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鎌倉〈Bar Sharuman〉
インスタライブも人気の
裏鎌倉にある上品でクリアなバー

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.009

posted:2023.3.16   from:神奈川県鎌倉市  genre:旅行 / 食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
神奈川県鎌倉市。

〈TANNOY〉+〈McIntosh〉の黄金コンビによる金粉のような音

コロンボ(以下コロ): いざ、鎌倉へ! いい店、見つけちゃった!

カルロス(以下カル): 鎌倉って、茅ヶ崎に比べると、
なぜか音楽のイメージは薄いよね。好きな人はたくさんいるはずなのに。
まあ、茅ヶ崎は加山雄三さんからサザンと大物ミュージシャンが多いから仕方ないか。

コロ: でも、いいお店が多いんだよ。

カル: 鎌倉だけにクラシックな店が多いのかな。
ここ〈Bar Sharuman〉はそもそも小町通りにあったんでしょう。
元々は本格的なクラブ(おねえさんのいるほう)だったのを、
息子の柴田譲治さんが受け継いでから、カラオケセットなんかをとっぱらって、
レコードバーにしたんだってね。

コロ: その通り! で、5年前にここ、由比ヶ浜大通りに移転したんだ。
マスターの柴田さん曰く、由比ヶ浜大通りは原宿でいえば裏原。
元気でフレッシュな店が多い。

カル: 言ってみれば裏鎌倉ってとこ? どうりでモダン。

コロ: 常連が多くて入りにくいって感じがないんだよ。
パブリックっていうか。

カル: しかもレコードバーとしては珍しく、禁煙なんでしょう。
そうしたら、店内はもちろんレコードもスピーカーの幕もタバコ臭くないんだ。
新しいカタチ。
モダンでクリアな環境はこれからのレコードバーには大切だよね。

コロ: 音もお店もマスターも柔らかくてクリアなんだよ。上品だし。
入ったときはharuka nakamura
『Nujabes Pray Reflections』がかかっていたんだけど、
金粉のような音が、降りてくるようだった。

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オーディオを決めるまでにかけた時間は?

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カル: そりゃ、たまらないね。
スピーカーは〈TANNOY〉なんだよね。オーセンティックな英国の名機。
そもそもクラシックレコードをいかに豊かに聴くかを追求したスピーカーだよね。

コロ: このセットに決めるまで2年間オーディオショップに通って、
いろいろな機材を聴きまくったんだって。

カル: 吟味に吟味を重ねたってわけだ。
高い買い物だから、簡単に買い替えとかできないもんね。
2年間通い詰めたマスターの
音のガイドラインともいえる視聴用のアルバムとか知りたいな。

コロ: キャロル・キングの『つづれおり』でしょ、
ジョージ・ベンソンの『ブリージン』。
ジャズ系だとビル・エヴァンスの『Waltz for Debby』、
流行りのところだとロバート・グラスパーの『COVERED』。
あっ、それとノラ・ジョーンズの『Come Away With Me』。

カル: 2002年リリースで、
出るやいなや21世紀を代表する名盤となったあれですか。

コロ: とにかくアルバムの出来もさることながら、録音がいいって評判だよね。
ちなみに日々のサウンドチェック用のアルバムは
アース・ウィンド&ファイアーの『Open Our Eyes(太陽の化身)』。
粒立ちがきれいで、低音から高音まで幅広いのでチェックにはもってこいだとか。

カル: で、長きにわたる呻吟の末、
決めたのが〈TANNOY〉と〈McIntosh〉の黄金のコンビなんだね。
〈JBL〉や〈ALTEC〉など、ヴィンテージ以外も候補に上がったんでしょう?

コロ: 聴いているうちにヴィンテージってことになったみたい。
〈ALTEC〉はボリュームを上げないと抜けが悪くて、
でもボリュームを上げるとお店に8時間くらいいる柴田さんとしては、
耳が疲れるし、お客さん同士も会話しづらいみたい。

カル: お客さんはどんな感じなの? 地元の人が多いのかな。

コロ: 地元のお客さんとビジターの比率は大体半々だって。
ステイホームの頃にインスタライブとかをやっていたので、
ビジターが多いのはその影響もあるようだよ。

お客さんの会話からさり気なく選曲。レコードバーにいてうれしい瞬間のひとつ。

お客さんの会話からさり気なく選曲。レコードバーにいてうれしい瞬間のひとつ。

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お客さんの話から曲をかけてみると……

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カル: それだけ幅広いと選曲も頭を抱えるね。

コロ: 年配の人はある程度、想像がつくみたいだけど、
若い子は好みが自由過ぎてびっくりだってさ。
この間来た、20代の女の子はスティーリー・ダンにぞっこん。
子供の頃、お父さんのクルマでよく聴いていたんだとか。

カル: 20代の女の子がスティーリー・ダン! 一周まわっちゃった感があるね。
雰囲気をみてかけるのも、そりゃ大変だ。

コロ: お客さんの会話を小耳に挟みながら、うまいタイミングでかけても、
成功率は70パーセントぐらいで、あとの30パーセントはまるっきりハズレるってさ。

カル: 話していた話題に関わる曲がかかると、ほんとうれしいんだよね。
それもレコードバーの醍醐味のひとつだな。
ピークはどんな時間帯なの? 鎌倉とはいえ、東京みたいに深くないんでしょ。

コロ: だいたい19時から21時。
コロナ禍の影響で、新橋で飲んで鎌倉でもう一軒って人が少なくなっちゃったんで、
夜はかなり浅くなったようだよ。

カル: これもクリーンの一環。新しいカタチだよ。

コロ: 端正に設えたレコードラックに空きのスペースがまだあったけど、
あっという間に一杯になっちゃうんだろうな。

カル: タバコの煙に燻されることもないから、
レコードはずっときれいなままなんだろうね。

information

map

Bar Sharuman 

住所:神奈川県鎌倉市由比ヶ浜1-3-5-1 2F

TEL:0467-23-1010

営業時間:17:00~23:00(L.O.22:30)

定休日:水、木曜

Instagram:@barsharuman_kamakura

 

SOUND SYSTEM

Speaker:TANNOY GRF

PowerAmplifer:McIntosh MC275

Pre Amplifer:McIntosh C28

Turn Table:Technics SL-1200 MK2

CD Player:DENON DCD-F102

Cassette Tape Deck:Pioneer CT-8

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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