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仏生山 Part2
ずっとこのまちで
暮らしていくということ。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.023

posted:2012.7.11  from:香川県高松市仏生山町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

高松市仏生山町に暮らし、仏生山温泉の番台を務める岡 昇平さんと
山崎さんの対談を4回にわたりお届けします。

ニヤニヤしながら生きていきたい。

山崎

ぼくと岡さんは、同い年で同じ建築畑。だからとても親近感があるんです。
なぜ、建築家になろうと思ったんですか。

あはは。ずいぶん遡りますね。
じつは、高校生のころは物理をやろうと思っていたんです。

山崎

物理?

物理学者の寺田寅彦に憧れたんです。いい意味で変態というか、
ジャンルを超えて生きる感じとか、ニヤニヤした感じが好きで。

山崎

たしかに彼は変人ですよね。いい意味で(笑)。

でも、試験に受かったのが徳島大学の工学部建設工学科。
まあ、物理は大学院からという手もあるな、と考えてそのまま入学、
土木の世界に入っていきます。

山崎

お。土木からとは、知りませんでした。

でも、いざ就職のことを考える年ごろになってみると、
土木って、行政のしごとが100%だということがわかってくる。
そのことに気づいて、個人でも世界と戦える建築を目指して
大学院に進学しようと決めたのが大学4年の夏のことで……。

山崎

物理への志はもうすっかり忘れてたんですね(笑)。

その通りです! 我ながら、未成年ならではの責任感のなさがたまりません。

山崎

いい話だなあ。

でしょう(笑)。
とはいえ、建築の勉強もあんまりマジメにやってこなかったので、
いまでも自分のしごとを「作品」といわれるのは苦手なんです。

山崎

その感覚、わかります。ぼくもまったく同じですね!

就職して、初めて建築を学んだようなものです。

山崎

新卒で、「みかんぐみ」ですよね。

はい。5人のボスがいるから、5倍学べると思ったんです。

山崎

なるほど、それはいい。

「これがカッコイイ」とか「美しい」という感覚は、
「みかんぐみ」を辞める3年目になって、ようやくわかった気がしますね。

岡昇平さん

生まれ育ったまちにUターンしてちょうど10年。暮らすうち、年齢を重ねる間に、次第にまちとの関わり方が変わってきたという岡さん。

暮らして変わった「わたし」と「まち」の関係性。

山崎

3年で独立って、少し早いですね。

今から思えば(笑)。でも、東京は楽しいけれど、
じぶんにとって暮らしや生活の場ではないなという感覚はずっとあったんです。

山崎

もともと、ひとりで世界と戦うべく建築に入ったわけですから、
リアルな目標として独立を目指していたんですね。

そうですね。ちょうどそのころ、実家で父親が温泉を掘り当てるんです。

山崎

そこがすごい話なんですけど、そのタイミングは、
岡さんのUターンと示し合わせて?

いや、まったくの偶然です。それが2002年のことで、
4代目として家業を継ぎながら、設計事務所を立ち上げることになりました。

山崎

その当初から「まちぐるみ旅館」の発想はあったんですか?

いえ。まったく自分のことしか興味がありませんでしたよ(笑)。

山崎

でも、変わったんですね?

そうですね。そこには、番台に立つようになったこと、
こどもが産まれたことが大きく影響しています。

山崎

やはり、こどもを持つと変わりますか?

全然違いますね。
ぼくの場合は、愛情の拡張スイッチが「オン」になった、という感じでしたね。
じぶんのこどもだけでなく、他人のこどももかわいく思えてくる、みたいな感覚。

山崎

番台に立って変わった感覚は?

言い変えるとするなら、
パブリック性の高い場所にずっといる、ということでしょうか。
しかも、帰るときは、間違いなく誰もが気持ち良さそうな顔をしているでしょう?
風呂上がりで怒ってるひとはいない。

山崎

……あ!

このまちで、ニヤニヤして生きていきたい。再び、そう思うようになったんです。

(……to be continued!)

仏生山来迎院法然寺の門前町

まちぐるみ旅館が点在していくのは、仏生山来迎院法然寺の門前町。昔ながらのたたずまいを残す町屋造りの元商家も、まるであらたな役割が与えられるのを静かに待っているかのよう。

築約90年の町家を改装した「Cafe asile」

上の建物と同じ、古い街道沿いにある、築約90年の町家を改装した「Cafe asile」。週末ともなれば満席になる人気のカフェ。

対談の様子

「建築界において、岡さんほど人間的に“おもてなし”に長けているひとは、ほかにいないんじゃないかなあ。今日はそのルーツが知りたいんです」(山崎)

information

map

仏生山まちぐるみ旅館

客室や食堂や大浴場など、さまざまな役割がまちの中に点在し、まち全体で旅館の機能を担う取り組み。既存の店やあらたに誘致する店と、時間をかけて魅力的な地域をつくり、楽しい人のつながりをつくる。現在は、「縁側の客室」と「仏生山温泉」などがオープン中。

Facebook:http://www.facebook.com/machigurumi

【仏生山温泉】

住所:香川県高松市仏生山町乙114-5

TEL:087-889-7750

Web:http://busshozan.com/

profile

SHOHEI OKA 
岡 昇平

1973年香川県高松市生まれ。物理学者を目指したのに、なぜか徳島大学工学部建設工学科に入学、卒業のころには志をすっかり忘れて日本大学大学院芸術学研究科修士課程に進学、建築を学ぶ。建築設計事務所「みかんぐみ」を経て高松へ戻り、2002年「設計事務所岡昇平」設立。仏生山温泉番台。

Web:http://ooso.busshozan.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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