
特別展に並ぶ柴崎重行作品。クマをモチーフとした芸術家として大成した作家で、初期の精巧な彫りから後期の「柴崎彫り(はつり彫り)」と呼ばれる、斧で割った面を残した技術にも注目。
昭和初期、全国的なブームに
八雲では農民美術研究会を発足し、
農民に技術を伝える〈熊彫〉の講習会を開くなど、
多種多様なペザントアート制作から
木彫り熊を中心とした制作体制に変化していきます。
「八雲では制作だけでなく販売にも力を入れ、
道内だけでなく全国に木彫り熊を持っていき、
北海道物産展で販売するほか店舗での委託販売もしていました。
その結果、戦前の1932年には八雲の木彫り熊が北海道の土産品として認知されます。
一方、旭川でもアイヌによる木彫り熊制作が始められ、
1935年頃には有名になっていたようです。
そして戦前の観光ブームで、たくさん売れていきます」
と話すのは、同館学芸員の大谷茂之さん。
しかし、これも第二次世界大戦が激しくなると、需要は激減。
八雲では昭和18年には農民美術研究会が解散状態となり、
彫っているのは茂木多喜治ひとりのみになりました。
戦後には柴崎重行も制作を再開し、ほかにも新たに彫る人が現れるとともに
昭和46年から公民館講座で木彫り熊講座が始められ、
八雲の木彫り熊は受け継がれてきています。
なお、今では有名なサケをくわえた木彫り熊の形は、
戦前に八雲でもごく少数つくられていたようですが、
戦後になって旭川などほかの地域で多くつくられ定番となった形といわれています。
そして八雲では制作者が少なく、
産業として木彫り熊が成り立っていなかったこともあり、
戦後は旭川を中心とした作家や問屋、店によって木彫り熊が販売されていきます。
資料館では茂木と柴崎ふたりの作品はもちろんのこと、
それに影響を受けたのちの熊彫り作家たちの作品、
また旭川をはじめとした道内各地の作家作品や木彫り熊量産用の機械の写真まで展示され、
木彫り熊の移り変わりを知ることができます。

徳川農場が収集した、第2次世界大戦以前につくられた貴重な世界各地の民芸品は、ここの隠れた見どころのひとつ。
「最初の八雲農村美術工芸品評会で、参考品として
全国の農民から送られてきた作品の中には、愛知からは切り干し大根が、
道内からは形のいいかぼちゃがありました。
『民芸品』という言葉もまだ生まれておらず(大正15年頃に提唱されます)、
農村にまだ美術も工芸も定着していなかった時代に、木彫り熊やペザントアートは、
副業としての意味はもちろん、農民の趣味の世界を切り開き、
教養を身に付けることにもひと役買ったのでしょう」
大谷さんはそう話してくれました。
その原型となった、ヨーロッパを中心にした
貴重な戦前の民芸品も合わせて展示されているので、ぜひチェックしてみて。

現在は木彫り熊をつくる作家は少なくなり、
八雲町では2003年に休止していた木彫り熊講座ですが、
2013年に4代目となる講師、千代昇さんを迎えて再開され、
現在は12名の方が参加して木彫り熊の伝統を学んでいます(受講は町民限定)。
最年長は91歳、最年少はなんとうら若き女子高校生だそう。
八雲に生まれ、まちに根づき、そして未来へとつなげてゆく
木彫り熊の歴史と文化に、触れに来てみませんか。
information
八雲町郷土資料館・木彫り熊資料館
住所:二海郡八雲町末広町154
TEL:0137−63−3131(内線231)
営業時間:9:00〜16:30
定休日:月曜、祝祭日、12月29日〜1月5日
入館料:無料
駐車場:あり
Web:http://www.town.yakumo.lg.jp/modules/museum
