福岡県福岡市『MOËT』
発行/STRINGS、森 直樹
デザイン事務所STRINGSと、編集長の森 直樹さんが発行する、あらゆる「萌え」をテーマにした、
自費出版フリーペーパー『MOËT』(モエ)。
東京・渋谷のフリーペーパー専門店、
「ONLY FREE PAPER」でも大人気です。
MOËT
http://www.e-moet.jp/
STRINGS
http://www.stringsdesign.net/
発行日/2011.9
福岡県福岡市『MOËT』
発行/STRINGS、森 直樹
デザイン事務所STRINGSと、編集長の森 直樹さんが発行する、あらゆる「萌え」をテーマにした、
自費出版フリーペーパー『MOËT』(モエ)。
東京・渋谷のフリーペーパー専門店、
「ONLY FREE PAPER」でも大人気です。
MOËT
http://www.e-moet.jp/
STRINGS
http://www.stringsdesign.net/
発行日/2011.9
東京は浅草にあるGallery ef。
正面から一見するとふつうのカフェなのだが、その奥に併設されているギャラリーは、
江戸末期に建てられた土蔵を再生させた建物。
かつては特殊金属を扱う会社の倉庫だったが、
現在のオーナーのIzumiさんの祖父が亡くなるまで、
数十年間、人が入ることもなく、ひっそりと佇んでいたそうだ。
調べてみると、梁の墨書きから、慶応4(1868)年に建てられたことがわかった。
相続税や会社の整理のため、蔵は壊して土地を売るしかないと考えていたところ、
たまたま出会った漆造形作家の鍋島次雄さんの呼びかけで多くの人たちが集まり、
蔵を再生させることになった。
それが1996年のこと。
それから約1年がかりで現在の姿に生まれ変わった。
「どうにも手が付けられないようなボロボロの状態から、
鍋島さんはこの完成の状態を思い描けていて、
仲間たちを呼んで作業するからぜひやらせてほしいと言われたんです。
そこからはいろいろなアーティストや職人たちが集まってきて。
漆の作家たちは左官屋さんの技を目の前で見られる機会を喜んだし、
左官屋さんは作家たちが漆を塗る作業に興味津々でした」
関東大震災と東京大空襲に耐えて残っている建物は、東京ではとても貴重。
空襲のあとも、もしすぐに蔵の扉を開けてしまっていたら、
バックドラフト現象を起こして爆発していたはずだが、
当時それを知っていたIzumiさんの曾祖母は2ヶ月ほど待ってから開けたそうだ。
「空襲だけじゃなく、戦後の再開発でなくなってしまった建物も多いけど、
それも生き延びた。建物自体に生きる意志があって、
所有者とは名ばかりでこちらが所有されている感じがします」
この建物は登録有形文化財にはなっているが、
重要文化財と比べると国や自治体の援助はないに等しく、
修復にかかる費用も自己負担になってしまう。
古い建物を残していく大変さを痛感しているが、ギャラリーでイベントを開催したり、
震災直後には近所の人が話をするためにカフェに集まってくるなど、
Izumiさんはこの建物が「場」として育ってきたことも実感している。
「屋久島で生まれ育った、木と話ができるという人がここに来たときに、
ここの木はすごく喜んでるよ、と言ってくれたんです。
まるで建物に人格があるみたい。
古くて歴史的に重要な建物はたくさんあるけど、
人とコミュニケーションできる建物ってなかなかないですよね。
だから自分たちだけのものとは思っていなくて、
いかにみんなと使っていくかを考えています。
ただ使うだけだと使い捨てになってしまうし、
建物を残すだけじゃなくて、どういう“場”ができていくかが重要。
ここでそんな“場”が育ってきたのは、建物の魅力が大きいと思います」
毎年12月は音楽会月間として「月夜の森」と題し、
さまざまなアーティストによる生演奏ライブを開催する。
タイトルは、静かな森の湖に月が映っているというイメージで
床を美しい漆黒に仕上げた、鍋島さんの最初のデザインコンセプトからとった。
この冬も「月夜の森」にはたくさんの人が集ったようだ。

