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仏生山 Part3
温泉の効能と
番台の役割について。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.024

posted:2012.7.19  from:香川県高松市仏生山町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

高松市仏生山町に暮らし、仏生山温泉の番台を務める岡 昇平さんと
山崎さんの対談を4回にわたりお届けします。

父と温泉。その効能について。

山崎

岡さんて、ぼくにとっては「おもてなしの上手なひと」。
とくに、建築界では希有なほどのもてなし上手です。

実家が飲食業を営む環境だったからでしょうか。

山崎

おとうさまは、どうしてまた温泉を掘り始められたんですか?

ぼくで4代目ですから、当然父も同じ環境で育っていて、
父が幼いころ、つまり祖父の代では旅館も手掛けていたらしいんです。
そこで、子どもの役目が風呂焚き。
だから「焚かなくてもいいお風呂」は、父の夢だったそうなんです。

山崎

なるほど。焚かなくても温かいお風呂(笑)。

掘り当てたからよかったものの、家族はヒヤヒヤですよ(笑)。

山崎

そりゃあ、そうでしょうね(笑)。
低温で炭酸ガスを含んだお湯がたまらなくきもちよくて、
いつもすっかり長湯をしてしまうんですが、あれが非加熱の状態なんですよね。

そうです。非加熱のまま、33度の低温にゆっくり浸かっていただく浴槽を、
男湯、女湯ともひとつずつ設けてあります。

山崎

それにしても、偶然のタイミングとはいえ、
独立してすぐに仕事ができたというわけですね。

はい。建築家としては、ほんとうにラッキーでした。

山崎

浴場は、中庭を囲むように湯船や洗い場が配置された独特の空間ですが、
参考にしたケースはありますか。

とくにリサーチをしたわけではないのですが、従来の銭湯や温泉って、
ここで脱いでここで洗って……と誰も迷わないようにできている
「やりなさい建築」だと思うんですよね。
つまり、とても機能的だけど、窮屈。そこを突き抜けて、
伸びやかで自由度の高い利用を促せたら、という思いで設計しました。

仏生山温泉のフリースペース

仏生山温泉のフリースペース。「小さいこどもは必ず駆け出します」という広さ。訪れたひとが自由な時間を過ごせる空間。

浴場にもって入れる古本が並ぶ「仏小書店」

「本を読みながら湯浴みをしているひとが多いことに気づいて」浴場にもって入れる古本を置くようになった。その名も「仏小書店」。

番台に立ってわかってきたことは。

山崎

ふつうは設計したら終わりですが、岡さんの場合は、
そのまま経営者になってしまったわけですよね。

そうですね。

山崎

番台に立つことでまちへの関わり方に変化が生じた、というのは
とても興味深いです。

なんでしょうね。ひとをよく見るようになったのかもしれません。

山崎

「見る」?

ええ。うまく言えませんが、日々訪れてくださる方たちの表情を見ていて、
なんとなくお客さんの次の行動や希望されていることが
わかるようになってきたというか。
決して、ひとりひとりじっくり観察しているわけでもないんですけど。

山崎

それ、わかる気がします。ワークショップの経験を重ねてきて、
ぼくも同じような感覚を持っていますよ。
「あ、このひと、次はこんな発言するだろうな」
「こうしたいんだろうな」というようなことがだいたいわかってくるんですよね。

たぶん、一緒ですね(笑)。

山崎

それと、こどもができて変わったというのは、
彼らが大きくなった将来のまちのことを考えるようになったということですか?

それもありますが、基本的には「自分のため」ですね。
あくまでも、じぶんがいかにニヤニヤしながらこのまちで暮らしていけるか。
そのために、まちをどうにかしようと思い始めた。これが軸にあります。

山崎

うーん。この対談で岡さんのことばを読んで、救われるひとが多そうです。

……え?

山崎

なんていうのか、すごくない感じというか(笑)。
……高邁な理想を掲げない感じがとてもいいと感じます。

それで誰かが救われるなら、光栄ですよ(笑)。

(……to be continued!)

お風呂上がりにイートインスペースで食べられるかき氷

お風呂上がりにイートインスペースで食べられるかき氷は、粉雪のようにふわふわ。岡さんのイチオシは、キウィのフレッシュシロップ。

仏生山温泉のフリースペースで対談中

「初めて取材で訪れたとき、ふたりで低温の湯船に寝そべって、ずいぶん語りましたよね」(山崎) 「それで、女性編集者さんをメチャクチャ待たせてしまったんですよね」(岡) 「そうでした!いやあ、あれは申し訳なかったな(笑)」(山崎)

information

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仏生山まちぐるみ旅館

客室や食堂や大浴場など、さまざまな役割がまちの中に点在し、まち全体で旅館の機能を担う取り組み。既存の店やあらたに誘致する店と、時間をかけて魅力的な地域をつくり、楽しい人のつながりをつくる。現在は、「縁側の客室」と「仏生山温泉」などがオープン中。

Facebook:http://www.facebook.com/machigurumi

【仏生山温泉】

住所:香川県高松市仏生山町乙114-5

TEL:087-889-7750

Web:http://busshozan.com/

profile

SHOHEI OKA 
岡 昇平

1973年香川県高松市生まれ。物理学者を目指したのに、なぜか徳島大学工学部建設工学科に入学、卒業のころには志をすっかり忘れて日本大学大学院芸術学研究科修士課程に進学、建築を学ぶ。建築設計事務所「みかんぐみ」を経て高松へ戻り、2002年「設計事務所岡昇平」設立。仏生山温泉番台。

Web:http://ooso.busshozan.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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