連載
posted:2019.12.31 from:全国(北海道・秋田・岩手・福島・栃木・長野・岐阜・石川・広島・岡山) genre:暮らしと移住 / 食・グルメ
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
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Ken Wakai, Yosuke Ohishi, Itsumi Shigehisa, Yo Sakurai, Masayuki Okita, Koban, Naoko Shindo, Ryo Takahashi, Mina Ohba, Aya Okamoto, Sachi Honda
若井 憲/大石陽介/重久 愛/櫻井 陽/沖田政幸/こばん/進藤菜央子/高橋 涼/大場美奈/岡本 文/本多紗智
南北に長く、地域によって異なる気候区分に属する日本。
だからこそ、その風土を生かした、地域ならではの保存食が根づいています。
山の恵みや、海の幸にひと手間加え、長い冬を乗りきるための工夫。
おいしいものを、さらにおいしく食べるアイデア。
その技術や伝統は、今でも私たちの食生活を支えています。
先人の知恵には、頭が下がるばかり!
今回は、全国の皆さんから集まった
ユニークな「保存食」をご紹介します。
世界自然遺産「知床」を有する最果てのまち、羅臼町。
海・川・森の生命のサイクルがもたらす恵の地であるため、
1年を通して豊富な海産物が水揚げされます。
アクセスがよいまちではないからこそ生まれる保存食がいくつもあり、
今回はその中のひとつ「開きダラ」をご紹介します。
タラは、体の8割以上を水分が占めるため、足がはやく、流通には不向きな魚。
ですが、羅臼のおいしいタラを全国へ届けたいという思いから、
加工方法を模索し、流通できるようにしたのが開きダラ。
絶妙な塩加減に調整した塩水に漬け、天日で平干し。
何日もかけて干し、表裏表と繰り返し、じっくり仕上げていきます。
形を整え、重石で押さえ、熟成を重ね、
最後に浜で仕上げ干しを何日も繰り返し、ようやく完成。
2週間以上かけてつくる昔ながらの製法を守り続ける文化が、羅臼には残っています。
開きダラは、噛めば噛むほど口の中に広がる旨みがあり、
料理で使うときには、水で戻して使うことで、
タラ本来の旨みを最大限に生かすことができます。
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大石陽介 おおいし・ようすけ
1988年静岡県焼津市生まれ。大学卒業後、静岡県の小学校教諭として富士山の麓で8年勤務。うち2年間は青年海外協力隊(JICA)としてモンゴルへ。現地の小中高一貫校で先生方へのアドバイス・子どもたちへの指導にあたる。現在は、羅臼町の地域おこし協力隊として、「ソトから見た羅臼」という視点でまちの魅力を発信中。町内のあちこちへ出向き、取材から撮影、編集までをひとりでこなす。
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冬の間、雪に閉ざされることが続く石川県の山間部では、
冬の食料として保存食が発展してきました。
野菜は干したり、漬けたり、さらには雪の下に留めたり。
しかも、ただ保存するだけではなく、
栄養価が増したり、おいしくなったりするのですから、
先人たちの知恵ってすごいなと感心させられます。
ただ、これらは石川に限らず、雪深いところではどこでも見られるものでしょう。
石川の保存食の真髄と言えるのは「発酵食」です。
漬物も含め、さまざまなタイプの発酵食がひとつの県で揃うのは珍しいそうで、
しかも漬けるものは野菜だけでなく、魚だって漬けてしまいます。
その食文化がない地方から移住してきた私は、
スーパーの店頭で糠漬けのサバが売られているのを初めて見たとき、
軽いカルチャーショックを受けました。
そんな石川の発酵食を代表するひとつが「かぶら寿し」。
輪切りにしたカブ(かぶら)に、ブリやサバなどの魚を挟み、
米麹で漬け込み、発酵させたもの。
「寿し」と言っても、実際は漬物に近いです。
まるで淡雪が積もったかのような、米麹の衣をまとった姿が食欲を誘います。
かぶら寿しは気温が低い冬にしかつくることができませんでした。
そのため、お歳暮にしたり、おせち料理に登場したり、
保存食というよりは、冬のご馳走としての存在感が強いものです。
ところで、私が「食欲を誘う」と言った、その独特な見た目が嫌で、
食べず嫌いな人も多いのだとか。
カブのサクッとした食感と、脂がのった魚の旨み、
そこに麹の甘さと酸味が絶妙にマッチして、とっても美味。
出合う機会があったら、食べなきゃ絶対に損です。
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若井 憲 わかい・けん
フリー編集者&ライター。神奈川県生まれ、石川県在住。旅行雑誌の編集者を経て、1999年に家族とともに、Iターンで石川県へ移住。地に足がついた情報発信ができるローカルメディアのおもしろさを知る。編集長を務めていた季刊誌の休刊を機に、2018年からフリーとなり、北陸の魅力を広く伝えることに力を注ぐ。製本家の妻がつくる豆本ではイラスト描きも。Web:豆本工房わかい
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秋田市に移住して初めて出合った「かすべ」。
甘辛く煮詰めたあの味に、生姜を少し添えて、ビールと一緒に……!
