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秋田 Part3
ぼくが秋田に本気でワクワク
した理由。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.042

posted:2012.11.26  from:秋田県秋田市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:鈴木竜典(R-room) 大島拓也(山崎さん、藤本さん)

「Re:S(りす)」代表の編集者・藤本智士さん。
秋田から発行するフリーマガジン『のんびり』が注目を集める藤本さんと
山崎さんの対談を4回にわたりお届けします。

梅原真さんとの初対面が秋田県庁だった。

山崎

秋田にはどういうきっかけで?

藤本

いちばん最初は2008年の『Re:S』の取材ですね。
青森帰りに羽後町の花嫁道中という雪のなかのお祭を見て、
すごく感動したんです。それ以来、冬の秋田にハマって、
しごとでもプライベートでも自家用車で通ってました。

山崎

ん? 駅からレンタカーじゃなく、自宅から車で?

藤本

そうなんですよ。ぼくにとって、旅は道中が大事なんで(笑)。
新車買って1年の点検で5万キロ走ってたみたいで、
さすがにディーラーさんにも驚かれました。

山崎

それは驚く(笑)。

藤本

昨年春に、東京ミッドタウン・デザインハブの企画展
「日本のデザイン2011 Re:SCOVER NIPPON DESSIGN」
というイベントの総合プロデュースを任されたんですが、
それまで名だたるデザイナーさんたちが行ってきたこの企画展を
ぼくがやるからには、自分のフィールドに持ってくるしかないな、と。
それで、デザイナーさんと一緒に「旅をする」ことにしたんです。

山崎

お、それは楽しそうだ。

藤本

そのとき主催者側へ出した条件はたったひとつ。
「このために超一流のデザイナーさんを3人選んでください」ということ。
さっきも話したように「3割の遊び」が成功するためには、
一流ではなく「超一流」でないとダメなんです。

山崎

なるほど。

藤本

それでご一緒したのが森本千絵さんと山中俊治さん、それに梅原真さん。
そのときに梅原さんとのスケジュールが全然合わなくて、
最終的に「秋田でなら」ということになり、初対面の梅原さんと
秋田県庁で待ち合せすることになるんです。

山崎

当時すでに、梅原さんは秋田県のイメージアップ戦略アドバイザーに
就任してますもんね。

藤本

はい。それ以降、少しずつ秋田で講演会に招いていただいたり、
県の職員や地元のクリエイターとお話する機会をいただいたり、
一方的に「こんなんあったらええなあ」っていうことをプレゼンしたりしてました。

神社にお詣りする藤本さん

旅先では、まずそのまちの神社にお詣りするという藤本さん。のんびり編集事務所に到着したら、なにはともあれ向かいのお稲荷さんにごあいさつ。

いよいよ県庁との打ち合わせ

和気あいあいなランチから始まったスタッフミーティングを経て、気分をひきしめいよいよ県庁との打ち合わせへ。

「どうにもならないことに対しての潔さ」に惚れた。

藤本

どこのまちでもだいたい共通するのは、行政や企業のおじさんたちって、
ぼくたちクリエイターとなかなかはなしが通じないってこと。

山崎

(笑)

藤本

でも、秋田では違ったんですよ。
みなさんの目の色がどんどん変わっていって、
「本気で変わらなくちゃ」っていう思いがちゃんと届いてる実感があったんです。
そういうことを経て、秋田をPRするメディアの発行という
動きがスタートしたので、ぼくは地元の若いクリエイターと組んで、
この『のんびり』を提案することになりました。

山崎

その子たちとはどうやって出会うんですか?

藤本

プライベートで通ってるころからの積み重ねですね。
じぶんたちの宝物は足もとにあることをはっきりと認識している彼らのことが、
ぼくは大好きなんです。それに、毎冬直面する大雪のような
「どうにもならないことに対しての潔さ」みたいなところもスゴイなぁって。

山崎

……なるほどね。

藤本

秋田県知事と梅原さんと、県民300人の前で鼎談する機会があったんですが、
そのときに知事が「わたしは秋田を誇りに思っている。
なにしろ秋田には、うまいメシとうまい酒がある!」って言い切って、
それを聞いた会場がドカーンと笑うのを見て、またスゴイなぁって。
なんて幸せなことなんやろうって。

山崎

うーん……深いですね。

藤本

「うちがいちばんおいしい」という絶対価値でなく
「そうか、アンタのまちもおいしいか。よかったな」と言える
相対価値みたいなものがこれからのスタンダードなんだって、
そのときに確信したんです。トップにこういう知事がいるなら、
このまちから日本を変えることができるんじゃないかって、
本気でワクワクした瞬間でした。

山崎

PRメディアの発行は県のしごとだから、
プロポーザルで選ばれたということですよね?

