連載
posted:2013.10.22 from:北海道 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。
editor profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
photographer
Suzu(Fresco)
スズ
フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/
北海道・旭川は、岐阜の飛騨や福岡の大川に並ぶ家具の産地だ。
1890年、木挽場(製材所)がつくられ、
全国から家具職人が集まったのがきっかけとされる。
豊かな森林に囲まれ、ミズナラなどの良質な木材があった。
1949年には旭川家具事業協同組合(現・旭川家具工業協同組合)が設立され、
旭川家具はブランド化していった。
工房も含め、今でも100以上の家具関連のものづくり企業がある。
旭川家具は大型の収納家具を中心に栄えてきたが、
4名でスタートしたコサインは、
小さな木工製品をつくっているメーカーだ。
社長の星 幸一さんは、インテリアセンター(現カンディハウス)という
家具メーカーで職人として11年勤務し、
その後、北海道立の職業訓練校で技術指導員をしていた。
そして1988年にコサインを立ち上げる。
ペン立てやペンケース、スイッチカバーなどが最初の製品だ。
“収納家具”の産地である旭川においては異色の立ち上がりであった。
大型の家具をつくっていると、端材が必然的に出てくる。
それらを集積材にして使用していたが、
なかなか使い切れずにたまる一方になってしまう。
そこで、それら端材を活用してつくれるもの=小さな木工製品をつくり始めた。
端材で製品をつくることはもちろん、木ならば、すべて使い切ることができる。
星社長は実用法を教えてくれた。
「おがくずも牛の敷きわらの代用品として利用しています。
それは糞尿と混ざって最終的には堆肥になります。
とがった屑などは冬の薪ストーブの燃料にしています。
その木の灰も肥料になります。まったく捨てるところがありませんね」
天然のものだから、すべて循環している。
産業廃棄物として出すことは少ない。
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日本は木の文化であり、木造の建築も家具も多い。
それでも材料の多くは輸入材に頼っているというのが現状だ。
7〜8割は北米やロシア材。
地元・北海道には山桜やカバ、タモ材があるが、伐採量は制限されている。
「例えばかつて北海道には抱えられないようなミズナラがあったんですが、
いい木は輸出して外貨に変えてしまったんです。
できれば地元の木材を使いたいとは思います。
しかし無理に使おうとすると、
100年以上の木が望ましいところを、仕方がないから90年で、
と伐採を早めてしまうことになります」
木は1年や2年では育たない。
いま良質の木材として使っているのは、樹齢100年以上の木だ。
人間にして3〜4世代前の木である。
「それを自分たちが使わせてもらっていると思うと、
使い切らないわけにはいきません」
だから長く使ってほしいし、使うことができるのが木工製品のはずだ。
他のメーカーは海外に生産拠点が移り、家具の価格は下がっていった。
価格で競争しても勝てない。
が、コサインの品質は他とはまったく違うものであり、
こちらは長く使うことができる。
100年乗れるクルマはないが、100年収納できるタンスはある。
「そう考えると、木の製品の価値はもう少し高くてもいいのかもしれません。
それだけの材料を使って、技術的にも長持ちするように手を加えていますから」
たしかにきちんと使えば100年使えるだろう。
しかしそのつもりで購入していなければ同じことだ。
100年使うつもりでいるか? それだけの価値を見いだして購入しているか?
数年で使い捨てていたら意味がない。
「残念ながら、なんでも使い捨ての世の中になってしまっています。
だからこそ、飽きずに長持ちするものをつくり続けていかないといけません。
使う人にとって便利か、楽しいか、幸せになれるか。
木のある幸せな生活を届けるのが私たちの使命です。
はじめから“旭川ブランドです”とか“無垢材だからいいものです”
“こんなに手をかけてます”ということを
打ち出せばいいわけではないと思います」
木工製品は、消費社会から循環社会への転換の象徴となりうる。
木に囲まれた生活が気持ちいいこと、そしてその材料や手間に目を配ること。
それを伝える活動をコサインは怠らずに続けている。
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