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仏生山 Part1
「仏生山まちぐるみ旅館」の
はじまりについて。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.022

posted:2012.7.5   from:香川県高松市仏生山町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

高松市仏生山町に暮らし、仏生山温泉の番台を務める岡 昇平さんと
山崎さんの対談を4回にわたりお届けします。

点と点でまちをつなぎ、まち全体を旅館に見立てる。

山崎

こんばんは! こんな遅い時間にすみません。

いえいえ、うれしいです。お待ちしていました。

山崎

この建物、以前に来たときは外から拝見しただけでした。
あのときはたしか、ひとが住まれていたんですよね。

はい。5年前に住宅として設計したのですが、ご家族が引っ越されたので、
今はぼくが賃貸で借りているんです。

山崎

それで、ここを仏生山まちぐるみ旅館の「客室」に?

ええ。「縁側の客室」と名付けて、宿泊施設として4月からオープンしています。

山崎

まちぐるみ旅館計画……とうとう動きだしましたねえ。

ようやく、です。

山崎

もとは、まちなみを残すために古い物件も使えれば、という計画でしたよね。

そうですね。基本的には今もそう考えています。
でも、ちょうど、改築なしですぐにオープンできるところが出てきたので(笑)。

山崎

なるほど。ここは旅館業法や消防法もクリアしているんですか?

はい。誘導灯の追加設置は覚悟していたんですが、
こんなに大きく外に開かれているので、それも必要ないと判断してもらいました。

山崎

たしかに(笑)どこからでも飛び出せますね。バスルームはこの扉の奥ですか?

あ、どうぞ。こちらです。

山崎

うーん、またちょうどいい感じにこぢんまりしてますね。
これは、仏生山温泉に行きたくなります。
両方が岡さんの設計ということで温泉の建物との意匠的な共通点もありますし、
こうして見ると、まるで最初からまちぐるみ旅館の「客室」のために
造られたようですね。

まったくの偶然ですが。

客室をまわりながら対談中

「基本的にはシャワールームとして設計しています」(岡)。「ぜいたくなバスルームにしなくて、よかったですね(笑)」(山崎)。

「一緒に遊んで楽しい」というあたらしいフィルター。

山崎

一方で、泊まれるモデルルームということもできますね。
「設計事務所岡昇平」としては。

あ、ほんとうですね(笑)。

山崎

ぼくもさっそく家族で泊まりに来たいなあ。

ぜひ! いつでもお待ちしています。

山崎

ここに泊まって、外湯に行く。その道中の商店街に、
小さなお土産物屋さんや食堂がある、そんなイメージですよね。

はい。そこから、楽しいひとの繋がりが生まれたらいいなと考えています。

山崎

このプロジェクトはすべてが岡さんの直営になるんですか?

いえ。複数に分散したいと思っています。
このまちで、一緒に遊んで楽しそうな人に、
ぜひ手を挙げてもらいたいと願っています。

山崎

この記事を読んで手を挙げるひとがいたとして、
物件はもう用意されているんですか?

はい。今、4軒あります。

山崎

さすがですね。岡さんが地元のひとだからこそだと思います。
どこのまちでも、よその人は物件を借りることさえ難しいですから。

そこは、このまちで生まれ育ったぼくの出番ですね。

山崎

いちばん大変なところをつないでくれるひと=岡さんだから、
「岡さんと一緒に遊んで楽しい」ひとがいいんですよね。
ただ「地方で暮らしてみたいひと」というだけじゃなく、
面接、面談のようなフィルターをかけることは、
大変だけどとても必要なことだと思います。

魅力的な「ひと」に来ていただいてこそ、
魅力的な「まち」になるんだと思っています。

山崎

あとは、温泉街の浴衣みたいに、泊まっているひとの目印があると楽しいですね。
たとえば大きな和傘のようなもの。

いいですね! 記号の発想。楽しそうです。

(……to be continued!)

ブルーモーメントの客室

ブルーモーメントの客室で久々の再会。同い年、同じ建築畑とあって、はなしは尽きない。

縁側の客室

仏生山まちぐるみ旅館の「縁側の客室」。施設使用料9800円+1名1泊につき4600円(1棟貸、定員2~10名。食事なし、仏生山温泉入浴無料、施設使用料は初日と4日目ごとにかかる)。予約・問い合わせ 087-889-7750

information

map

仏生山まちぐるみ旅館

客室や食堂や大浴場など、さまざまな役割がまちの中に点在し、まち全体で旅館の機能を担う取り組み。既存の店やあらたに誘致する店と、時間をかけて魅力的な地域をつくり、楽しい人のつながりをつくる。現在は、「縁側の客室」と「仏生山温泉」などがオープン中。

Facebook:http://www.facebook.com/machigurumi

【仏生山温泉】

住所:香川県高松市仏生山町乙114-5

TEL:087-889-7750

Web:http://busshozan.com/

profile

SHOHEI OKA 
岡 昇平

1973年香川県高松市生まれ。物理学者を目指したのに、なぜか徳島大学工学部建設工学科に入学、卒業のころには志をすっかり忘れて日本大学大学院芸術学研究科修士課程に進学、建築を学ぶ。建築設計事務所「みかんぐみ」を経て高松へ戻り、2002年「設計事務所岡昇平」設立。仏生山温泉番台。

Web:http://ooso.busshozan.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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