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〈スイノカゴ〉
美瑛の森からつくる白樺かごと
暮らしの道具店

おでかけコロカル|北海道・道北編

posted:2015.12.21  from:北海道上川郡美瑛町  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

photographer profile

YAYOI ARIMOTO

在本彌生

フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。
http://yayoiarimoto.jp

writer's profile

Akiko Yamamoto

山本曜子

ライター、北海道小樽生まれ、札幌在住。北海道発、日々を旅するように楽しむことをテーマにした小冊子『旅粒』発行人のひとり。旅先で見かける、その土地の何気ない暮らしの風景が好き。
旅粒
http://www.tabitsubu.com/

credit

取材協力:北海道観光振興機構

JR美瑛駅から徒歩5分、道の駅びえい〈丘のくら〉から徒歩1分。
大雪山連峰の景観に合わせた三角屋根が並ぶ駅前商店街に1軒だけ、
懐かしい腰折れ屋根を見つけたら、
それが白樺細工と生活雑貨のお店〈スイノカゴ〉です。

可愛らしい小さな看板をお見逃しなく。

もとお寿司屋さんだったというこの建物。
三角の屋根と入口のファサードを腰折れ屋根にアレンジし、
住居兼店舗として自分たちでこつこつと内装を手直しして
2014年6月にオープンしたスイノカゴは、
人の手でていねいにつくられた生活の道具を通して、
暮らしを見つめ直す発信の場です。

ホッとなごむ雰囲気の店内には、
店主の崎山雅恵さんがつくる白樺かごのアトリエスペースと、
北海道を中心にさまざまな作家さんが手がける、
自然素材でできた暮らしにまつわる道具たちが置かれています。

テーブルに置かれた木のお皿やカトラリーは
札幌の木工作家〈cogu〉の作品。
奥の棚には、北海道内の下川町の〈フプの森〉の道産モミの木の製品や
札幌で自然素材と製法にこだわる〈Siesta labo〉の手づくり石けんが並びます。
どれも日々の生活のなかで、使い続けたくなるものばかり。

旭川市内の古道具店で手に入れたという、アンティークの薬棚の什器が、空間にぬくもりを添えています。

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崎山さんは〈sui(スイ)〉という作家名で白樺かごづくりを行っています。
美瑛の大きな農家で生まれ育った崎山さんは、
ご主人の仕事で関東圏に長く住んだのち、
ふたりのお子さんの子育てをする環境を見つめ直し、
地元美瑛に戻ることを決意。
それと同時に、お店を開くことも決めたそうです。

せっかくなら美瑛のものを使った商品を扱おうと考えていたとき、
たまたまワークショップで体験した白樺かごづくりに魅せられた崎山さん。
しかも、白樺は美瑛町のシンボルツリー。
これなら美瑛に住みながら自分でもつくれるかもしれないと、
お店づくりと並行して本格的に白樺かごづくりの修行に入ります。
かごの素材は林業関係者にお願いして、
美瑛で間伐された白樺だけを選び、
樹皮を自らとりに行くところから始めました。

それまでものづくりをしたことがなかったとは思えないほど
崎山さんのつくる白樺のかごは美しく編み上げられ、
凛とした佇まいを放っています。
「大切に使えば、100年はもつんですよ」と教えてくれた崎山さん。
そんな白樺かごの制作風景を見せていただきました。

こちらが編まれる前の白樺の樹皮。

白樺の木が最も水分を含む6月頃に、
木肌にナイフを入れるとパッと樹皮が浮きあがります。
かごの表の色になる樹皮の内側の面は、
1本1本の木ごとに違う色を持っているそう。
なめらかで成形しやすい樹皮は油分を多く含むため、
北海道で薪ストーブを使う人には
“ガンピ”という名の焚き付けに使う素材として知られています。
崎山さんはこのときに採取した樹皮を、
1年間かけて少しずつ作品に仕上げています。

採取したあとの樹皮は木に戻ろうとして丸まってしまうので、
おもしを使いながら平らにのばします。
この1枚の樹皮には薄い紙のようなものが何層にも重なっているのだそう。
手で表皮をはがし、厚みを自分の感覚で調整したら、テープ状にカット。

カットされた白樺の樹皮。

「自然素材なので波打っている樹皮を、
ミリ以下でも狂わないように幅を合わせてまっすぐカットします。
すごく難しいですが、ここが作品のクオリティに大きく関わります」
と崎山さん。

