連載
posted:2018.11.1 from:北海道帯広市 genre:旅行 / 食・グルメ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
「和酒を楽しもうプロジェクト」もいよいよ6年目へ。
今回から舞台をイエノミからソトノミに移し、
“酒場推薦人”の方々が、日本各地の魅力的な「ローカル酒場」をご紹介します。
writer profile
Yayoi Okazaki
岡崎弥生
おかざき・やよい●兵庫県、大阪府、神奈川県、福岡県、東京都(ちょっとだけ愛知県)と移り住み、現在は神奈川県藤沢市在住のローカルライター。最近めっきりイエノミ派となった夫のために、おつまみ作りに励む主婦でもある。
credit
撮影:澤田希望
きょうは北海道十勝地方の中心都市、帯広市へ。
十勝地方は、北海道を代表する大規模農業&酪農・畜産地帯。
広さは岐阜県とほぼ同じで、“十勝”としての一体感が昔から強く、
いまは“フードバレーとかち”として帯広市から魅力を発信しています。
十勝特産といえばじゃがいも、小麦、小豆、生乳、乳製品、黒毛和牛など。
地域ブランドとしては抜群の知名度を誇り、食料自給率も1200%を超えるそうです。
今回の案内人は、帯広市のお隣、音更町出身。
現在は都内でPR業を営む村上晴香さんによると、
帯広など十勝の人たちは屋外での焼肉「外焼肉(そとやきにく)」が大好きで、
初夏になるとスーパーにも「外焼肉コーナー」が登場。
晴香さんの家でも網と炭火を用意して、
毎週末のように自宅前で外焼肉を楽しんでいたそうです。
「焼けるものならなんでも網に乗せてみんなで食べる。
ただそれだけですが、野菜も地元の新鮮なものばかり。
真夏でも湿気がないので屋外で過ごすのが本当に快適です。
梅雨がない北海道ならどこでも見かける光景でも、
この外焼肉という言い方は帯広・十勝界隈だけ。
札幌のジンパ(ジンギスカンパーティ)や
東京のBBQのようなオシャレ感がないところが、
焼肉好きな人が多い十勝らしい言葉だとも思います」
外焼肉の主役は味付けマトンの薄切り肉、ジンギスカン。
これを帽子型のジンギスカン鍋ではなく、網でそのまま焼くのが村上家での食べ方です。
この焼肉スタイルのジンギスカンを、
北海道で最初に始めたと言われるのが帯広に本店がある〈平和園〉。
晴香さんの“帰省時に行きたい店リスト”で
不動のトップバッターが、きょうのローカル酒場です。
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平和園は昭和34年の創業で、
駅前の本店など帯広近郊に6店舗、札幌市内に3店舗を構える、
地元で知らない人はいないという人気焼肉店。
晴香さんは帯広で働く妹・智香さんとの、
久しぶりの平和園での食事をとても楽しみにしていました。
ふたりが待ち合わせをしている緑ヶ丘店も、
110席の広い店内が近所の家族連れでほぼ満席のよう。
繁華街から離れた住宅地なのに、とても平日とは思えない賑わいです。
店内に入ると、応接間のような重厚なロビーにはレンガの暖炉があり、
女性スタッフはヨーロッパの民族衣装風のユニフォーム。
ふたりが案内された掘りごたつの個室は和テイスト。
まるで昭和レトロな別荘かロッジに招かれたような気分です。
「この不思議な和洋ミックスが平和園に来たという感じです。
1軒ずつ雰囲気がそれぞれに違っていて、釣り堀が併設された店舗もあるくらい。
我が家の最寄りの士幌(しほろ)店だともっとファミリー向けのつくりかも。
滑り台がある子ども用の広いプレイルームがあったので、
平和園に行くと親に言われたらうれしかったですね」(晴香さん)
「それで大人になると繁華街にある店舗に飲みに行くように。
飲んで食べても安いんだなと、自分で払うようになって気づきました。
お姉ちゃんも帰省すると真っ先に平和園をリクエストするよね」(智香さん)
「平和園での写真をSNSに投稿する地元の友人が多いので、
それを見ては東京で羨ましがっています(笑)」(晴香さん)
きょうもいつもの感じでいいよねと、
智香さんはジンギスカン定食をふたり分迷わず頼みますが、
最初から白いご飯と一緒に肉を食べるのがふたり共通の焼肉スタイル。
ご飯にはやはりお米から出来たお酒がよく合うということで、
まずは晴香さんがお気に入りのスパークリング清酒で乾杯です。
