連載
posted:2021.12.29 from:全国(北海道、岩手、秋田、岡山) genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
text & photo
Chigusa Ide, Saki Kunishige, Chihiro Ogawa, Koban, Hikari Sawaki
井出千種/國重咲季/小川ちひろ/こばん/佐脇 星
空き家や廃校などを「Re活用(利活用)」し、
新たな施設へと生まれ変わらせる活動は近年増えています。
今回は全国にお住まいのみなさんに
「Re活用」され、生まれ変わった施設・スポットを教えてもらいました。
学校、お寺、元スナックだった場所……
以前とは異なるかたちとなった今でも
まちの人々の拠点として愛され続けています。
知床半島の付け根辺り。
日本百名山・斜里岳の麓のまち・清里町に、
お寺を再利用した宿〈マンディル〉がオープンしました。
オーナーの嶋田武志さんは
「景色も環境もすばらしいこの場所に、滞在できる施設をつくろう」
と探していたところ、
築41年、総面積436平方メートルの物件に出会ったそうです。
本堂、休憩室、炊事場、廊下続きの庫裡(くり)※を改装し、
宿だけでなく、アウトドア用品のショップや
イベントスペースとしても活用しています。
※住職の住む場所のこと。
本堂だった広い和室の中央には、
インパクトのある金色の仏具が吊り下がったまま。
「賽銭箱、扉、建具など、歴史を感じる希少なものばかり。
究極のジャパニーズスタイルは、海外のゲストにも好評です」
「元・お寺」が話題にもなって、
ヨガ教室やクラフト作家のワークショップを開催したり、
近隣の町村からクリエイターや飲食店が集まってイベントを行ったり。
半年間で、さまざまなジャンルの人が行き交う拠点へと成長しました。
「道東の最果て。
この界隈でユニークな活動をする人たちをつなげて、エリアの認知度を高めていきたいですね」
と、嶋田さんは語ります。
2022年1月15日には、音楽と飲食のイベント
「ご自由にどうぞ」の開催が予定されています。
詳細はfacebook(@S.SHOUKAI.MANDIR)、
Instagram(@s.shoukai.mandir)、Twitter(@tsnumber1919_s)を
チェックしてみてください。
information
photo & text
井出千種 いで・ちぐさ
横浜市出身。大雪山登山で雄大な自然に感動、北海道のファンになる。2018年、帯広市に移住。2021年5月、弟子屈町地域おこし協力隊着任。摩周湖観光協会に籍を置きながら、弟子屈町、道東、北海道の魅力を発信するべく努力中。
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〈わくばにかほ〉は、にかほ市内の旧上浜小学校を活用した施設。
インキュベーション施設として今年の4月にオープンしました。
かつての小学校の雰囲気をガラッと変えて、
スタイリッシュな内装へと変化。
企業がオフィスとして使える部屋のほか、
オープンな雰囲気のコワーキングスペースを備えていて、
新しい働き方を地域に示す役割を果たしています。
またイベントの開催にも積極的で、
地域でビジネスが生まれるきっかけづくりや、
人材育成にも取り組んでいます。
コロナ禍で注目が集まった「ワーケーション」。
自然豊かなにかほの地では
快適な仕事環境を備える場所の存在は欠かせません。
新たな働き方、生き方を提唱する施設として、
〈わくばにかほ〉にますます注目が集まること間違いなしです。
photo & text
國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
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奥州市水沢の中心部から徒歩圏にある〈国立天文台水沢〉。
このエリアの地名は天文にちなんでいて、
なんだかロマンを感じます。
1902年には天文学界で大発見だった
「Z項」という数式を生み出したり、
ここ数年だと世界初ブラックホール撮影に成功した
国際プロジェクトにも関わっていたり、
人間にとって未知なる宇宙の謎を紐解いている
世界レベルの研究が日々行われています。
そのキャンパス内にある〈奥州宇宙遊学館〉は、
大正時代に建設された〈旧緯度観測所本館〉をRe活用している建物。
老朽化のために取り壊しが決定されていましたが、
市民から保存活用の声が多く集まり国から市へ譲渡され、
耐震改修工事を行い当時のレトロな木造建築様式を再現。
2008年〈奥州宇宙遊学館〉として開館しました。
2017年には国の登録有形文化財となり、
現在では宇宙科学にまつわる展示やシアター、
天体観測会などのイベントなども開催され、
子どもから大人まで楽しく学べる施設として年月を超えて活用されています。
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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浅口市は鴨方町・金光町・寄島町から構成されていますが、
各町内にRe活用された拠点ができています。
鴨方町にはボランティア移動サービス〈みどりん号〉を運営する
〈みどりヶ丘イキイキグループ〉の拠点、〈いきいきプラザ〉。
元スナックの空き店舗が事務所兼集いの場となりました。
金光町ではかつて食堂として愛されていた場所が
レンタルカフェスペース〈大谷みかげスクエア〉に。
寄島町ではこの冬、畳屋だった建物が
〈寄島ぷらっとHome〉として活用されています。
こういった取り組みを行う沖村舞子さんは
2016年1月から3年間、
〈地域おこし協力隊〉として住民の方たちと
移動サービスの立ち上げや空き家活用などを行い、
移住から丸6年が経つ現在も自身が立ち上げた
〈一般社団法人moko’a〉で活動を継続。
人・もの・コトが集まり、つながる仕組みづくりを進めています。
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こばん
大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。
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峯浜町にある〈羅臼町郷土資料館〉は、
校舎の面影を残す施設。
ここはかつて中学校として使用されていた建物だったんです。
以前は、〈植別小中学校〉という名前で、
明治36年に植別簡易教育所として6人の生徒からスタート。
平成15年に開校100年を迎えた際は
中学校にゆかりのある約220名が集まりました。
生徒数の減少に伴い、平成22年3月に近隣の春松小学校に統合。
106年の歴史に幕を下ろしました。
廃校後、町内会から博物館として利用する案が提案され、
〈羅臼町郷土資料館〉として生まれ変わりました。
羅臼町民より寄贈された生活・漁業に関する資料や
遺跡から出土した土器や石器、知床の自然を代表する
シマフクロウやオオワシのはく製などを多数展示しています。
なかでも注目は、重要文化財である
「北海道松法川北岸遺跡出土品」の数々です。
これらの文化財は当時の家が火事にあったことで炭化。
令和の時代まで腐らずに現存したのだそうです。
100年以上の歴史を持つ学校は、
かつて羅臼町に住んでいた人々の暮らしを
私たちに教えてくれる学びの場として愛されています。
information
photo & text
佐脇 星 さわき・ひかり
兵庫県神戸市の人工島で生まれ育つ。子どものときに読んだ「シートン動物記」をきっかけに野生動物が好きになり、「野生動物の息吹を身近に感じられるところに住んでみたい」という思いから、大学卒業後、世界自然遺産の町である知床羅臼町の地域おこし協力隊に着任。関西人から見た羅臼町の魅力をSNSで発信している。
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