連載
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Yosuke Ohishi, Itsumi Shigehisa, Chihiro Ogawa, Takayuki Endo, Naoko Shindo, Sachi Honda, Yuko Sugita
大石陽介/重久 愛/小川ちひろ/遠藤孝行/進藤菜央子/本多紗智/杉田夕子
TVやガイドブックなどでさまざまなまちの特集を
見聞きすることも少なくないですが
やはり地域のことを知るならば、行ってみるのがいちばんです。
「自分の住むまちを好きになってもらいたい!」
そんな想いから、地域の特性を生かしたユニークな宿が全国に増えています。
今回は、日本各地の〈地域おこし協力隊〉のみなさんに、
地域の魅力を体験できる宿について教えてもらいました。
羅臼の前浜でとれる自慢の海の幸、
その素材のうまみを最大限に引き出すお母さんの手料理は、
民宿に泊まるお客さんの心を一瞬でつかみます。
地産地消をモットーに鮮度にこだわり、
添加物を一切使用しない安心できる料理を、満足いくまで食べられます。
元漁師の奥さんだからこそできる無駄の一切ない調理は、
今の時代ともマッチしています。
また、ジビエ料理も提供される数少ないお店のひとつでもあります。
食事中はもちろん、滞在する間に話されるお母さんの巧みな話術は、
実家に帰ってきたような居心地に変えてしまいます。
そのため、思う存分くつろいで心も体もリフレッシュできる旅になります。
羅臼の本物の味は〈民宿本間〉にあるので、ぜひお越しください。
information
民宿本間
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大石陽介 おおいし・ようすけ
1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。現地の小中高一貫校で先生方へのアドバイス・子どもたちへの指導にあたる。現在は、羅臼町の地域おこし協力隊として、「ソトから見た羅臼」という視点でまちの魅力を発信中。町内のあちこちへ出向き、取材から撮影、編集までをひとりでこなす。
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「地元に戻りたくても帰るところがない。
墓終いもしてしまい自分のルーツを断ってしまったような寂しさがある……」
そんな声を聞いて”みんなの実家をつくろう”と、
立ち上がったのが、門脇成英さん。
昨年、〈みんなの実家 門脇家〉を秋田市上新城地区にオープンしました。
秋田北インターチェンジからすぐで、
目の前には広大な田んぼや畑が広がる施設は、なんと1056坪!
大きな時計が目印になっていて、訪れる方の好奇心をかき立てます。
もちろん、駐車場も完備されています。
薄れゆく近所・地域の絆を強め、
昔の故郷のように地域を盛り上げながら、
秋田へ帰ってきたくとも留まる場所がない方へ
“みんなの実家”を提供している門脇さん。
秋田市の空気、自然、そして地域の方との交流まで
一気に楽しめてしまう施設、贅沢ですよね。
本当の“実家”感を体験できます。
イベントエリアでは、門脇さんの“地元の方とみんなが顔なじみになれる
きっかけもつくりたい”という想いから、
月1のイベントのほか、いろいろな企画ものも開催しています。
露天風呂やコテージも設けるそうですので、
ぜひ、秋田市へ来た際には〈みんなの実家 門脇家〉へ
一度遊びに来てみてはいかがでしょうか。
information
みんなの実家 門脇家
住所:秋田県秋田市上新城中片野36-35
TEL:090-2660-2000
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
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日本三大散居集落のひとつ胆沢にある農家民泊〈まやごや〉を紹介します。
オーナー及川久仁江さんは、ドイツのグリーンツーリズム研修に参加。
美しいまちづくりに感動し「日本もこうあるべき」と思うようになったそうです。
その後、自身が農家民泊を体験したことをきっかけに、
物置状態だった馬小屋をご主人とリノベーション。
2000年に民泊をスタートさせました。
宿の名前でもある〈まやごや〉は馬小屋が訛ったもの。
今年で20周年を迎え、宿泊者は200人を超えます。
当初は看板も出さず特に宣伝もしていなかったそうです。
「数は少ないけど、紹介や口コミで一度来たら濃いつき合いになるリピーターばかり。
何年かうちのお米頼んでくれた人もいたっけ」
と、及川さんは楽しげに語ってくれました。
私のおすすめは朝ごはん。
米の籾殻を燃料のぬか釜ご飯、籾殻などが餌の鶏のたまご、