まずかごをつくる場合は、底面から編んでいく。

底部分の大きさができたら一旦留めて次の工程へ。

作品の大きさを決めるのが、カットした樹皮の幅と長さ。
樹皮を採取できる倒木の大きさによっても違ってくるので、
できあがる作品は同じかたちでも毎年少しずつ変わるのだそうです。
底の部分が編み上がったら四隅を留めて、
今度は立体的に編んでいきます。
「デザインとかかたちをどこまで立ちあげるか、
高さをどこまでにするかを考えながら。
パターンは幾通りもあるので、ひたすらにつくっています」

次は立体的に編んでいきます。

隙間が生まれないようにおさえながら交差させていきます。
採取から編み上げる工程にいたるまでのすべてが手作業。
ひとりで手がけているため、ひとつの作品ができあがるまでには、
多くの手間と時間がかけられています。

崎山さんは店舗奥にある小さなアトリエで少しずつ編んでいる。

崎山さんが編むのはおもに日常的に使いやすいテーブルかご。
「何も敷かずに直接食べ物をのせたり、お皿として使っても大丈夫。
繰り返して水洗いができるんです。
どんどん飴色に育っていくのを楽しみながら、
次の世代に受け継いでいけるほどの耐久性も備えています」

フィンランドやスウェーデン、ロシアでも行なわれている白樺細工。
崎山さんは各国の古本を探して取り寄せ、
言葉の壁に苦戦しながらも世界各地のかごづくりを参考に、
自分のスタイルをつくり上げています。

撮影用にとつくってくれた小さな白樺かご。

かごのかたちが見えてきました。
自然が生む色合いとツヤ、
そして手仕事の美しい編み目にほれぼれしてしまいます。

「sui」とはアイヌ語で“再び”という意味。
アイヌ民族は植物ごとの特性を熟知して活かし、
必要に応じて使い分けていました。
白樺樹皮で水を汲む柄杓やお椀などをつくっていたのも、
今では記録に残るのみ。
断たれてしまったこれらの知恵や背景を
“再び”かたちにして伝えていきたいという思いと、
間伐などで間引かれた白樺の木に“再び”命を吹き込んでいく決意とが、
この作家名に宿っています。

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店内を飾る〈ヒンメリ〉というモビールは旭川の作家さんが、近郊の小麦を手狩りしてつくっているもの。

スイノカゴは、美瑛近郊で育つ素材でものづくりをする
作家さんの発表の場でもあります。
「北海道でひっそりと活動されている作家さんが興味をもって来てくださって、
お店に来て、なんとなくぽろりとご自分のお話をなさるんです。
『ちょっと待って、詳しく聞かせて!』とお話を重ねていくうちに、
作品を取り扱わせてもらうご縁ができることも。
地元のものを使った作品を、地元で発表していきたい。私もつくり手として、
作家さんたちとお互いに向上していけたらと思っています」

取材に訪れた10月に行われていた『100年の記憶』と題したスウェーデンアンティークの展示。100年ものの木製品が中心で「白樺かごも100年後こういう風合いになっていくのを見比べていただけたら」と崎山さん。この展示には、遠方からもたくさんのお客さんが訪れたそう。

崎山さんのものづくりやお店づくりの原動力になっているのは、
東京での生活から得たイメージ。
美瑛から関東へ引っ越して以来、
展覧会やお店や人、ものとのめまぐるしい出会いを体験し、
カルチャーショックを受けると同時に
「ふるさとのまちで自分に何ができるのかを考え始めた」という崎山さん。
逆に地方のよさを引き出して
「ものと人とがつながる場」
をつくってみたいという静かな情熱がこのお店には込められているのです。

「自分のものづくりは、つくり手の方とのご縁を引き寄せるための道具でもあるかもしれません」。ご実家の農業の手伝いもこなしている崎山さん。柔らかく朗らかな雰囲気の中に強い芯を感じます。

「月の半分は制作、もう半分を営業にあてています。
不定期営業ですが、展覧会やイベントも開催しているので、
遠方からも美瑛を訪れてもらうきっかけになれたらうれしいですね」

焚き付けにしていた白樺の樹皮が、一生使える美しいかごになる。
その白樺を育てた美瑛のまちに静かに根づいていく、
つくり手と使い手をつなぐ場所。
〈スイノカゴ〉には、毎日育てながら大切に使いたくなる、
思いが込められた作品たちが待っています。

information

map

スイノカゴ

住所:上川郡美瑛町中町1-4-34

営業時間:11:00~16:00

定休日:不定休※2015年は12月23日〜26日、2016年は1月20日より営業予定。詳細はHPにてご確認ください。

※駐車場 なし(近隣の有料駐車場をご利用ください)

http://www.suinokago.com

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