藤本

そうです。大手代理店が有名クリエイターと組んで
パワープレイでやってくるようなプロポーザルです。決まったときも
「これまでに見たことのないやり方を提案してきたあなたたちを選んだのは、
県庁としても大きなチャレンジです」とはっきり言われました。

山崎

いわば「賭け」ですよね。

藤本

県も腹をくくってるのがわかるし、ぼくらもそのことをちゃんと理解して
本気でがんばろうと思っている。リスペクトし合えるいい関係で、
お互いに気持ちよくしごとができているという実感があります。

山崎

これもまた、さっき出てきた「潔さ」なのかもしれませんね。
この「どうにもならないことに対しての潔さ」って、
秋田のみならず、中山間離島地域に共通する観念のようにも思います。
都市郊外育ちのぼくはまったく持たない感覚だったので、
はじめのうちは苦労の連続でした。
たとえば今日は嵐でフェリーが運行しないとか、
まちにタクシーが1台しかないという日常のささいなことさえ、
「しょうがない」と思えるまで2年はかかりましたね。

藤本

うんうん、わかります。

山崎

藤本さんの編集の手法もぼくらコミュニティデザイナーのやり方も、
先に正解のアイデアを持って行くのではないというところが同じですね。
どちらも「そこへ行ってみて」なにが起こりうるかを探るという意味では
とても似ています。
そして、こんな風に始まりが不確かであいまいなやり方を飲んでくれるのは、
東京や大阪といった都市部よりも、圧倒的にローカルなんですよね。
ローカルのほうが、しなりとか順応性とか、そういう豊かさを感じます。

(……to be continued!)

「cocolaboratory」

リノベートビルにギャラリーやショップ、カフェが入居する「cocolaboratory」。秋田県内外で活躍する旬のクリエイターと出会えるスポット。http://cocolab.jugem.jp/

フリーマガジン『のんびり』を手に取る山崎さん

「秋田からニッポンのびじょんを考える」フリーマガジン『のんびり』を手に取る山崎さん。現在配布中のvol.2は、「与次郎きつね」をはじめとする秋田の伝説が特集されている。http://non-biri.net/

藤本智士さん

「県の長である知事が、なにしろ秋田には、うまいメシとうまい酒がある!って言って、それを聞いた300人の県民がドカーンと笑う。これって最高だなって思ったんですよ」(藤本)

profile

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SATOSHI FUJIMOTO 
藤本智士

編集者/有限会社りす代表 1974年、兵庫県西脇市生まれ。

2004年に出版した『すいとう帖』をきっかけに、「マイボトル」という言葉を生み出し、現在のマイボトルブームをつくる。2006年雑誌『Re:S(りす)』を創刊。11号で雑誌休刊するまで、編集長を務める。その後自らの会社名を「Re:S(りす)」と変更。

Re:S=Re:Standard(あたらしい、ふつう)を単なる雑誌名とせず、様々な書籍や展覧会やものづくりをとおして、Re:Sを体現していく編集活動が話題を集める。最近では、デジタル時代にアルバムの大切さを伝えるべく開催した「ALBUM EXPO」(大阪/名古屋にて開催)、3人のデザイナーとの旅の記録を展示化した「日本のデザイン2011 Re:SCOVER NIPPON DESIGN」(六本木ミッドタウン)の企画・プロデュース。国土交通省観光庁をとおして、全国の小、中、高の図書館に寄贈された、ジャニーズ事務所の人気グループ嵐による『ニッポンの嵐』の編集、原稿執筆を手がけるなどで話題に。近著に『ほんとうのニッポンに出会う旅』(リトルモア)。イラストレーターの福田利之氏との共著として『Baby Book』(コクヨS&T)がある。現在、秋田県より全国へ発行されているフリーマガジン『のんびり』の編集長を務める。

Re:S(りす):http://re-s.jp/

『のんびり』:http://non-biri.net/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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