連載
posted:2023.4.14 from:神奈川県小田原市 genre:エンタメ・お楽しみ
〈 この連載・企画は… 〉
ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。
writer profile
Akihiro Furuya
古谷昭弘
フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。
credit
photographer:深水敬介
illustrator:横山寛多
音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
神奈川県小田原市。
コロンボ(以下コロ): ブラジル音楽はどうなの? 守備範囲?
カルロス(以下カル): ボサノバはなんだかくすぐったい(笑)。
ジャヴァンが好きだね。
ベタだけど『LUZ』というアルバムの1曲目、
スティービー・ワンダーが参加した「Samurai」が最高だな。
コロ: スティービー・ワンダーのハーモニカがいいよね。
ハーモニカだけのアルバムとか出してくれないかなと切望。
「Samurai」は今でも気の効いたお店でかかってる。
この間も青山の〈BAROOM〉でかかっていたっけ。
カル: ボク的にはブラジルと聞いて思い浮かぶのはダ・ラータだけど、
よく考えるとブラジリアンをやっているUKユニットだし。
正直言って、ブラジル音楽自体はあまり詳しくないかな。
ほかのジャンルにいち要素として、よく取り入れられているって印象。
コロ: いち要素ねー、たしかに。
ボクの場合はなんたって『ゲッツ/ジルベルト』だからな。
カル: ボサノバのセルジオ・メンデスが
ヒップボップにアプローチしていたりとか、
ブラジルものはそんな関わりのなかで聴いているね。
コロ: ボクはジャズ文脈になっちゃうんだ。
村上春樹さんが書いた「チャーリー・バーカー・プレイズ・ボサノヴァ」、
真っ白いジャケットの彼の架空のアルバム聴いてみたいな。
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カル: ところで、小田原にブラジリアンを聴かせるイカしたカフェがあるんだってね。
コロ: そうそう〈ももすけ〉っていうんだ。
古い薬局をリノベした広々として洗練されたカフェ。
カル: ブラジルの人が集まるの?
コロ: いやマスターの松岡康史さんは元広告代理店マンで、移住組。
小田原から東京に通っていたそう。6年前、退職して〈ももすけ〉を始めたそうだよ。
カル: 渋谷のブラジリアンバー〈Bar Blen blen blen〉の常連だったんでしょ。
そしたらサンバ的な感じ? それともジャズ文脈?
コロ: マスター曰くデヴィッド・バーン文脈だって。
プラス、ちらっとアート・リンゼイ。
カル: デヴィッド・バーンといえば
ブラジル音楽の名コンピレーション・シリーズがあるよね。
コロ: そうそう。彼が監修した『Brazil Classics 1:Beleza Tropical』は
お店のヘヴィローテーションだってさ。
いわゆる、コンサバなサンバより、ヒップホップな感じだったり、
ブラジルのポップス、パゴージとかの新譜が好きみたい。
カル: だから神楽坂の〈大洋レコード〉がショップ in ショップであるんだ。
コロ: 大洋レコード in 小田原。店主の伊藤さんが友人なんだって。
ターンテーブルはあるものの、基本、音源はCD。
CDでも広々とした空間に整然と並ぶとなかなかなもんでしょ。
レコードは死ぬほどあったんだけど、
90年代のCD移行期に、処分しちゃったんだって。
カル: めちゃくちゃ後悔してるのかな。
コロ: 後悔してるって(笑)。でもいいレコード屋さんが引き取ってくれたから、
二束三文ってことはなかったようだよ。
いまある数十枚はそのなかでも選りすぐりのレコードってことになる。
カル: たしかにCDはコンパクトな分、
レコードバーにありがちな“これでもか感”がないね。よりカフェらしいというか。
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コロ: ブラジルといえばコーヒーだけど、
これまた小田原の〈スズアコーヒー〉とコラボしたミュージックブレンドがあるんだ。
ミルトン・ブレンド、カエターノ・ブレンド、エルメート・ブレンドって、
ブラジルの名匠たちにちなんだネーミングで。
カル: そしたらボクはカエターノ・ブレンドがいいかな。
コロ: 華麗で洗練された味わいのブレンド。彼の故郷のバイーアの土臭さも香るらしい。
そうそう、マグカップやランチに使うお皿なんかは陶芸家の奥さまによる作陶なんだって。
カル: トーン抑えめの端正な器は、お店のイメージにピッタリ。
奥さまの中里浩子さんの作品は植物とか抽象的なカーブなどオブジェが中心だよね。
コロ: そうなんだけど、お店に合うものをと、渋々つくってくれたんだって。
ちょうどルーカス・サンタナの『O’PARAISO』がかかっていたんだけど、
空間と陶器と音楽がマッチしてたな。
カル: ルーカス・サンタナはブラジリアンなんだけど、
フランスのレーベルからリリースされていたりと、
エスプリが効いているから余計にそう思っちゃうよね。
コロ: エスプリ……。マスター自身は学生時代はノイズバンドをやっていたんだって。
もしかしたらノイズサウンドのカフェになっていたかもね(笑)。
お店の奥は元は調剤室。ここでたまにライブもやるそう。
巻上公一さんや中西文彦さん、Saigenjiさんなんかも登場するらしいよ。
ジム・オルークや坂田明さんなんかも来たんだって。
カル: あっ、壁に書いてあるミジンコのサイン、坂田さんのだ!
information
good music and life. cafe ももすけ
住所:神奈川県小田原市栄町1-17-31
TEL:0465-46-7264
営業時間:11:30~18:30(金曜 18:30~23:30)
定休日:土、日曜
facebook:good music and life. cafe ももすけ
【SOUND SYSTEM】
Speaker:JBL4312E、BOSE L1
Turn Table:Technics SL-1200 MK3
CD Player:Pioneer CDJ-200
Mixer:Pioneer DJ DJM-250 MK2
旅人
コロンボ
音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。
旅人
カルロス
現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。
*価格はすべて税込です。
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