〈 この連載・企画は… 〉
日本一周の旅の途中だった「うんまほふうふ」が、今度は海外のガストロノミーを巡る世界一周の旅へ。
その土地ならではの食文化を体感しながら、その背景にあるストーリーを、日本の食文化と比べながら、
うんまほふうふの視点でご紹介していきます。
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unmahofufu
うんまほふうふ
いつか自由な身になって、気ままに旅したい……。
その夢を叶えるため、夫婦揃って30才手前で脱サラし、
2023年9月に日本一周の旅へ出ました。
そこから1年後の2024年10月には、なぜか世界一周へ旅立つことになった私たち。
日本で感じたこと、世界へ旅立った理由など、旅への序章をご紹介していきます。
1993年生まれのうんまほふうふ(うんちゃん&まほ)です。
新卒で約5年間、食品会社に勤め、食や地域創生に関わる仕事をしていました。
ふたりの共通の趣味である旅行を気軽に楽しめるように軽バンを車中泊仕様にDIYし、
週末になると各地に遠征して休みを満喫。
そんな日々を送るなかで、ゆくゆくはふたりでどこかに移住し、
地域に密着したまちおこしに関わる事業をしたいと考えるようになっていきました。
その思いが膨らみ続け、新たなスキルを身につけるためにSNSや動画制作の勉強をし、
人生のひとつのチャレンジとして退職を決意。
SNSで発信しながら、軽バンで自分たちができるまちおこしについて考えるための
「日本一周の旅」に出ました。
日本一周のスタートは四国から! 愛媛県の松山城をバックに。
日本の各地を旅していると、同じ国内なのに、風土や地域資源を生かした独自の風習や文化が
地域ごとに根づいていることを実感しました。
それは表面的には理解していましたが、
各地の景色や人と会って話すことでリアルに伝わってくるものがありました。
なかでもその特徴がわかりやすく表現されていると感じたのは「日本食」。
沖永良部島の〈西郷食堂〉にて。鮮度バツグンの伊勢海老がおいしかった!
例えば地方をドライブしていると、多くの畑や田んぼを目にしますよね。
日本人からすると当たり前の”原風景”ですが、季節によって景色は変わりますし、
地域によっても育てられる作物は異なります。
今でこそ農業技術が進み、全国的につくれる作物は増えたものの、
そのルーツはひとつの小さな村だったりします。
熊本県阿蘇の〈喫茶竹の熊〉は、田園風景の見晴らしが心地良い空間!
高知県の四万十市からさらに山奥に入ったところにある、三原村という小さな村。
高知県内でも有数の米どころであり、住民の半数を米農家が占めるほどの場所です。
山間部に位置するため夏はそこまで暑くならず、冬はしっかり寒いという
ハッキリとした気候区分や、豊富な水資源の恵みもあり、
米を使ったどぶろくづくりが盛んに行われるようになったそうです。
そんな村に日本一周の途中で立ち寄った私たちは、
せっかくなのでどぶろくづくりを行う米農家さんの家で民泊を体験。
どぶろくづくりの工程や写真をたくさん見せていただきながら、
産地の食材を使った料理とともに、何種類かのどぶろくを試飲させてもらいました。
お酒が好きでどぶろくもよく飲んでいましたが、
製法などはなんとなく理解している程度だったので、
すごくためになる経験になりました。
〈土佐三原どぶろく〉甘口「このこ」と辛口「あのこ」は、三原村のどぶろく文化・伝統を守り続けるために開発された商品。
どぶろくは静置しておくと米粒が沈んで2層になるのですが、
「いきなり混ぜて飲むのではなく、おいしいからまず上澄みだけを飲んでみて」
とおすすめしてもらったことが、とても印象に残っています。
実際に味わってみると、上澄みのスーッと入ってくる味がすごくおいしいんですよね。
お米ひとつをとっても、その地域ならではの素材の生かし方、味わい方も
多岐に渡っていると再認識しました。
いろいろな日本の食文化があるはずなのに、
風土との結びつきについて考える機会を今まであまりつくってこなかったなぁと。
日本一周の旅を通して、
あらためて身近な日本食のすばらしさを体感することがとても多かったです。
