珍しい食材や貴重な棚田で採れたお米も
そして、かたくりの宿でのお楽しみが食事。地元でとれた食材を使って、
地元の人たちにもいろいろ教わりながらメニューを考案、工夫しながら提供しています。
こごみやきゃらぶきといった山菜や車麩なども、郷土料理風ではなく、
ちょっとしたアレンジをすることで、洗練された一品に。

この日の献立は、前菜に「こごみ 醤油の実マヨネーズ」「車麩の照り焼き」「きゃらぶきとクリームチーズの生春巻き」「夕顔とベーコン ガーリックソテー」「ズッキーニ 神楽南蛮味噌炒め」。そのほか、岩魚塩焼き、かぼちゃと干し柿の天ぷら、主菜には「妻有ポークの冷しゃぶ」など。大満足の夕食!
なかには、ふだんあまり見たことのない食材も。
それがデザートの梅寒天ゼリーに添えられていた「岩梨」です。
食べるとシャリっとした歯応えの小さな実なのですが、
実はこれがとても珍しいものなのだとか。
「昔はこの辺りではたくさん採れたらしいのですが、
農薬を使うようになってあまり見られなくなったそうです。
でも近くの山の中で自生しているところがあるので、
僕らはこの実が採れる時季にたくさん採ってきて保存しています。
集落の人たちも、子どもの頃、おやつのように学校帰りに採って食べたと聞いています」

ツツジ科の植物、岩梨の実。皮をむくと表面に小さな種がたくさんついた実が出てきます。(写真提供:かたくりの宿)
ちっとも貴重なものだという意識はなかったそうですが、
とても珍しい植物で、高級食材店で高く売られていたり、
海外から問い合わせがくることもあるそう。
そんなここでしか味わえないようなものを食べてもらいたいと、
いまも研究に余念がないそうです。
もうひとつ、ここで採れたものの代表が、お米。
もちろん米どころ新潟県のお米がおいしいのはこの場所に限ったことではないのですが、
かたくりの宿で提供するのは、すぐ近くにある
「石垣田」という棚田でつくられたお米なのです。
石垣田は、その名のとおり石を積み上げてつくられた田んぼで、
その棚田が広がる美しい光景は、まるで神秘的な遺跡のよう。

宿から10分ほど歩いたところに広がる石垣田。日本の原風景のような光景に驚かされます。

このあたりは石がたくさん掘り起こされたため、このような石垣で棚田をつくったのだとか。
ただ、この結東の集落でも高齢化が進み、休耕田も増えています。
「集落でどう石垣田を保全していくかは大きな問題です。
いまは“応援団”としてサポートしてくれる人を募って、
会費をいただき、収穫したお米を送るという取り組みもしています」

宿には、集落の人たちの暮らしの風景をとらえた写真も飾られています。
渡邊さんは、現在は妻とふたりの子どもと一緒に、宿のすぐそばで暮らしています。
この地域は子どもが少なく、地域の人たちみんなが子どもをかわいがってくれるそう。
野菜をもらったり、何かあったら声をかけてくれたり、
家族も宿も、集落の人に支えられてやってこられたという渡邊さん。
だからなのか、宿に、棚田の活動に、芸術祭期間は芸術祭の仕事までこなして
大忙しですが、その笑顔はとても充実して楽しそうに見えます。
「僕が移住してきたときは、この辺りはほとんど移住者はいませんでしたが、
少しずつ若い人たちが移住してくるようになりました。
この宿をなんとか続けられるようにがんばりながら、
地域が楽しい場所になったらいいなと思っています」
いくつもの時代を乗り越え、温かい目で見守られながら集落に佇む小学校。
そんな秘境の宿に、アートを楽しみながら泊まってみませんか。
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