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十和田 Part4
ピラミッド型から
ネットワーク型の社会へ。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.021

posted:2012.6.28   from:青森県十和田市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:嶋本麻利沙

今年度から青森県の十和田市現代美術館副館長に就任した
美術家の藤 浩志さんと山崎さんとの対談をお届けします(全4回)。

仕組みと拠点をどうつくるか。

山崎

任期などもあるとは思いますが、こちらには何年ぐらい在籍される予定ですか。

いまのところ、1年、長くて3年の予定ですね。

山崎

組織に入ると見えてくるものもありますね。

美術家として、いかに美術館やホワイトキューブを離れて
地域のなかにプロジェクトをつくっていくかということをやってたのにね(笑)。
ここはその逆で、ホワイトキューブがまちに出ていこうとしているから、
そこのところが象徴的でおもしろいとは思うんだけど。

山崎

違う方向からやってきて、出会ってしまった感じですね。

地域にプロジェクトが発生するために、仕組みづくりと同時に、
両輪のように考えなければいけないのは、拠点づくりなんです。
プロジェクトがどちらを起点に生まれるかは、にわとりと卵だけれど。
ただ、やはり拠点がないと、どうしてもイベント性が高くなったり、
活動が恒常的に見えなかったり、制約が出てくるんですよ。

山崎

そうですね。

では、どういう拠点がいいかというと、
いかにオープンで、重石がなくて、つながっているか。
このことは、これまでどこでもずっと問題になってきたことなんです。
結果、拠点がないと、じぶんが全国をまわることになる。

山崎

いまのぼくもそうですね。

まあ、性格的には合ってるんだけどね(笑)。

山崎

なるほど。そういう経緯があって、
十和田市現代美術館という拠点のあるこのまちで水になってみようと。
「水のひと」としてできることを探ろうというわけですね。

展示会場のひとつ「松本茶舗」

十和田市現代美術館は、まちづくりプロジェクトArts Towada(アーツ・トワダ)の拠点施設としてつくられた。あるときは、アート作品が美術館を飛び出して、商店街のなかにも展示される。展示会場のひとつ「松本茶舗」。

先祖の古い写真でつくった、てづくりアート

松本茶舗の店主が、先祖の古い写真でつくった、てづくりアート。地域にすでにあるちいさな「種」や住民の活動を、おもしろがるひとをどう集めるか。

潜伏している種を発芽させるがごとく。

たとえば、まちにはそれぞれに歴史をはじめとするストーリーがありますよね。

山崎

ええ。

でもそれは、近代の貨幣経済中心の価値観、視点で語られ、編集されて
残っていることが多いと感じるんです。
これを異なる視点で再編集してみると、
また別の物語が浮かび上がって来るんじゃないかな、とか。
それを表現できるのは、どんなアーティストだろう、どんなデザイナーなんだろう、
ということを考えてみるのもおもしろいかなと思っています。

山崎

難しいですけど、おもしろそうですね。

社会学者に関わってもらってもおもしろそうです。

山崎

それをローカルに、地域ごとにあらためて発掘して語っていくときに、
アーティストの感性が関与していく仕組みですね。

そういったことで、いますでに潜伏している種が発芽するように、
元気になるひとが出てきたらいいなと思うんです。

山崎

ランドスケープや造園でぼくらが興味をもっている「埋土種子」ですね。

マイドシュシ?

山崎

落ち葉の下や土のなかで何年も生き続ける種子のことです。
これに光と水をあてることで活用し、植生の復元や緑化に活用するんですよ。

それですね、まさに(笑)。
あと、最後にもういちど時代のはなしに戻ると、
80年代後半、ぼくがまちに関わり始めた時期と
コンピュータやインターネットが成長、普及する時期が重なっているんですよね。
まちづくりや場のつくり方の考え方も、中央集権的なピラミッド構造から
ネットワーク型に移り変わってきたのもとてもいい影響ですよね。

山崎

藤さんとはひとまわりも年齢が違うのに、
こんなに共感、シンクロすることがあるというのはうれしい驚きです。
ありがとうございました。

「bank towada」のステッカー

十和田市中央商店街の空き店舗を利用したコミュニティ・センター「bank towada」が昨年オープン。十和田市現代美術館と商店街をつなぎ、十和田のさまざまな資産を広く発信していく。http://www.bank-towada.com/

bank towadaに設置された「まちなか展示」

9月2日まで十和田市現代美術館で行われている栗林隆の日本初個展「WATER >|< WAZZER」と連動して、bank towadaに設置された「まちなか展示」。東北復興をテーマにしたこのアートプロジェクトは、森林保全団体more trees、アパレルメーカー三陽商会とのコラボレーション。

藤浩志さんと山崎亮さん

「思い切って十和田まで藤さんに会いに来て、ほんとうによかったです。たくさんのヒントとキーワードをいただきました!」(山崎)

information

map

十和田市現代美術館

青森県十和田市が推進するアートによるまちづくりプロジェクト、Arts Towada(アーツ・トワダ)の拠点施設として、2008年4月に開館した現代美術館。アート作品が街に対して展示されているかのような開放的な空間構成を持ち、まちづくりプロジェクトの拠点施設としてつくられた特徴ある美術館となっている。

住所:青森県十和田市西二番町10-9

TEL:0176-20-1127

Web:http://towadaartcenter.com/

profile

HIROSHI FUJI 
藤 浩志

1960年鹿児島生まれの美術家。京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了し、翌年よりパプアニューギニア国立芸術学校講師、建築企画・都市計画コンサルタント勤務を経て、藤浩志企画制作室を設立。対話と地域実験の場を作る美術類のデモンストレーションを実践。2012年4月より十和田市現代美術館副館長に就任。

Web:http://geco.jp/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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