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マチスタのプレオープンを控えて

マチスタ・ラプソディー
vol.007

posted:2012.3.19   from:岡山県岡山市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  東京での編集者生活を経て、倉敷市から世界に発信する
伝説のフリーペーパー『Krash japan』編集長をつとめた赤星 豊が、
ひょんなことから岡山市で喫茶店を営むことに!? 
カフェ「マチスタ・コーヒー」で始まる、あるローカルビジネスのストーリー。

writer's profile

Yutaka Akahoshi

赤星 豊

あかほし・ゆたか●広島県福山市生まれ。現在、倉敷在住。アジアンビーハイブ代表。フリーマガジン『Krash japan』『風と海とジーンズ。』編集長。

開店まであと 14日——————

倉敷の美観地区の近くに輸入家具と雑貨を扱う「スプートニク」という店がある。
店舗は小さいけど、店主の香川さんによるイタリアを中心にしたセレクトで、ファンが多い店だ。
4、5年前に彼が店を一時休業して店舗の全面リニューアルをやったことがある。
驚いたのは、この香川さんという人、1から10まで内装をすべて自分でやるという。
天井や壁はもちろん、床のタイル貼りまで。
期間は2か月近くかかったんじゃないかと思う。
でも、香川さんは完璧にやり遂げた。天井付けの空調を隠す箱や、
なんとレジ台までオリジナルで作ってしまった。

さすがにそこまでやる人は稀だけど、
岡山では「ああ、自分たちで適当にやっちゃいました」的なことをよく聞くし、
岡山の人は実際結構やる。
だからだろうか、我が社アジアンビーハイブを訪れた人から、
「これ、赤星さんがやったんですか?」とよく尋ねられる。
(当社のオフィスは大きな倉庫を改装して作っている)
そのたびにぼくは「いえ、工務店ですが」と面白くもない普通な答えを返している。
この手のことに関して、ぼくのスペックは3歳児なみ。
サブの犬小屋でさえ満足に作れない。
マチスタの改装リニューアルにもぼくはほとんど戦力になっていない。
対して、コイケさんの戦闘力は相当に高い。
今日も、メニューボードを照らすライト用にぼくが手渡したハロゲンのスポットライトを
お客さんと談笑しながらいじっていたと思うと、
お客さんが帰った後、おもむろに電動ドライバーを手に脚立の一番高いところに上って、
「カンタンですよ」と笑いながら天井に出ている配線をちゃちゃっといじって
ものの5分で取り付けてしまった。
そこそこ包丁が握れるぼくからしたら、
料理に腕をふるうコイケさんよりも、工具を手にしているコイケさんの方が
実は尊敬の度合いが高かったりするのである。

この週末にかけて、新生マチスタはみるみるそれっぽくなっていった。
早島の木工所「コンパネーロ」にオーダーしていたホワイトオークのカウンターの板を
コイケさんとぼくとで取り付けた。
(ぼくは板を支えていただけでコイケさんが取り付けました、正確に記せば)
看板屋さんの「谷川工房」からは、アジアンビーハイブがデザインした看板、
ガラス面のカッティングシート、
それにカウンターの奥の壁にかけるメニューボードが届き、設置してくれた。
そして最後の仕事はコイケさんによるレジ台作り。
岡山では「自分の店のレジ台は自分で作る」みたいな慣習が古くからある。
というのは嘘で、これは気に入ったレジ台がなかなか見つからないということだろう。
コイケさんはこれも2時間ぐらいで、誰の手も借りずに作り上げてしまった。
いやはや、おそれ入谷の鬼子母神だ。

そして日曜日、内装がひと通り終わった。
工事が始まったときは「これが1か月で終わるのか?」と思えた。
でも、終わってみれば、コイケさんの予想通り、3週間もかからなかったことになる。
あらためて新しい照明のもと、新しくなった店内を眺めてみた。悪くない。
最初は存在感がありすぎかなと思えた青い壁も、
そのおかげで、ロンドンのポートベローあたりにありそうな
コーヒースタンドの雰囲気を与えてくれている。
行き当たりばったりの面も多々あったが、
まったく悪くない感じだ。コイケさんものーちゃんも、
十分に満足してくれているように思う。
今となっては、コイケさんから旧マチスタが閉店すると聞いたのが随分前のように思える。
あれからたった3か月しか経っていない。
でも、この3か月で実にいろんなことがあり、実にいろんな人と出会った。
「カフェリコ」の焙煎士、稲本さん、
ベーグル研究家の服部さん、「コンパネーロ」の横田さん、
ホットドッグのパンを焼いてくれた「どんぐりコロコロ」(箕島)の森山さん。
彼らとはマチスタの件がなかったらたぶん会うことはなかった。
それから、スタッフのエプロンを作ってくれた藤田クン、
「カフェ アンドゥ」のせんちゃん、林のパン屋さん「KONPAN」の近藤さん、
「谷川工房」の伸クン、フライヤーを印刷してくれた「研精堂」の横畑さん、
能登夫妻、通りすがりに棚の設置を手伝ってくれた「fift」の五十嵐夫妻、
試飲やら試食やらにいろいろ付き合ってくれ終始バックアップしてくれた
「カーネス」の元スタッフのタカちゃん、
それからうちの会社のスタッフのヒトミちゃん、サトちゃん、ミヨさん。
いろんな人たちに多大なご協力をいただきました。
この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。みんな、どうもありがとう!

ついつい流れで、お世話になった人たちの名前を挙げたりして、
いかにも最終回の様相ですが、まだこの連載が終わるわけじゃないと思います。
で、「内装も終わったしね」というので、
いきなりですが、3月20日(火)にプレオープンすることにしました。
正式な開店は4月2日(月)なのですが、それまで実際に営業しながら、
ないものを補ったり、徐々に体制を整えていこうではないかと。
というのは半分建前で、
本音では「今日稼げるものは今日稼げ」的な部分も少なからずあります。
なお、営業時間は平日・週末ともに11:00 〜 18:00です。
というわけで、次回はプレオープンの模様をレポートしてみます。乞うご期待!

あ、前回の連載で「次回に触れる」と約束していた映画『アウトロー』の件は忘れてください。
まあ、ぼくが約束を無視する無法者だった、ということで。

「コンパネーロ」の横田さんによるカウンターの板はホワイトオークの一枚モノ。何度も塗りを重ねるなど手がこんでます。いい仕事してますねえ。

マチスタまで0メートル……つまりここってことで。

青い壁にウッド地のメニューボード。「ICE+50YEN」の文字のみステンシルのフォントを使用、しかも微妙に文字をずらすなど小賢しさ満載。

のーちゃんを美しく撮ってその写真で客を呼ぶという作戦も考えたのだけれど、至近距離からカメラを向けることができず、この微妙な距離感。

Shop Information

map

マチスタ・コーヒー

住所 岡山県岡山市北区中山下1-7-1
TEL なし
営業時間 11:00 〜 18:00(プレオープン時)

※4月オープン予定

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