鶏糞を肥料にした自家栽培野菜といった環境を意識したメニュー内容で、
地域循環プロジェクト〈マイムマイム奥州〉代表も務める
及川さんならではの思いを感じます。
市内でも先駆けとなった民泊〈まやごや〉の今後を尋ねると、
「地元の人も集まれる居酒屋まやごやを始めたい」というアイデアもあるそう。
散居の風景のようにどこか懐かしく気取らない〈まやごや〉で、
サステナブルな暮らしを体感してみませんか。
information
農家民宿 まやごや
住所:岩手県奥州市胆沢若柳荒谷52
TEL:0197-46-2376
料金:時期により異なりますので、電話にてご確認ください。
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小川ちひろ おがわ・ちひろ
東京都品川区出身。大学では移民学を専攻し、言語や異文化に興味を抱く。オーストラリア留学、台湾ワーキングホリデーと海外生活を経験。都内のギャラリーカフェに勤務したのち、2018年5月から岩手県奥州市の地域おこし協力隊に着任。“小さな旅”をテーマにしたプロジェクト〈Walk on Soil〉の台湾向けコーディネートを担当しながら、自身も旅するように東北でしか味わえない経験を堪能中。
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福島県猪苗代町は、全国で4番目の大きさを誇る「猪苗代湖」をはじめ、
日本百名山にも選定されている「磐梯山」など、
豊かな自然に恵まれた福島県随一の観光地です。
そんな猪苗代町に、2019年3月1日、
町内初のゲストハウスがオープンしました。
その名は〈道の旅籠 椿〉。
猪苗代町は昔から観光地として人気があるため、
町内にはたくさんの民宿があります。
しかし、東日本大震災の風評被害により、多くの民宿が大打撃を受け、
いくつかのホテルや民宿は事業停止を余儀なくされました。
そんななか〈道の旅籠 椿〉は誕生。
椿のオーナーである長谷川幸治さんにゲストハウス設立の経緯をおうかがいしました。
長谷川さんは大学入学を期に上京し、現在も東京の会社員として働いています。
しかし、自分がたどってきたように、
地方から都市へ若者が勉強のために移住し、
都市で就職する人が多く、ふとしたときに地元へ視線を戻しても
魅力的な仕事がないということに課題を感じていたようです。
そこで、猪苗代町の土地の魅力に再注目し、
まちの魅力を生かした、優良企業をつくること。
そのためには大きな投資を行うことを決心しました。
実際に椿に宿泊してみると、そんなオーナーの気概がところどころで感じられます。
そのなかでも私がいちばん好きなのが、1500円の日本酒飲み放題のサービスです。
猪苗代町、会津、福島の魅力を伝えたいという
オーナーだからこそのサービスです。
ぜひ皆さんも福島に訪れる際は、宿泊してみてくださいね!
information
道の旅籠 椿
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遠藤孝行 えんどう・たかゆき
福島県の会津に位置する「猪苗代町」で地域おこし協力隊をしています。もともと東京でエンジニアをしていたこともあり、ITのノウハウを活かして「ふるさと納税」と「猪苗代湖の環境保全」を担当しております。現在、協力隊3年目となり、情報発信・教育・観光事業を主とした株式会社アウレを起業しました。
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矢板市北東に位置する山田地区は、
かつて会津中街道の宿場町で賑わいのあった場所ですが、
現在は田園風景が広がる閑静な地域です。
その落ち着いた家並みの一角にある素敵な古民家が、
今回紹介する〈ゲストハウス&ブックカフェWASHINKAN〉です。
オーナーの加藤弥生さんはご両親のセカンドハウスの古民家には
幼い頃からよく遊びにきていて、やがてご両親より譲り受けてからは
東京から通いながらコツコツとご自身で改装を行い、
矢板の地元の人の助けを借りるうちに
いろんな人との出会いをつなぐ場となるようにと、
ゲストハウスを開業されました。
アートディレクターである加藤さんのすてきなセンスで彩られているゲストハウスは、
モダンでありながらノスタルジックな雰囲気もあり、
訪れる人誰しもが魅せられる空間です。
また昨年夏からオープンしたブックカフェは
書庫であった蔵を改装したもので、
収集された本に囲まれた独特の趣きがあります。
じっくりとハンドドリップで淹れたコーヒーを味わっていると
つい長居したくなってしまいます。
山田地区の史跡を巡るウォーキングマップも用意されていて、
昨年秋にイベントも開催されました。
〈WASHINKAN〉に訪れた際には、
ぜひ山田地区をじっくり歩いて楽しんでくださいね。
