意外とおいしい植物たちをご紹介するシリーズも3回目!
ほうれん草のような味わいの野草「ハゼラン」、
市販品のあの味が楽しめる「アロエ」に続き、
初秋の山の味覚「イヌビワ」と、そのアレンジレシピをご紹介します。
* * * * *
棚田で草刈りをしていたら、
狩猟採集が大好きなシェアメイト・けいたくんが
道端の木になっている小さな黒い実をもぎ取り、
「これ、食べられるんですよ!」
と教えてくれました。
彼は以前、山奥でガスなし水道なしのハードな暮らしを実践していた野生児。
先日は、庭で見かけたヘビを素手で捕まえていて、
そのワイルドっぷりには驚かされるばかりです。
野生動物だけでなく、植物の生態にも詳しい彼が
今回教えてくれたのが「イヌビワ」の実。
田んぼの近くなどでよく見かける雑木ですが、
この実が食べられるとは知らなかった!
ただし、食べられる実(雌株)と、食べられない実(雄株)があるのだとか。
赤くておいしそうに見える「雄株」は、
黒く熟すことはなく、食べても甘みはなくて、パサパサしています。
さらに、実のなかには「イヌビワコバチ」という小さな蜂が棲んでいます。
とても小さいため、見た目にも、食べても、わからないほどだそうですが、
食べるのはちょっと抵抗がありますよね。
山でイヌビワの実を見つけたら、黒く熟した「雌株」を選びましょう。
イヌビワはクワ科イチジク属で、見た目も味もイチジクに似ています。
実の大きさは1〜2センチで、夏から秋にかけて黒っぽく熟していきます。
熟れた実を手にとるとやわらかく、
半分に切ると小さな種がたくさん入っていて、イチジクにそっくり。
また、実を傷つけると、ペトペトした白い乳液が出てきます。
名前の由来は
「果実の形がビワに似ているけれど、ビワほどおいしくない」
ことから来ているそう。(イヌは“劣る”という意味)
確かにビワほど華やかでジューシーさはありませんが、
素朴な甘さとプチプチした食感が楽しい。
これはいろんな料理に合いそうだぞ!
とワクワクしてたくさん収穫しました。
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まずは、そのまま「生食」で。
お皿にイヌビワを盛り、いただきもののブルーチーズを添え、
庭で摘んだ和ハッカ、自家製のハチミツ、最後に畑のフェンネルを散らして完成!
白と黒と緑で見た目もおしゃれ。
お酒に合いそうな上品な味でした。
イヌビワのこの風味、イチジクのレシピがそのまま応用できそうです。
続いては「ジャム」。
鍋にイヌビワ、イヌビワの半分〜同量のお砂糖、お水少々、白ワイン少々を入れて、
くつくつと煮込みます。
最後にレモン果汁を入れると、色がパッと明るくなり
きれいな赤紫色のジャムができあがりました。
イヌビワジャムに生ハムとチーズを合わせ、パンと一緒にいただきます。
生ハムなどの塩味とジャムの甘酸っぱさが混ざり合って、
こちらもお酒が進む味。
ジャムはお肉にも合いそうだぞ、ということで、
クラッカーにイベリコ豚のパテと一緒に乗せたら、
飛び上がるほどのおいしさでした。
単体では素朴な味のイヌビワですが、
ジャムにすることで一気に華やかな味になりました。
小さな種の歯応えもアクセントになって、食べ方としては一番好きかも!
そして最後は、「焼きナスとイヌビワのバルサミコ酢和え」。
以前、イチジクと焼きナスの和え物を食べたときに
とってもおいしかったので、
きっとイヌビワでもいけるはず! と思い挑戦してみました。
ナスをしっかり焼いてから皮を剥き、イヌビワと混ぜたら
オリーブオイル、バルサミコ酢、塩、胡椒で味つけ。
おいしいけれど、イチジクに比べると甘さが控えめなので、
ちょっとぼんやりしたかな? という印象。
少し蜂蜜を加えてもおいしいかもしれません。
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3つのアレンジレシピでイヌビワを味わってみましたが、
イチジクに比べると、甘みが少ないため、
ジャムにしたり、甘さをプラスして濃いめに味つけすると
おいしさが倍増します!
今まで、食べられそうな木の実を山で何回か味見したことがありましたが、
苦かったり、酸っぱかったりで、おいしかった試しがないので、
イヌビワも眺めるばかりになっていました。
でも、こうしてまたひとつ新しいことを学び、
山で食べられるものが増えました。
山でとれたものを使っておいしいものがつくれると、
サバイバル力が上がったようですごくうれしくなります。
10年以上暮らしていても、まだまだ新しい学びや発見がある、
これが田舎暮らしの醍醐味だと思います。
次は何をつくろうかなあ。
果実酒にしてもおいしいらしいので、次に収穫したらお酒に漬けてみようかな?
まだ熟していない実もたくさんあったので、
イヌビワ収穫、しばらく楽しめそうです。
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