そのおいしさが忘れられず、考えただけで唾が出てしまうほどです。
かすべは、秋田市の中でも、ユネスコ無形文化遺産〈曳山まつり〉で有名な
土崎地区という港町を中心に愛されている保存食。
その正体は魚の「エイ」で、干したエイをひと晩水に浸けて戻し、
やわらかくしたところで甘辛く煮詰めるのですが、
手が込んでいるだけあって、おいしい伝統保存食です。
厳しい寒さの続く北国だからこそ、冬を越すうえでの大事なタンパク源だったのですね。
骨までコリコリと食べられて、出汁もきいていて、食欲のない日でもさっと食べられる。
ビールにも、日本酒にも相性抜群。白いご飯のお供にも最高です。
あまりにもおいしいので、郷土料理教室に通い、つくり方を伝授してもらったほど。
各家庭で少しずつ味も違うようなので、秋田市にお越しの際は、
ぜひ土崎に立ち寄って、本場のかすべを召し上がってくださいね!
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
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毎年11月になると、オレンジのカーテンが一関市の家々の軒下を彩ります。
「干し柿」は冬に楽しめる保存食のひとつ。
今年はお邪魔した農家さんからたっぷりと渋柿をいただいたので、
やってみるしかないなぁと思い、
実家の婆ちゃんに教わりながら、干し柿づくりにチャレンジしています。
「今はやる人がいなくなってねぇ。
どこの家でも渋柿が残ってんのよ。
昔は、梅の木と柿の木がそれぞれの家に1本ずつあって、
梅干しも、干し柿も、必ずやったもんだ」
以前、農家さんから聞いた話が印象的で、今年は梅干しも漬けてみました。
梅干しのことを考えて、
暦と天気予報を気にしつつ過ごすのは、ちょっと大変でしたが、
できあがった、しっかり酸っぱい梅干しには、とても愛着が湧きました。
パッとできあがっておいしい料理とは違い、
干しものをつくるのは時間と手間がかかりますが、
その分、楽しみをジワジワと増幅させてくれます。
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櫻井 陽 さくらい・よう
岩手県一関市出身。2016年よりUターンで一関市の地域おこし協力隊に着任し、農業分野の地域団体の活動支援を行う。2017年より一関で楽しく暮らすための20代のまちづくり団体〈TAKU。(たくまる)〉を発足。任期後、地域の企画・プロデュースを業とする〈あぜみちデザイン〉を立ち上げ、まちと人をアシストする企画を実施中。
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広島県の北部には、私が勝手に“日本のトリュフ”と呼んでいるきのこがあります。
本名は「香茸(こうたけ)」。名が体を表しまくっているこのきのこ、
とにかく香りがよくて、噛み締めるほどに味が出てきます。
かつてはよく採れていたそうですが、今では見つけたらラッキー中のラッキー。
ときには松茸よりも高値がつくことも。
香茸探しの名人が山に入ると、「この香り……近くに……ある!」と、
匂いだけで在り処がわかるそう。
香茸が生える“シロ”の場所は極秘。
見つけたら、足跡に落ち葉をかけたり、折れた木の枝を隠したり、
痕跡を残さないようにします。
お裾分けはしても、シロだけは絶対に明かしません。
そんな貴重な香茸は、ハレの日の料理には欠かせません。
甘辛く煮て、ちらし寿司に入れたり、細く切って乾燥させ、塩漬けにしたり。
一見、大きめのヒジキかな? というビジュアルですが、
瓶からあふれ出す豊潤な香りに驚きます。
乾燥した香茸を白いご飯に混ぜ、おむすびにすると最高!
香茸の真骨頂、“香り”を味わうおむすびです。
香茸がご飯の水分で少しふやけ、コリコリとした歯応えになるのです。
乾燥させることで、香りと旨みがギュギュッと凝縮されます。
昔の人の知恵、バンザイ。
塩漬けの塩にも香りが移り、トリュフ塩のように使えます。
香茸の塩漬けも残りあと少し。来年も探すぞー!