information
WASHINKAN
住所:栃木県矢板市山田1080
TEL:0287-47-7314
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進藤菜央子 しんどう・なおこ
お料理すること、食べることが大好きで、そんな豊かさで満たされる暮らしができるまちへの移住を希望し、2019年2月より栃木県矢板市地域おこし協力隊として着任。矢板の食の魅力、古道や史跡が眠る歴史の魅力にハマり、〈矢板リトリート〉という、都会からの観光客を惹きつける新しい観光スタイルを構築中。任期後には、カフェ&ゲストハウス起業も目指している。矢板リトリートFacebook
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秘境の「何もなさ」を満喫したい・自然を堪能したい方におすすめなのが
〈天龍村おきよめの郷・森のコテージ〉です。
オーナーの吉田勇次さんは南信州の大鹿村ご出身。
山形県で40年間のペンション経営を経験したのち、
娘さんを介した縁により天龍村で宿泊施設の運営に携わることになりました。
最近は「星を見たい」という理由で
このコテージを選ぶお客さんが増えていることから、
予約電話越しに月暦カレンダーをチェックしつつ、
星がよく見えそうな日を提案しているとのこと。
「大学生の若いお客さまも多く、彼らを見ていると
『ものを使って遊ぶ・珍しいものができたから見に行こう、遊びに行こう』という時代から、
自然に親しむ傾向へと一周まわって戻ってきたような気がする」
と、語ってくれました。
誰でもふらっと来てお茶を飲んだり世間話をしたりできるように、
お客さまがいないときでも可能な限り宿を開けることを心がけているそうです。
宿のこと、日々のことなど、定期的な情報発信を行いつつ、
世間の動きや新しい流れを取り入れるためのアンテナも張るように意識しています。
「若い人に教わりながらだけどね」と笑いつつ、
各種電子機器やSNSも使いこなしながら日々、
より良い場所づくりを目指して奮闘中の吉田さん。
宿を一緒に手伝ってくれる心強いパートナーも絶賛募集中です!
information
天龍村おきよめの郷・森のコテージ
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本多紗智 ほんだ・さち
信州最南端、県内で一番早く桜の咲く村「天龍村」で地域おこし協力隊をしています。ないものづくしといわれる「ド」田舎ではありますが、ちょっと視点を変えてみれば、ここにはまだ「かろうじて残っているもの」がたくさんあります。秘境と呼ばれるこの村から、鮮やかな四季のうつろい、なにげない暮らしの風景をお届けできたらと思っています。
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「田んぼ、家や庭は人を招き入れる空間。
日常の営みの中にある農だから
名前なんてなくていいんじゃない? と、〈名もない農家〉と名づけました」
明るく朗らかな母さんこと
廣田美和子さんは、長野県上田市出身。
小さい頃から野山で遊び、農業を手伝い、東御市に嫁いでからは
さまざまな地域活動に取り組んで感じた想いがあります。
「父さんとふたりで『次世代に残すこと・もの』を考えて、
農薬や化学肥料を使わずに作物を育てています。
そんな農の作業や昔ながらの生活を過ごして、
お越しくださる方が新鮮な発見や気づき、
心が動く一瞬を過ごしていただきたいと思っています」
父さんのご両親が住んでいた家の1階は
地域の人や移住者が集う場所として提供し、2階を民泊として活用しています。
車で2時間かけてくる人や、田んぼのお手伝いに来ている人、
近所の人といった「名もない農家」に集まる人がもたらす輪は広がって、
お客さんではなく、家族として役割を持って居られる空間となっています。
「母さん来たよー」と通いたくなる人が集う場所に、
一度足を運んでみてください。
その気持ちがきっとわかりますよ。
春を迎えこれから田植えの時期。
季節ごとの農のある暮らしを体験しにきてくださいねー!
information
名もない農家
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杉田夕子 すぎた・ゆうこ
東京在住中に信州への移住を考えるなか、縁あってほどよく田舎の長野県東御市へ。2019年7月に地域おこし協力隊に着任。市内の気になる人やモノを取材して発信中。信州の山遊びや雪遊びを楽しみたいです。東御市Facebook(https://ja-jp.facebook.com/tomicity.sns/)
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