梁に「慶應四戊辰年」の墨書きの文字が見える。看板猫の銀次親分は人気者。

床の下は能舞台のように空洞になっているので、音の響きは格別なものがある。
Information
Gallery ef ギャラリー・エフ
住所:東京都台東区雷門2-19-18
TEL:03-3841-0442
営業時間:
ギャラリー 12:00 ~ 19:00(展覧会開催中は ~20:00)
カフェ 11:00 ~ 19:00
バー 18:00 ~ 24:00(祝祭日は ~22:00、金曜・祝前日は ~26:00)
定休日:火曜休
2011年10月1日から11月23日まで、
会津若松市と喜多方市で開催された「会津・漆の芸術祭」。
前年に引き続き2度目の開催となったが、準備の段階で震災が起こり、
一時は開催が危ぶまれた。
しかし、こんなときだからこそアートの力による再生を信じ、
「東北へのエール」というサブタイトルを掲げての開催となった。
編集部は、会期終了間際の会津若松を訪ねた。
参加アーティストは、地元の工芸作家から、
通常は漆を使うことのないアーティストまで実に多彩。
また、会津短期大学や東北芸術工科大学、東京藝術大学など
大学の研究室やワークショップなど、プロジェクトとしての参加作品も多い。
漆を扱うプロから、漆になじみのない人まで、
漆という会津に古くから根づく素材を使って作品を制作しているのが、この芸術祭の特徴だ。
会場は、会津若松と喜多方合わせて全38カ所。
回るのも大変だが、歴史ある酒造や、
古い建物をリノベーションした店舗などが会場になっており、
まち並みを散策する気分で作品を鑑賞できるようになっている。
そして、これだけの会場があるということは、
地元住民の方々の理解と協力なしには成り立たないということだ。
美術家、小沢剛さんの作品の展示会場となった井上一夫商店も、
古美術を扱う小さな商店で、1階は通常通りの営業、2階が展示会場になった。
店主の井上さんも鑑賞者を温かく迎え入れ、
小沢さんの作品のすばらしさを多くの人に知ってほしいという想いが伝わってきた。
小沢さんの作品「できるかな2010」(2010-2011)は、
2010年に東京の府中市美術館で発表された作品の会津バージョンで、
亡くなった義母の箪笥や、紙袋や端布などの日用品を使ったインスタレーション。
一見、布の柄のように見える模様は、
布の上からまったく同じ模様が油絵の具で描かれており、
記憶をたどるように丁寧に模様をなぞり、故人と向き合うような作品だ。
今回は、会津の蒔絵師、本田充さんの手を借りて、漆の技法を用い、
箪笥の引き出しの前面に木目の模様を施した。
これも一見わかりにくいが、木の模様に見えるのは漆で描かれたもの。
このように、現地の職人とアーティストのコラボレーションで作品が生まれるのも、
この芸術祭の面白さ。
本田さんは「なかなかできない経験なので、面白かったです。
漆は難しいという先入観があるかもしれませんが、
漆を使ったことのない人に使ってもらって、素材の面白さを知ってもらえれば」と話す。
小沢さんは前回の漆の芸術祭にも参加しているが、ふだんは作品に漆を使うことはない。
「職人さんと接することもあまりないですが、
塗料を筆先につけて滑らせる快感は、分かち合える気がしました。
この芸術祭は、漆という伝統の素材をテーマにしているよさがあると思います」と小沢さん。
小沢さんは、越後妻有「大地の芸術祭」などにも参加し、地域で滞在制作することも多い。
「いままで僕は現代美術って都市で発生するものだと信じていました。
ある程度、知識や前提がないと理解しにくいですから。
僕なんて制作中、ただの作業員だと思われて、
ストレートでシビアな感想を言われたりしますけど(笑)。
でもそれだけ、美術館やギャラリーに守られていない、
アートにとって無防備な場所で勝負する面白さがあります。
この十数年で、地域の芸術祭などが増えてきていますが、
それが可能になってきたのは美術界も変わってきているから。
上から目線ではなくて、作品のほうから見る人に
関係性をつなげていきやすい仕掛けを作ったり、
参加しやすい作品が増えているという傾向が、世界的な潮流としてもあると思います」
まちの小さな展示会場は、ホワイトキューブを飛び出した美術作家の挑戦の場でもあるのだ。

小沢さんの原画をもとにシルクスクリーンで漆を施し細部は手描きで仕上げた。

使うともなくとってあった紙袋はミキサーで細かくして小さな紙袋のかたちに。

本田さんの工房で作業する小沢さん。細かい木目の模様をトレースしていく。