三原村には農作業のお手伝いのために時期をずらして再び滞在し、大根掘りも体験。
その地域の背景にある歴史や文化を学び、
その土地の食べ物をその土地で味わうおいしさは格別。
”現地で体験するからこそ大きな価値があるものだ”と感じました。
さらには、このような旅先での体験こそが、
普段の生活の豊かさや地球環境に対する意識にもつながると思うようになりました。
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最初は感覚的に捉えていた旅と食の原体験ですが、
興味を持って調べるうちに、それを言語化した「ガストロノミー」という考え方
(食の背景にある歴史や文化を丸ごとストーリー化して持続可能な地域づくりを目指す)
があることを知りました。
その土地の自然風土や歴史についても学びを深めることで、
地域資源への理解が高まり、
それを持続可能な活用につなげる考え方です。
地域の魅力や関心を高めるガストロノミー体験型の
ツアーを実施する国も増えてきていると知り、
おもしろい! もっと学びたい! そう思ったのです。
奄美大島の珈琲農園では農園見学以外にも、豆の収穫から焙煎して飲むまでの一連の工程を体験。
世界と比べて、日本ではまだ浸透していないガストロノミーというワード。
検索すると美食やミシュランというキーワードと関連づけられることが多いようです。
しかし私たちがイメージするのは、どちらかというともっとローカルに捉えられるもの。
その土地の気候や風習を学んでから食すことで、
味わいの面だけでなく、その地域の魅力にも気づける取り組みになるというものです。
食べるだけにとどまらず、
食に関連する体験と一緒に楽しむ「ガストロノミー体験」こそ、
より心に残る経験につながるものだと考えるようになりました。
「食×農業」「食×歴史」「食×調理」などガストロノミー体験は、
さまざまな角度から考えることができます。
その点においても、風土や地域資源から生まれた独自の風習や文化が
地域ごとに根づいている「日本食」こそ、
ガストロノミーの考え方を生かしやすいのではないか。
日本を巡るなかで参加した地域おこし協力隊のプログラムやガストロノミーツアーでも、
地域の食文化の認知や魅力を生かす重要性を実感しました。
徳之島ではサトウキビの収穫体験をしました。採れたてのサトウキビをかじってみたのもいい思い出。
今はせっかくの学びの期間なので、
具体的に自分たちがチャレンジするまちおこしについて考える前に、
思考がフリーな状態でヨーロッパを中心に世界各国で広まっている
ガストロノミーを実際に体験して知見を深めたい!
そこから日本で生かすために学びたい!
そう考え、日本一周の旅を中断し、夫婦で世界一周の旅に発つことを決めました。
世界一周の旅へ出発した福岡空港にて。
世界一周は9か月をかけて、
アジア→アフリカ→ヨーロッパ→北中米→南米と33か国を巡る予定です。
世界の文化や価値観を肌で感じ取り、
それぞれの食や自然に対する向き合い方およびガストロノミー事例を知る。
体験したこと、学んだことをこの連載を通じてみなさんにお伝えしていきます!
その土地ならではのもの、日本と似ているものなど、
果たしてどんな食との出合いがあるのか、ワクワクしています。
世界を知ることで日本の新たな魅力やまちおこしのヒントにも気づけるはず。
これからどうぞよろしくお願いします!
profile
うんまほふうふ
1993年生まれの“うんちゃん”と“まほ”。2023年9月から夫婦でDIYした軽バンにて日本一周をスタート。日本各地で体験した文化やさまざまな人との交流から、日本食による地域の魅力化の可能性にあらためて気づかされる。1年間の日本周遊を経て、もっと食文化について学びたいと考え、世界各国の食文化を体験する旅に出ることを決意。9か月33か国の世界一周旅を通して、海外の食文化やガストロノミー事例を学び、発信していく。
Instagram:@unmahofufu
YouTube:うんまほふうふ Travel
公式サイト:うんまほふうふブログ
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