連載
posted:2022.2.28 from:全国(北海道、岩手、秋田) genre:暮らしと移住 / エンタメ・お楽しみ
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
text&photo
Hikari Sawaki, Itsaumi Shigehisa, Chihiro Ogawa, Saki Kunishige, Chigusa Ide
佐脇 星/重久 愛/小川ちひろ/國重咲季/井出千種
たまたま店で見かけた作家の器、
おいしいごはんや新作の地元のお菓子、
初めて訪れた場所の風景……などなど、
何気ない暮らしのなかにもちょっとした感動や心踊る瞬間はあります。
最近「ときめいたもの」について
今回は全国にお住まいのみなさんに聞いてみました。
長引くコロナ禍のなかにも
「ときめき」は日常にたくさん溢れています。
2月上旬、北海道知床半島に流氷が着岸しました。
昨日まで白波が立って賑やかだった海が、
一夜明けてシーンとしていました。
そこには真っ白の海が。
流氷が近づくと波が打ち消され
とても穏やかで静かな海になるのです。
「対岸の国後島まで歩いて行けるんじゃ……」と思えるほど
びっしり流氷に覆われていました。
(危険なので流氷に乗ってはいけません!)
耳を澄ましてみると、
シーンとした世界の奥のほうから子どもたちが
雪で遊ぶ声と鳥たちの鳴き声が聴こえてきます。
心躍る瞬間です。
静けさを運んできてくれる流氷。
実は自然界にも大きな影響を与えています。
ロシアのアムール川から潮の流れに乗ってくる流氷は、
その氷の中にたくさんのミネラルを含んでいます。
そのミネラルがプランクトンのエサとなり、
プランクトンが小魚を養い、
小魚を求めてウミワシやアザラシたちがやってくるんです。
知床羅臼町にはこのワシと流氷を同時に観察できる
アクティビティ「流氷・バードウォッチングクルーズ」があります。
数十羽のオジロワシ・オオワシが頭上を舞い、
辺り一面、流氷で埋め尽くされます。
日本とは思えない景色が広がっています。
羅臼に来た際には、ぜひこの異世界を体感してみてください。
photo & text
佐脇 星 さわき・ひかり
兵庫県神戸市の人工島で生まれ育つ。子どものときに読んだ「シートン動物記」をきっかけに野生動物が好きになり、「野生動物の息吹を身近に感じられるところに住んでみたい」という思いから、大学卒業後、世界自然遺産の町である知床羅臼町の地域おこし協力隊に着任。関西人から見た羅臼町の魅力をSNSで発信している。
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皆さんは「アーユルベーダ」って聞いたことはありますか?
インドで5000年以上の歴史を持つ
予防医学のひとつとも言われているもので、
要約するとヨガと姉妹のような関係。
自分の体質をタイプ別に知ることで
健康的に過ごすためのヒントがわかる、日本でいう“内科”のような存在です。
なぜ今回ヨガとアーユルベーダの話をしたかというと、
地域おこし協力隊として昨年開催したイベントで商品化した
〈YOGAティー〉が秋田女子の“ときめいたもの”だからなんです!
