ジビエが抱える問題を解決したい

和田さんを中心に客同士があっという間に打ち解けていきます。店は2017にオープン。
もともとは介護の仕事をしていたという和田さん。
店を開いたきっかけを尋ねると、意外な答えが返ってきました。
「本当は、ジビエの解体処理施設をつくりたかったんです」
和田さんが狩猟免許を取得したのは6年ほど前。
もともと釣り好きで、自分で釣った魚を自分でさばいて食べていた和田さんにとって、
天然の肉を求めて猟師になることは、自然な流れだったといいます。

雪の上を歩くための「かんじき」。冬の狩猟には欠かせない道具。
「狩猟をするうちに、自分の好きなことを仕事にしたいと思うようになりました。
野生の肉は、食品衛生法に適合したジビエ専門の処理施設を通さなければ、
食肉として流通させることはできません。でも処理できる施設って少ないんです。
これではせっかくのおいしい肉が、食べる人のもとに届かない。
自分でできないかと思うようになり、いろいろな処理施設に行って、
見学させてもらいました」

ディスプレイされている頭蓋骨は処理施設から譲ってもらったという。骨や皮も和田さんにとっては大切な命。
しかし実際は、高額な設備投資に加え、野生の動物が相手であるため
安定供給が難しいなど、ひとりで実現するには壁が多く、
断念せざるを得なかったといいます。
「でも、どうしても諦めきれなくて。
自分にできることは何かと考えたときに、ジビエを身近な家庭料理で提供して、
そのおいしさを知ってもらうことでした。
野生の肉を気軽に家庭で食べてもらえるようになったらいいなと思います」

「今日の命いただきます」の文字が印象的な手書きのメニュー。
お客さんから「おいしい」と言ってもらえるのが何よりうれしいという和田さん。
近年、森や畑を荒らす害獣であるイノシシやシカを捕獲し、
地域資源として活用する動きが高まっているものの、
その多くが食肉になることなく廃棄されているといいます。
奪った命を“森の恵み”としてありがたくいただきたい。
命と向き合うハンターがつくる料理には、そんな動物愛がぎゅっと詰まっています。
*価格はすべて税込、時価で提供する料理もあり。
