news
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
青森駅から徒歩約5分、
青森市安方に、市内初のクラフトビール醸造所〈Aomori Brew Pub〉がオープンしています。
ギャレス・バーンズさんが代表を務める弘前で人気のクラフトビール醸造所
〈Be Easy Brewing〉&タップルーム〈ギャレスのアジト〉の姉妹店です。
弘前の人気店が、青森にも店を構えるきっかけとなったのは、
2019年青森市で開催された〈ドイツビアフェスト in アスパム〉。
〈Be Easy Brewing〉も出店し、
訪れた人から「やっと飲めた」という声を多く聞いたことでした。
「ずっと飲みたいと思っていたけど、
青森から弘前に飲みに行く機会がなかなかなくてというお客さんが多かったんです」
と話してくれたのは、代表のギャレスさん。
「青森県内は、車で移動する人が多いこともあって、
たしかに、自分も五所川原や青森に気になるお店があっても、
なかなか行けずに数年経ってしまうことはあるなとその時気がつきました。
待っているお客さんがいるのなら、青森市内にも店をもちたいと思ったんです」
物件との縁もあって着々と話は進み、
2020年夏に〈Aomori Brew Pub〉はオープンしましたが、世はコロナ禍。
当初は食事も提供する予定でいましたが、計画を変更し、
醸造所とボトルショップという現在のスタイルとなります。
店内では、弘前の〈Be Easy Brewing〉で醸造する缶ビールと、
国内外100種類以上のクラフトビールを販売。
〈Aomori Brew Pub〉で醸造するビールを購入できるのはここだけです。
商品名に付く、「後潟」や「横内」は青森市の地名。
第1号商品は〈安方(やすかた)ペールエール〉で、
〈Aomori Brew Pub〉がある地名がつけられました。
「この場所から、徐々にクラフトビール文化が広がっていくイメージで名前をつけています。
いきなり浅虫温泉のような、ここから距離のある有名観光地に飛ぶのではなくて、
青森のことをもっと知ってもらったり、再発見してもらえるように、
古川(ふるかわ)とか長島(ながしま)といった
お店の近くの地名から名前をつけています。
いずれ青森の地名のビールを全部つくれたらいいなと思っているんです」
〈Aomori Brew Pub〉では、100リットルのタンクで醸造を行っているため、
ひとつのタンクでできるビールは約250本。
いろんな素材を使ったビールづくりに挑戦できることが魅力だと
ギャレスさんは話します。
「“遊び場”や“研究所”のようなイメージです。
〈Be Easy Brewing〉では1000リットルのタンクで醸造しているので、
たくさん売れる商品でないと醸造することが難しいですが、
〈Aomori Brew Pub〉では、
スタッフがつくってみたいというビールや、変わったビールもつくることができます。
パクチーのビールとか、ホップを使わないハーブのビールとか、
青森県産のブナを使用した木工品〈ブナコ〉で風味づけをするビールとか……。
うまくいくかわからないけど挑戦できる。
青森県産のハチミツを使ったミードもつくってみたいですね」
Page 2
このほか、コロナ禍にギャレスさんが新しく取り組み始めたのが、
〈Be Easy Brewing〉での缶ビールの製造です。
これまでは瓶製品で、購入できる店も限られていましたが、
量販店での流通も開始。インターネットでも購入できるようになりました。
〈Be Easy Brewing〉の商品には、定番で販売する3種
〈青森エール〉、〈レイズ ミルク スタウト〉、〈デビーズ ペール エール〉以外には、
ほとんどに津軽弁の名前がつけられています。
「お店でオーダーしてもらうときは、
津軽弁を使わないと頼めないんです。〈へごま〉ハーフとか、
〈へごま〉パイントとか。そうすると〈へごま〉って何だろうって調べるでしょう?
津軽弁おもしろいね、青森おもしろいねって興味をもってもらえたら
うれしいなと思って名前を考えています」
クラフトビールを軸に、青森の魅力を伝えているギャレスさんですが、
使う素材の決め手は、青森県産であることではなく、いい素材であること。
「県産だからなんでもいいわけではなくて、おいしいものがいいんです。
おいしくないものを、一生懸命つくっているビールに入れて、
味が落ちてしまうのは意味がないですよね。
だからBe Easy Brewingを始めた当初は、
あえてリンゴを使いませんでした。
青森の醸造所がつくるからリンゴを使用するのではなくて、
まずおいしいビールをつくって、認めてもらって、
ギャレスのビールで青森のリンゴを使っているから
飲んでみたいと思ってもらいたかった。
そのほうがリンゴのPRにもなるでしょう」
10年以上前にクラフトビールに魅了されたギャレスさん。
「クラフトビールは今のように盛んではなくて、
東北でつくろうとする人がいなかったんですよね。
自分がやらなければと思ったんです」と独学で醸造を始めます。
「おいしいものはおいしい。まちに大手のファーストフード店があっても、
手づくりの小さなハンバーガー屋さんはあってほしいし、
スーパーで焼き鳥を売っていても、小路の小さな焼き鳥屋さんもあってほしい。
だから大手のビールがあるとしても、
クラフトビールの需要は広がる可能性があると思いました」
クラフトビールは業種や分野の壁を超えて
つながれるものがたくさんあることも魅力だとギャレスさんは話します。
「〈Be Easy Brewing〉では、楽天イーグルスのオフィシャルビールもつくっています。
ユナイテッドアローズとコラボしたビールも発売になりましたし、
メーカーから廃棄野菜でつくるビール開発の相談も受けました。
ビール屋さんなのに、いろんな業界とつながることができる。
津軽弁も教えられるし、青森県産のものも広げられる。すごく楽しいです」
Page 3
そんなギャレスさんが今、力を入れているのが、
全国のクラフトビール魅力を伝えるYouTube。
『ジャパン・クラフト・ビール・チャンネル』を開設し、
〈ベアレンビール〉(岩手県)、〈沼津クラフト〉(静岡県)、
〈くにぶる〉(東京都)など、自身で全国のクラフトビール工場を旅して、
紹介しています。
「職人と職人の会話なので、
普通のインタビューでは聞けない話が満載でおもしろいですよ。
本音も出るし、ここでしか伝えられないクラフトビールの世界の魅力を
発信できると思っています」
いずれは海外の醸造所も訪問し、
日本人が旅行する際の手助けになるような映像も
配信していきたいと考えています。
「クラフトビールは、つくっている人の味が出るのがおもしろいんです。
すごく魅力的な世界。携わっている人たちは仲が良くて、
いいビールができたらうれしいってみんな思うから、
新しい製品ができたらすぐつくり方を教え合います。
なぜなら絶対真似はしないから。
みんなまったく同じものをつくるのはおもしろくないと感じていて、
方法を聞いて、“自分の味”のビールをつくるんです。
そこがおもしろいし、深いし、本当にこの仕事が楽しい」
クラフトビールの世界が大好きだというギャレスさん。
その魅力を青森から全国・世界へ発信しています。
information
Aomori Brew Pub
information
information
Be Easy Brewing
Feature 特集記事&おすすめ記事