シロの目星はついています。もちろん秘密ですが。
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沖田政幸 おきた・まさゆき
広島県広島市出身。2014年から3年間、岡山県美作市上山で棚田再生活動を行うNPOに所属。2017年に広島県安芸高田市地域おこし協力隊として着任し、幼少の頃から大好きだった祖父の家に孫ターン。行政ミッションの傍ら、自宅古民家をDIYリノベーションし民泊スタイルのゲストハウスを運営。「手の届く農ある暮らし」を実現するべく活動中。妻・娘・愛猫の4人暮らし。
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濃い赤紫色の葉野菜「トレビス」は、イタリア料理などで使われる高級食材。
岡山県浅口産のトレビスは品質のよさで知られ、東京へも多く出荷されています。
農家さんの悩みのひとつが、出荷基準に満たないトレビスの地元での消費方法。
レストランではサラダなどで少量使われますが、
独特の苦みから、キャベツのようにモリモリと食べるのは難しいのです。
そこで地元では、保存がきくピクルス(酢漬け)にしてみたり、
ジャムづくりにもチャレンジしています。
「料理の写真はないですか」と聞くと、
「自分でつくりゃーええが」(自分でつくったらいいじゃない)ということで、
私もつくってみました。
まずは、ピクルス。トレビスと大根をらっきょう酢で漬けると、
独特の苦みは酢でまろやかに。数週間もちそうです。
次に、トレビスジャムでドレッシングづくり。
ポン酢とフレンチドレッシングを混ぜて、キャベツ×トレビスのサラダにかけました。
色もきれいで甘酸っぱくておいしい!
農家さんの「もったいない」から始まった、彩りある食事の工夫です。
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こばん
大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。
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栃木県矢板市は、日光市と那須塩原市に挟まれた県北地域で、
昔から穀倉地帯として農業が盛んです。
〈道の駅やいた〉には、地元農家さんの生産物がたくさん売られており、
ときどきおもしろいモノを発見します。
10月頃には「しその実」がパックにパンパンに詰められて販売されていました。
今まで刺身の添え物くらいしか知らなかったのですが、
実を外し、塩水でアクを抜いてから、塩漬けや醬油漬けにしておくと、
ご飯のお供にとてもおいしいんですね!
地元のお味噌屋さんでは、味噌溜まりに漬けたしその実も売られています。
さらにすてきな活用方法を、先日地元農家さんに教わりました。
栃木県には「豆餅」という食べ物があり、
通常は青のりと落花生または大豆が混ぜ込んでありますが、
ここにしその実も入れると、噛むたびに爽やかなしその風味が広がり、とっても美味!
先日餅つきイベントを行った際、お客さまにも食べてもらいましたが、
「すごくおいしい!」と大好評でした。
ひと工夫を重ねて、ひと味違う旨いモノをつくる。
矢板流は奥深いです。
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進藤菜央子 しんどう・なおこ
お料理すること、食べることが大好きで、そんな豊かさで満たされる暮らしができるまちへの移住を希望し、2019年2月より栃木県矢板市地域おこし協力隊として着任。矢板の食の魅力、古道や史跡が眠る歴史の魅力にハマり、〈矢板リトリート〉という、都会からの観光客を惹きつける新しい観光スタイルを構築中。任期後には、カフェ&ゲストハウス起業も目指している。矢板リトリートFacebook
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高原野菜、特に白菜の栽培が盛んな長野県南佐久郡小海町では、
石で組まれた室(むろ・もろ)と呼ばれる保管庫に、野菜や漬物などを貯蔵します。
11月始めに収穫した白菜は、3月頃までこの室の中で貯蔵され、
冬の間の食料になっています。
冬の気温がマイナス15度にもなる、寒さの厳しいこの地域。
白菜が凍らないように新聞紙で包み、さらにその上から毛布をかけて貯蔵します。
昔は親に怒られると「室に入れるぞ!」と言われていたそうです。
電気のない真っ暗で静かな空間は、野菜たちには心地よくても、
子どもにとっては恐ろしいところ。
厳しい寒さのなか、毛布に包まれて大切にされた白菜のおいしさは格別。
白菜と豚肉のミルフィーユ鍋は冬のご馳走です。
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高橋 涼 たかはし・りょう
千葉県出身。新聞社を退社後、2019年6月に長野県南佐久郡小海町へ移住し、地域おこし協力隊として着任。海のそばから海なし県に、標高差900メートルの縦の大移動を果たす。移住促進やデザインに携わる傍ら、八ヶ岳で趣味の登山やクライミングを楽しむ。毎日のように温泉に入り浸り、憧れの移住ライフを満喫中。
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福島県広野町の保存食は、実に多彩。
干し柿はもちろん、リンゴやイチジクといった果物から、
大根や白菜などの野菜まで、各家庭での保存食の種類の多いこと!
