連載
posted:2021.5.28 from:全国(北海道、岩手、秋田) genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
writer profile
Saki Kunishige, Yosuke Oishi, Chihiro Ogawa
國重咲季/大石陽介/小川ちひろ
日本には、その土地それぞれで発展した言葉・方言があり、
挨拶や日常的に使う言葉も、まちが違えば言い回しも異なります。
今回は〈地域おこし協力隊〉のみなさんに
お住まいのまちで話される方言のなかでも
特に好きな言葉を教えてもらいました。
相手への思いやりやあたたかい気持ちが
ひとつの言葉のなかに込められたものばかり。
みなさんが住んでいるまちでは、どんな言い回しをしていますか?
ぜひ比べてみてください。
「まんず、かだれ」
にかほ市で暮らすようになった頃に
地元の方からかけられた言葉でした。
「かだる」というのは
「仲間になる、参加する」という意味の方言。
秋田県のほか、山形県や岩手県でも使われることがあるそうです。
地元の方が集まる場にお邪魔した際、
輪に入れず側で立っていた私に、
「まんずかだれ」と声をかけてくれました。
「仲間に入りなよ!」なんて、
大人が口に出すのはなかなか気恥ずかしいような気がしますが、
「かだれ」は「こっち来なよ」というくらいの
気軽な感じで使うことができるうえ、
相手に「仲間になってもいいんだ」と、
安心感を与えられる言葉です。
よそ者の私にとっては、魔法のように心温まる言葉でした。
photo & text
國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
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北海道からは、「なんもなんも」をお届けします。
「なんもなんも」とは、
「どういたしまして」や「気にしないで」、
「どうってことないよ」という意味でよく使われます。
広大な面積を誇る北海道。
お願いをしたときや、お礼を言ったときには必ず
「なんも、なんも」が返ってきます。
スケールの広さからくる懐の深さ、
そして先人たちの原野を切り拓いてきた強い心があるからこそ、
どんなときでもこの言葉が返ってくるのかなと思っています。
言ってもらうと、ほっとするだけでなく、
どこか心強さがプラスされたような気持ちになってしまいます。
だからこそ、自分もどんなときでも
「なんもなんも」が言える人でありたいなと日々心に留めています。
photo & text
大石陽介 おおいし・ようすけ
1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年間勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。世界自然遺産である『知床』での2年間の移住生活を経て、現在はSDGs未来都市に選ばれた北海道下川町を拠点にシモカワベアーズ(起業型地域おこし協力隊)として活動中。しもかわをぐるっとつなぐおもてなし宿の開業に向け準備を進める。第1弾として『ぐるっとしもかわ』というローカルガイドを期間限定でスタート。第2弾として、森の中でのサスティナブルキャビンを建設準備中。
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岩手生活4年目。
地元の人とおしゃべりをするときの楽しみのひとつは
自分にとって耳慣れない方言を聞くこと。
そのなかでも私のお気に入りは「おささる」です。
お猿さんの種類ではありません。
ある日、友人がスマートフォンをいじっていたとき。
友人「あー! おささったー!」
私「え? 何か刺さった?」
友人「ううん、間違えておささっちゃったの」
私「おささ…???」
初めてこの言葉を知った人は私のように
きっと頭がはてなだらけになってしまうことでしょう。
「おささる」とは
「意図せずに間違えて(ボタンなどを)
押してしまうこと」を意味するそう。
ちなみに、そのほかの「〜さる」シリーズとして
「書かさる」という言い方もあり、
「このペン書かさらないな」と言われたら
「このペン、インクが出ないから書けない」
という意味になります。
自分はわざとではないという意図を伝える、
何ともかわいらしい言葉なので
男性が使っているのを聞いてもついついほっこりしてしまいます。
photo & text
小川ちひろ おがわ・ちひろ
遊軍スタイルフリーコーディネーター。東京出身。オーストラリアや台湾での海外生活も経験する放浪人間。異なる文化や感覚を持つ「人」に興味を抱く。 転職を機に〈地域おこし協力隊〉の制度を活用して岩手へ移住。現在は遊軍スタイルのフリーコーディネーターとして、旅するように東北の暮らしを堪能中。フットワークの軽さとコミュニティの広さをいかして、人をつなげてケミカルな反応が起こる「場」や「間」を創り出すことを楽しんでいる。
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