連載
posted:2016.6.2 from:青森県十和田市 genre:食・グルメ
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〈 この連載・企画は… 〉
その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?
writer profile
Miki Hayashi
林みき
はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手がけた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。
photographer profile
Tada
ただ
写真家。池田晶紀が主宰する写真事務所〈ゆかい〉に所属。神奈川県横須賀市出身。典型的な郊外居住者として、基地のまちの潮風を浴びてすこやかに育つ。最近は自宅にサウナをつくるべく、DIYに奮闘中。いて座のA型。
http://yukaistudio.com/
credit
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47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
青森でコロカルが向かったのは、馬と現代アートとご当地グルメにわく十和田市。
生産量日本一を誇るニンニク、生でも食べられるほど身がやわらかいごぼう、
そして長いもに長ねぎと、野菜の産地として知られる青森県十和田市。
でも十和田の魅力は野菜だけではないのです。
この地では江戸時代末期から大規模な開拓が行われた後、
明治時代に入ると馬産が盛んに。
軍馬として高値で買い上げられる良馬を輩出する、
全国屈指の馬産地へと発展していきました。
そんな十和田の歴史を感じられるのが市内にある〈官庁街通り〉。
156本ものヨシノザクラが植えられたこの通りは桜の名所としても有名ですが、
別名である〈駒街道〉の名のとおり、まちの発展に貢献した馬がモチーフの
彫刻作品やモニュメントが、あちこちに設置されています。
この官庁街通りで馬に負けないくらいに通りのあちこちで存在感を放っているのが、
数々の現代アート作品。実はこれ、2002年にスタートした
まちづくりプロジェクト〈アーツ・トワダ〉の一環。
官庁街通りには「都市とアートの共生」をテーマに、アーティストがオリジナルで
制作した作品が展示されている〈十和田市現代美術館〉があります。
美術館だけで完結させず、官庁街通りそのものをひとつの美術館に見立て、
まちづくりをしようとプロジェクトが展開されているのでした。
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まち歩きで知的好奇心をすっかり満たしたら、
今度は歩いてペコペコになったお腹を満たす番。
実はここ十和田には、現代アートと同じくらいかそれ以上に、
まちおこしに一役買っているご当地グルメがあるのです。
そのご当地グルメとは、牛バラ肉とたっぷりの玉ねぎを鉄板で炒め、
醤油ベースの甘辛いタレで味つけした〈十和田バラ焼き〉。
この料理をツールにまちおこし活動をしている〈十和田バラ焼きゼミナール〉の方々が、
コロカルのために腕をふるってくれるということに。
「ボンジュール!」とタキシード姿で現れたのは
「十和田バラ焼きで、バラ色の人生を」を合い言葉に活動する
十和田バラ焼きゼミナールの校長ならぬ“舌校長(ぜっこうちょう)”の畑中宏之さん。
いまや全国的にも高い知名度を誇る、“バラゼミ”の中核的存在ともいえる人物です。
バラ焼きは昭和30年(1950年)頃に誕生したといわれる料理。
「その頃、三沢空港の拡張工事が大々的に行われていて。
人口が3倍になるくらい、全国からたくさんの働き手が三沢に集まったんです。
そんな彼らの胃袋を満たすために誕生したのがバラ焼きだったんです」と畑中さん。
当時は牛肉は高価だったため、牛肉を食べるのは
まだあまり一般的ではありませんでした。
しかし十和田市の隣に位置する三沢市では、
米軍基地から牛のバラ肉が払い下げられていたのです。
そんななか、仕事を求めて朝鮮半島からやって来ていた人々が、
プルコギのように牛バラ肉を甘辛いタレで味つけすることを思いつき、
バラ焼きが誕生したのだそう。
「三沢では、焼き肉屋やバラ焼きを出すお店がすごく栄えていたんですよ。
そんななか、三沢で大火事が起き、住んでいた人やお店を開いていた人たちが
十和田に避難してきた。それがきっかけとなり、
十和田でバラ焼きの食文化が広がっていったんです」と畑中さん。
「十和田は畜産のまちなので、肉を食べる食文化がもともとあった。
そんなこともあり、バラ焼きの食文化が根づいたんでしょうね」
こうした事柄を背景にバラ焼きは十和田で広まり、
家庭でもつくられるほどメジャーな存在に。
家庭ごとに味つけも少しずつ違っていて、その家ならではの味わいがあるのだそう。
現在では市内の80店舗以上で提供され、
大手調味料メーカーからも専用のタレが発売されている十和田バラ焼き。
そのお味はというと、もう食欲どころか本能を刺激するようなおいしさ。
タマネギの深みのある甘みが肉と絡み合い、
ひと口食べたら箸が止まらなくなってしまうほど。
また十和田バラ焼きは、ご飯との相性も抜群。
「お酒のつまみにもいいし、おかずにもなる。
お母さんたちにしてみれば、ありがたい料理なんですよ。
お酒を飲むときには、一味をかけたり豆腐を入れたりもしてますね」と畑中さん。
そんな十和田バラ焼き、ビールと合わないワケがありません。
「炭酸は口の中の油をサッと流してくれるから、
十和田バラ焼きとビールは合うんですよ」と畑中さん。
「バラ焼きが誕生したての頃は、時代的にも自分たちの家でつくった
どぶろくと合わせていたんじゃないかな?
でも、どぶろくも微発泡のお酒だから絶対に相性がよかったはず。
バラ焼きの材料であるバラ肉も玉ねぎも決して高価なものじゃないけど、
そこには本当の意味での贅沢さがあったでしょうね」
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専用のタレさえあれば、どこでもつくれる十和田バラ焼きですが、
まちの魅力を感じたうえで味わうおいしさは格別。
バラゼミの活躍によって、たくさんの人にとって訪れてみたいまちとなった十和田。
バラゼミとしての今後の目標を畑中さんに尋ねてみました。
「活動当初から3つのステージを僕たちは設定していたんです。
十和田を“食べてみたいまち”にする第1ステージは〈十和田バラ焼き〉のブランド化、
“訪れてみたいまち”を目指す第2ステージは
日本最大級のまちおこしイベントの開催で達成できました。
いまは第3ステージである“住んでみたいまち”にすることを目指しています。
いままでどおり十和田バラ焼きを介したまちおこしをしながら、
食文化だけにこだわらずいろいろな角度から魅力を発信して
『十和田っていいね』と思ってくれる人たちをたくさん呼びたいと考えています」
「時代を動かすとき、昔は武力があればよかった。
でも時代とともに武力から経済力、経済力から魅力へと変わっていった。
そしてこの魅力こそ、これからの地方創世を促していくんじゃないかって
僕らは捉えているんですよ。魅力のないところには、人もモノも集まらないですから」
行政主導でない、民間主導だからこそ持てる自由さを生かし、
まちおこしの活動を続けているバラゼミ。
「いまは来年に向けて、十和田の魅力を満喫できる旅行商品を計画しているんですよ」
とも話していた畑中さん。バラゼミは私たちがまだまだ知らない
十和田の魅力を、ますます楽しいかたちで伝えてくれそうです。
※一番搾り 青森づくりは、青森の誇りを込めてつくった、青森だけの味わいです。
問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
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