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縁側で500個の「干し柿」づくり!
カビを生やさないコツ・ポイントとは?
干し柿チーズ&バターのレシピも

糸島での自給自足の日々を綴った
―田舎暮らし参考書―
vol.071

posted:2024.11.26   from:福岡県糸島市  genre:食・グルメ / ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。

writer profile

CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森

こんにちは。
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

「柿」の季節ですね! 
今年は、柿の当たり年。
大きな柿の枝がしなるほどに、たっぷりと実をつけました。

今年は柿の木の選定も兼ねて枝ごと柿を収穫し、
長期保存が可能な「干し柿」にしました。
つくった干し柿の数は、なんと500個! 

柿の木に登り、枝ごと選定して柿を収穫する人物の写真。

大きく育ちすぎた柿の木。バッサリと選定します。

食べておいしいのはもちろん、
干している間も美しいのが干し柿の魅力。
縁側に並ぶコロリとかわいい姿に、ほっこりと癒されます。

皮をむいて干すだけとはいえ、
カビを生やさず、トロリとやわらかく仕上げるには工夫も必要。
今回は、自家製干し柿づくりのコツをお伝えします。

干し柿を定期的に揉んで軟らかくしている写真。

失敗しない干し柿づくりのコツとは?

干し柿づくりで大事なポイントは、「気温」と「湿度」。
気温が高すぎたり、雨が降って湿度が高くなると
カビ発生のリスクが高まります。
最適な気温は10~15度程度といわれ、
肌寒くなって、空気がカラリとしてきた11〜12月辺りが
干し柿づくりの季節です。

2週間から1か月ほど乾燥させることで
柿がゆっくりと熟成・乾燥し、甘みが増すといわれています。

風通しのいい場所に吊るし、
しっかりと乾燥させるようにしましょう。

収穫したばかりの柿を手にしている写真。

干し柿の原料は「渋柿」じゃないとダメ?

一般的に干し柿は「渋柿」でつくられますが、
「甘柿」でもおいしい干し柿はつくれます。

じつは我が家の柿の木は、甘柿と渋柿を接ぎ木したもので、
食べてみるまで、どちらかわかりません。(笑)
これまでも、特に区別したりせず、すべて干し柿にしていますが、
問題なくおいしくいただけています。

ただ、私の感覚としては
甘柿のほうがカビが生えやすい気もしています。

次のページ
干し柿づくりのポイント・コツとは?

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さっそくつくってみよう! 干し柿のつくり方

「How to make Hoshigaki」と書いてある画像

<準備するもの>

・干し柿

・ピーラー(または包丁)

・まな板

・ハサミ

・紐

・鍋

・スプレーボトル

・焼酎、またはホワイトリカー

1:皮を剥く、2:沸騰したお湯に5秒つける、3:吊るして干す、と書かれたイラスト画像。

(1)柿のヘタを取り、皮を剥く

包丁で剥くのが苦手という方は、ピーラーを使ってもOK! 
また、皮を剥く際、柿の枝を折らないように注意。
干すときに結ぶ場所がなくなってしまいます。

ちなみに、柿の実にある黒点はカビではなく、
柿に含まれるポリフェノールの一種「タンニン」が変化したものなので
食べても問題ありません。

大きな鍋、ザル、籠を前に柿の皮を剥いている数人の人物の写真。

シェアメイトみんなで柿仕事。

(2)柿を沸騰したお湯に5秒程入れて引き上げる

ここがポイント! 
表面を熱湯消毒することでカビを防ぎます。
熱湯消毒の作業を省いて、
スプレーボトルに焼酎やホワイトリカーを入れて
吹きかけて消毒するのでもOK。

(3)柿の枝に紐を結ぶ

15センチほど間隔を空けて吊るします。
近すぎるとぶつかった所にカビが生えてしまいます。

(4)日当たりがよく、風通しのよい所に干す

雨にあたるとカビが生えてしまうので、
お天気のいい日は外に出し、雨の日は室内に入れるのがベター。
ずっと室内で吊るす場合は、扇風機の風を当てるといいかもしれません。

(5)様子を見ながら、スプレーボトルに入れた焼酎を吹きかけて消毒

カビの発生を防ぎます。
これはとても大事!

干している柿にアルコールを吹きかけて消毒している男性の写真。

定期的にアルコール消毒。このときは焼酎やホワイトリカーが見つからず、ウイスキーを使ったので、縁側がとてもいい香りになりました。

(6)1週間ほど経ったら定期的に柿の実を揉む

揉むことで渋が抜けて柿が甘くなります。
強く揉みすぎると破れて中身が出てきてしまうので、
やさしく行うのがポイント。

(7)3週間後くらいから食べられます

カチカチに干し上げて濃厚な甘さを楽しむのもよし、
味見と称してトロリとレアな柿を楽しんでもよし。
自分好みの干し柿をつくってみてください。

柿を干している縁側の写真。太陽光が差し込み、縁側に干し柿の影がうつっている。

お料理に、お菓子づくりに。お砂糖を使わない自然の甘味料として重宝しています。

次のページ
完成した干し柿の保存方法とは?