海のある広野町では、お魚の保存法の多様さにも驚くばかり。
定番のさんまのみりん干しのほか、イカの塩辛は各家庭で味のこだわりがあるみたい。
今回は近所の方からいただいたさんまのみりん干しと、切り干し大根で夕食。
おいしくいただきました。
デザートは、これまた保存食としていただいたリンゴの甘露煮。
冷凍しておけば一年中楽しめます。
夏はリンゴシャーベット、冬は解凍して紅茶に混ぜてアップルティーに。
保存食を通して見えたのは、このまちの人はみんなマメだということ。
ひとつの食材を余すことなく使い、1年を通して食べられるように加工して。
仕事の合間、農業の合間をみて、隙間時間を有効に活用しての保存食づくり。
一年中おいしい食材を楽しむために手間を惜しまない。すごいなぁ。
そして家庭の味を保存食で受け継いでいく。
おじいちゃんの代からつながる保存食の歴史や味。
これから先もずっと守っていきたい広野町の保存食。
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大場美奈 おおば・みな
1993年生まれ。福島県いわき市出身。医療系専門学校を卒業後、委託職員として広野町入庁。そのときに広野町に恋をして、まちと共に生きることを決意。まちづくりの修業のため、一旦まちを離れて山形県南陽市地域おこし協力隊に着任。2019年4月に広野町起業型地域おこし協力隊に着任。現在は民間がつくるコミュニティースペース〈ちゃのまベース〉を立ち上げ、運営を開始。地域課題を企業というかたちで解決しながら会社設立に向けて奮闘中。
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「にたくもじ」…… ニタクモジ?
初めて聞いたとき、頭に浮かんだのは「二択文字」。
何のことを言っているのだろうと思っていたら、「煮た漬物」のことを言うらしい……。
切り漬け、塩漬け、漬物、かっこ、茎漬けなど、
岐阜県飛騨市では、いわゆる「漬物」にさまざまな呼び名がついています。
その「茎漬け」が由来の「くもじ」。
日が経って酸っぱくなった漬物に火を入れて食べる昔からの方法で、その味つけは人それぞれ。
軽く塩抜きしてから調理することもあるようです。
にたくもじと同じ考えでつくられる「漬物ステーキ」を、
私は移住してくる1年前に、あるおばあちゃんから教えてもらいました。
白菜や人参を加え、溶き卵を混ぜてかつお節をかけ、蓋をして蒸し焼きにすればできあがり。
赤カブの漬物など、色鮮やかなものを加えれば、より華やかに。
塩分を調整すれば、野菜たっぷりのヘルシー料理として
モリモリ食べることができるのがうれしい!
居酒屋では定番メニューとして置かれていて、店によって具や味が違います。
現在は漬物が古くなっていなくてもこのように調理されて、
立派な「ごっつぉ(ごちそう)」になっているのです。
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岡本 文 おかもと・あや
岐阜県飛騨市地域おこし協力隊で薬草を使ったまちづくりを推進中。1984年愛媛県生まれ、千葉・大阪・福岡育ち。2006年に学習院大学文学部仏文学科卒業後、みずほ銀行入社。2012年に花と出合い、フランスやアメリカで生花の装飾について学び、帰国後は都内の生花店に勤務。2018年10月より現職。
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長野県の最南端、愛知県と静岡県の境目に位置する南信州・天龍村。
長野の中でも温暖なエリアで、いち早く梅や桜が開花することから、
「信州に春を告げる村」とも呼ばれています。
この村の保存食といえば、兎にも角にも「漬物」なんです。
どこのお宅にもそれぞれのオリジナルレシピがあって、
地域の集まりではよく漬物の話題が飛び交います。
「ちょっと辛子の粉を入れてみた」「氷砂糖は雑味がなくておいしく漬かる」
「ビールで漬けてみたけど、どうだろう」「昔は柿の皮を甘みづけに使っていた」などなど。
いかにおいしく漬けるかの実験を、日常的に楽しんでいるかのよう。
また、ユズが特産品のひとつにもなっている天龍村。
冬場の漬物には、切ったり絞ったりと余すところなくふんだんにユズが使われます。
皮を甘く煮た「ゆぼし」も、漬物と同じくらい頻繁につくられる一品。
漬物ひとつとってみても、身近にあるものでいかにおいしいものをつくるか、
そんな創意工夫の精神が見え隠れしています。
深い山々に囲まれた典型的な山村かつ、
“秘境”と呼ばれるほど、アクセス・利便性の悪さを誇る村ではありますが、
暮らしのなかにある小さな楽しみを見つける達人が多いことは確かです。
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本多紗智 ほんだ・さち
信州最南端、県内で一番早く桜の咲く村「天龍村」で地域おこし協力隊をしています。ないものづくしといわれる「ド」田舎ではありますが、ちょっと視点を変えてみれば、ここにはまだ「かろうじて残っているもの」がたくさんあります。秘境と呼ばれるこの村から、鮮やかな四季のうつろい、なにげない暮らしの風景をお届けできたらと思っています。
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