このジンギスカン定食は1人前560円(税込み)。
これに食べたいものを順次追加していくのが村上家のスタイル。
家族4人で月に2度は平和園に通っていた頃からです。
「この560円は価値がありますね。ランチならこれだけでも十分満足できるし、
友人と飲むときもこの定食から始めればコスパがいい。
周囲でもこの頼み方をする人は多いですよ」(智香さん)
「ウチの母はあまり肉が得意じゃないのに、なぜか平和園のジンギスカンだけは大好物。
母方の祖父母が山形から遊びに来たときも、初めて食べたのにすごく気に入ってくれて、
平和園に毎日行きたいと言われてびっくりしました」(晴香さん)
そこに噂のジンギスカン定食が登場。
さっそく焼き始めると香ばしい匂いが漂い始めました。
次々と焼いては食べ、飲みながら話す。
スパークリング清酒をおかわりしながら、
帯広の最新事情や東京の話題、恋愛話まで、ふたりの女子トークが盛り上がります。
「そういえば、私が上京して驚いたのは、
臭いから羊肉はちょっと苦手だと言う人がいること。
私たちはジンギスカンが臭いなんて感じたことないよね」(晴香さん)
「うん、小さい頃は羊肉だって知らなかったけど、
やわらかくて食べやすいお肉で大好きだった。
帯広だとむしろ牛肉よりも羊肉が好きな人のほうが多いかもしれないね。
外でも店でも焼肉といえばジンギスカンだもの。
苦手な人こそ平和園で一度食べてみてほしいよね」(智香さん)
ふたりは相談して追加で上カルビとカルビクッパを頼みます。
これはどちらもお父さんの大好物。
智香さんが帯広に戻ってきてからは、家族3人か母娘という組み合わせで、
ゆっくり平和園で飲む機会が増えたそうです。
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村上姉妹の楽しそうな会話が続いているので、
ジンギスカンのおいしさと人気の秘密を探るべく、
平和園本社の方にも話をうかがってみました。
タレはオーダーが入るたびに調味料をブレンド。
それを1人前ずつ手揉みしてすぐに提供する
「一丁付け」という手法を創業以来続けています。
これは肉からうまみがドリップで抜けてしまうのを防ぐため。
また肉は切り方を間違うとかたくなってしまうので、
繊維の入り方を確認しながら1枚1枚を手切りして、
余計な脂や筋も手作業で取り除きます。
そして羊肉は最上級のマトンをニュージーランドから。
一頭買いなので安く提供できるそうです。
お話をしてくれた社員の方にも、平和園愛が感じられました。
帯広地区部長の金本昌勇さんも物心ついたときからの平和園ファン。
海外で長年料理人として働いてから帰国後に入社。
いまは自宅にダクト付きの焼肉ルームをつくり、冬でも“外焼肉気分”を実践中。
仲間を平和園仕込みのおいしさでもてなしているそうです。
また、十勝地方でも太平洋岸の港町出身の広報、桜庭俊幸さんは、
高校生のときに帯広の親戚にご馳走してもらい、
初めて味わった平和園のおいしさと驚きが入社の決め手となりました。
「それがここ緑ヶ丘店です。当時から雰囲気は変わりませんね」
地元の人に長く愛されている店には、親子でつないでいくおいしい記憶がある。
それを平和園で見たような気がしました。
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気の合う人とゆっくりおしゃべりしたいときは、
スパークリング清酒〈澪〉を乾杯からどうぞ。
お米と米麹由来の自然な甘さと、ほどよい酸味で、
どんなお料理にも合わせやすいはずです。
またアルコール度数5度と一般的な日本酒と比較して低め。
ほんのり心地よく酔えるので会話も楽しく盛り上がります。
村上晴香さんは〈澪〉を初めて飲んだときからのファンで、
きょうは妹が酔いすぎないようにとの姉心もあって〈澪〉をセレクト。
マスカットを思わせる爽やかな後味は、
平和園のジンギスカンにもぴったりでした。
information
平和園 緑ヶ丘店
住所:北海道帯広市西9条南17丁目
TEL:0155-25-2999
営業時間:11:00〜22:00
定休日:火曜日(祝日の場合は営業)
アクセス:JR帯広駅南口から徒歩約15分
十勝地区6店舗以外に札幌地区に3店舗あり
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