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干し柿の保存方法

1か月以上カチカチに干したものなら、常温保存が可能です。
紙袋やキッチンペーパーなどに包んで通気性をもたせ、
日陰で風通しのよい所に保存しましょう。

半生の状態でキープしたい場合は、ひとつずつラップで包み、
保存用袋などに入れて冷蔵保存・冷凍保存してください。
冷蔵庫で1か月くらい、冷凍で3〜4か月くらいはおいしく食べられます。

カビが生えちゃったら……?

干し柿の表面にできる白い粉は
糖分が結晶化した「柿霜(しそう)」と呼ばれるものなので、
食べても問題ありません。
ただ、青や緑色の場合はカビなので、食べないようにしてください。

カビの部分だけ削って食べることは可能ですが、
カビが大きい場合は、中まで食い込んでいる可能性があります。
お腹が弱い方は食べるのを止めたほうがいいかもしれません。
(まれに白いカビが発生することもあるので、ご注意ください)

干している最中にカビが生えてしまったら、
35度以上の焼酎を染み込ませたキッチンペーパーなどで
干し柿をよく拭いて殺菌してみてください。

青カビがびっしり生えている干し柿の写真。

青カビの生えてしまった干し柿。アルコールなどで落とせる範囲であれば食べてしまいますが、これくらいカビが生えるとさすがに食べられないので、処分しました。

次のページ
干し柿をおいしく食べる4つのレシピ

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おつまみに、デザートに! いろいろ楽しめる干し柿レシピ

干し柿というと
「おばあちゃんのおやつ」的な印象があるかもしれませんが、
ちょっと工夫するだけで、お店のメニューにあるような
おしゃれな一品に仕上がります! 
今回は、簡単につくれる、個人的お気に入りレシピをご紹介します。

お皿に盛られた干し柿チーズの写真。

干し柿とチーズの相性は抜群! お好みのチーズを合わせてみて。

干し柿チーズ

完成した干し柿をカットし、チーズを挟むだけ。
簡単にワインに合う絶品おつまみに変身! 
リッチ感を高めるコツは、ちょっといいチーズを使うこと。
食べやすさではクリームチーズが一番ですが、
お酒に合わせるならカマンベールチーズ、
個人的おすすめはブルーチーズです。
ここに生ハムを加えるとさらに高級感アップ! 

干し柿のフリット

干し柿に衣をつけて、170度の油で揚げるだけ。
干し柿にチーズを合わせて天ぷらにしてもおいしい! 
サクッとした衣と、もっちりの干し柿がたまらない一品。
1日のご褒美に。

干し柿バター

細かく刻んだ干し柿とバターを混ぜてお皿に盛ってある、干し柿バターの写真。

濃厚で背徳感のあるおいしさ、干し柿バター。ラップでソーセージのように包んで形成してもよし、バターと干し柿を混ぜてそのまま食べてもOK!

ひと手間かけて、干し柿バターにするのもおすすめ! 
バター100グラムに対して、干し柿半分程度あれば十分です。
量はお好みで調節してみてください。

(1)干し柿をラム酒(またはブランデー)に数日漬け込む

(2)(1)を小さく刻み、常温でやわらかくしたバターと混ぜて棒状に伸ばし、ラップで包む

(3)冷蔵庫で寝かせる

(4)適度な大きさにカットして、クラッカーなどにのせて食べると美味! 

干し柿ヨーグルト

カッチカチになった干し柿をヨーグルトにひと晩ほど漬けます。
翌日、干し柿がヨーグルトの水分をたっぷりと吸って、
新食感の干し柿ヨーグルトが完成。
程よい酸味と、干し柿の甘さが絶妙にマッチして、
あとを引くおいしさです。

「KAKI」はヨーロッパでも愛されている?

皮を剥いたばかりの柿を手に持っている写真。

和風なイメージの干し柿ですが、
意外にも洋風の素材と相性がいいのです。

気になって調べてみると、
世界の柿の生産量は1位が中国、2位がまさかのスペイン! 
日本は5位ということでした。
(2021年、国際統計サイトグローバルノート調べ)

ヨーロッパでも普通に食べられているという驚きの結果でしたが、
洋風の素材がマッチするのも、なんだか納得してしまったのでした。

ちなみに、ドイツでも柿を「KAKI」と呼ぶのだとか。
以前、我が家に来たドイツ人のゲストが教えてくれました。

みなさん、気になるレシピはありましたか? 
この秋は、いつもとひと味違う干し柿を楽しんでもらえたらうれしいです! 

また、以前にご紹介した
「熟れすぎた柿」をおいしく食べる、とっておきのレシピ5選
もチェックしてみてくださいね。

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