連載
posted:2017.8.16 from:北海道古宇郡泊村 genre:活性化と創生
sponsored by 岩内町、神恵内村、泊村
〈 この連載・企画は… 〉
北海道の南西部に位置し、日本海に囲まれた積丹半島。
まるで南国のようなコバルトブルーの海が広がり、手つかずの自然と、神秘的な風景が残っています。
なぜ、積丹の海はこんなに青いのか? この海とともにどんな暮らしが営まれてきたのか?
この秘境をめぐるローカルトリップをご案内します。
writer profile
Tomohiro Okusa
大草朋宏
おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。
photographer profile
Tada
ただ
写真家。池田晶紀が主宰する写真事務所〈ゆかい〉に所属。神奈川県横須賀市出身。典型的な郊外居住者として、基地のまちの潮風を浴びてすこやかに育つ。最近は自宅にサウナをつくるべく、DIYに奮闘中。いて座のA型。
http://yukaistudio.com/
積丹半島の西海岸、岩内町から泊村を通り神恵内(かもえない)村までの間は
ずっと車で海岸線を走っていける。泊村からもう少しで神恵内村に差しかかりそうな頃、
歩いて橋を渡れる弁天島という島が見えてくる。
その弁天島を臨むようにして海沿いに建っているのが〈さかずきテラス〉だ。
2016年7月にオープンし、
このエリアで注目のマリンアクティビティが楽しめる〈さかずきテラス〉。
スノーケリングやダイビングに加えて、
シットオンカヤックやクローズデッキタイプのシーカヤックなど、バリエーションも豊富。
せっかく夏に積丹西海岸を訪れたのなら、美しい海へと飛び出してみたい。
初心者向けには、シットオンカヤックに乗って、
目の前にある弁天島を40分ほどかけて1周するコース。
中級者にはクローズデッキシーカヤックで隣の神恵内村まで行くこともできる。
4キロメートルほどを2時間かけていくコースもある。
さっそく、クローズデッキタイプのシーカヤックを体験してみた。
「このあたりには海からしか見ることのできない、
かつてニシン漁で栄えた名残りなどが見られますよ」と教えてくれたのは、
海の上でシーカヤックガイドをしてくれたさかずきテラス店長の徳間貴之さん。
断崖絶壁になっている岩場などを、海面レベルから見られるのはおもしろい体験だ。
崖を這うようにしてかつての旧道跡地がいまだ残されており、
少し前までは、人が訪れるのが容易ではない秘境であったことを感じさせる。
30〜40年前までは、この先の神恵内村へは岩内と結んでいた
定期連絡船〈かむい丸〉が主な交通手段だったのだから。
「100年前のものがゴロゴロ転がっているんですよ。
古い鉄のアンカーとか、木の電柱に電線も残っていたり。
袋澗(ふくろま)と呼ばれる、
かつてのニシンの水揚げ場などがそのまま残っている場所もあります」
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ダイビングやスノーケリングでは、
積丹半島の海の特徴でもある「積丹ブルー」をより堪能できる場所もあるだろう。
「アプローチがわりと簡単で、深みもあったりするので変化に富んでいますよ。
水もきれいで、光が下まで届くところがたくさんあります。
個人的には、積丹半島の東海岸よりも、
こちらのほうがより青い『積丹ブルー』だと思っています」
もうひとつ、積丹の夏の顔といえばウニ。
どの飲食店でもシーズン中はウニを提供し始める。
積丹のウニは全国的に知れわたるおいしさで評判だが、
せっかく現地に行くのならば、自分でウニを割って食べてみたい。
そんな体験もさかずきテラスでは可能だ。
用意されたのは、朝とれたばかりのキタムラサキウニ。
さかずきテラスでは漁師から身入りのいいウニを直接買っているという。
割り方はごく簡単だった。
ウニの口に、〈ウニパックン〉という器具を差しこんで、
ハンドルを握るときれいにふたつに割れる。
そこから身をスプーンで取り出していく。
取った身を浸してすすぐのは海洋深層水を使用している。
割ったばかりのウニの味は格別。
この日の参加者も「すごく甘くて、おいしさがずっと口に残る」とご満悦の様子。
希望者には小さなご飯に乗せて、ミニウニ丼にしていただくこともできる。
最高に贅沢な体験だ。
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さかずきテラスは、海洋調査会社〈沿海調査エンジニアリング〉が運営している。
これまでも、海洋調査事業の一環として泊村や積丹の海を訪れていた。
そして会社としては地域振興というかたちで
沿岸地域に恩返しがしたいという思いを持っていた。
特に泊村や神恵内村あたりの海には、まだまだ魅力があると感じていたのだ。
そんなときに、ある民宿が営業を停止するという話を聞いた。
それが現在さかずきテラスがある場所だ。
「この地域は観光への意識があまり高くありませんでした。
この目の前の海も、夏はテントだらけになるんですよ。
でも彼らは泊村にお金を落としません。落とす場所も少ない。
だからここにお店をつくったんです。お店があれば、食材などを地元から仕入れられます。
札幌などからまとめて仕入れたほうが安く済む場合もあるけど、
あえて地元から仕入れるようにしています」
マリンアクティビティを楽しんだ人の休憩場所としての位置づけもあるが、
もちろん通常のカフェとしてのんびり活用して構わない。
カレーやアイスクリーム、コーヒーなどが用意されている。
目の前は全部、海!
店内も大きな窓で明るく開放的。テラス部分に座っても心地よい。
カフェのような目的地ができれば、そこを目指して観光客も訪れるようになる。
観光的な側面と同時に、海洋調査の会社である強みを生かして、
さまざまな海洋学習の場としても機能させている。
「地元の子どもたちや修学旅行などで訪れた学生たちに、海の実情を教えたい。
地元からのリクエストが意外と多くて、
みんなの目の前にある海のことを実はあまり知らないようです。
海へ遊びに行くことも少ないし、教えられる人も少ないようです」
海水温の上昇など、海をめぐる環境は刻々と変わっている。
かつてはニシン漁で栄えた積丹だが、一度はニシンがとれなくなった。
けれど最近はまたニシンが戻ってきつつあるという話もある。
時代とともに、漁の対象も変わってきた。現在では藻場の減少なども問題になっている。
もしかしたら、いまの子どもたちが大人になるころには、
ウニがとれなくなるということも、あり得ない話ではない。
海と直結している場所で、海に触れながらであれば説得力が増すだろう。
「もっと地元の魅力を知ってもらって、たとえ一度泊村から外に出ていっても、
Uターンしてほしいし、泊村への移住者も増えてほしい。
こうした交流拠点が成功すれば、ほかにも増やしていって、
雇用を増やすこともできます」
まずは、現状のカフェ部門の地域雇用を考えているという。
そしてこれからもさまざまなワークショップやイベントなどが控えている。
人が集まり、海のことを考え、その恵みを受けて遊び、生きていく。
泊村の海を、より身近に感じられる交流の場になりそうだ。
information
さかずきテラス
住所:北海道古宇郡泊村大字興志内村字茂岩231-4
TEL:0135-75-2020
営業時間:9:00〜18:00(火曜日12:00〜18:00)※変更する場合があるので、訪れる前に電話でご確認ください。
定休日:月曜日※冬期休業(イベント・会議を除く)
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