12月に秋田初のヨガの祭典〈せば、YOGA!フェスタ〉の
申し込みが始まるとすぐに満員御礼状態に。
こちらのイベントでは下記の3つの内容が行われました。
・アーユルベーダ診断で自分の体質をチェック
・3チームに分かれてヨガのレッスンを受けながら交流する
・体質にあったオリジナルハーブティー〈YOGAティー〉の試飲会(お土産つき)
そのなかで大人気だったのがこのイベントのために
特別に制作されたハーブティー。
秋田市のハーブカフェ専門店〈ハーバルカフェプラーナ〉が
ブレンドを行い、秋田市のヨガインストラクターがパッケージをデザイン。
手書き感やシュールな感じに愛着が湧くと、大好評でした。
思わず自分の体質タイプ以外の種類も揃えたくなるほど。
そのほかにも心ときめくハーブティーがたくさんありますので、
ぜひWebサイトをチェックして
おうち時間にときめく瞬間を取り入れてみてください。
photo & text
重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
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岩手に来ると季節の移ろいを
さまざまなものから感じ取ることができます。
そして長い冬の訪れを告げる風景のひとつが「白鳥」。
白鳥は普段北海道よりも北のシベリアやオホーツク海などの
寒いところで生息しているのですが、
秋の終わり頃から越冬するために日本にやってきて、
春先になると北上して帰っていきます。
この岩手県奥州市にも白鳥飛来地があり、
現在私が住んでいるところから車で5分の距離にあります。
東京出身の私にとって白鳥は
動物園や公園にいるイメージだったので、
空から「クァークァー」と鳴き声が聞こえてきたり、
仲間と田んぼでエサをつつく姿を見たりと、
日々の生活の中で白鳥の存在をこんなに間近で感じることは
初めてでとても驚きました。
白鳥がV字に並んで羽ばたく姿を眺めていると、
寒くて縮こまっている気持ちものびのびした気分になれます。
この時期だけ楽しめる風物詩。
雪はまだ残っているものの
ここ奥州も少しずつ春めいてきています。
information
白鳥飛来地 半蔵堤
住所:岩手県奥州市胆沢小山外浦
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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冬の間、あたりは一面真っ白になる秋田。
田畑も雪に覆われて春が来るまではお休みします。
食べものが得にくくなる冬のための保存食として、
漬物の文化が根づいています。
冬は1年のうちで最も漬物が豊富に揃う季節。
地元の方のお宅にお邪魔すると、
お茶請けにたくさんの漬物が出てくることも。
この彩りに気分も高まり、
箸が止まらなくなるほどどれもおいしいんです。
家庭ではたくさんの漬物が入った樽が蔵の中で大切に保存されています。
地元の方たちのていねいな暮らしぶりに憧れます。
季節とともに生きるための漬物という暮らしの工夫。
冬を楽しむ方法として取り入れてみたいと思います。
photo & text
國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
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道東の真ん中に位置する、弟子屈町。
気象庁のデータによると1、2月の平均気温はマイナス7度、
最低気温はマイナス12〜13度。
私自身、初めて迎える弟子屈町の冬。
ある朝、出勤しようと家を出たらあたり一面が氷の世界に!
青空の下、道路脇の木も草も霧氷に包まれていました。
キラキラ輝く林道を車で走りながら
「こんな風景を眺めて出勤できる生活があるなんて!」と、ときめいたのです。
こんな美しさをインスタグラムに投稿して、
ときめく気持ちを掻き立ててくれるのが國分知貴さん。
町内の屈斜路湖畔に暮らし、夏はカヌー、
冬は雪山などのツアーを行う〈RIVER&FIELD〉の
ガイドをしながら写真家としても活躍しています。
「湿度があって、氷点下で、風があまりない。
いろんな要素が絡み合うと見られるのが霧氷。
気象条件の違いによって、冬の朝は見える世界がまったく違う。
それを予測するのがおもしろいんです」と、魅力を語る國分さん。
冬のフィールドと掛け合わせることで、よりスペシャルな体験になるのだそう。
「冬山に滑りに行くなら、帰りは樹氷の中を降りてこよう、
なんて作戦を立てる。この斜面なら光はこう当たるかな?
北斜面なら樹氷が残っているかな?などと予測してみたり。
その過程も楽しい。
ただ“きれい”で終わらせてしまうのではなく
霧氷のメカニズムを知ってイメージしたうえで訪れたら、
自分だけの霧氷ポイントもきっと見つかりますよ」と教えてくれました。
information
RIVER&FIELD
text
井出千種 いで・ちぐさ
横浜市出身。大雪山登山で雄大な自然に感動、北海道のファンになる。2018年、帯広市に移住。2021年5月、弟子屈町地域おこし協力隊着任。摩周湖観光協会に籍を置きながら、弟子屈町、道東、北海道の魅力を発信するべく努力中。
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