十和田 Part1 十和田市現代美術館と 美術家、藤 浩志さんのこと。

山崎亮 ローカルデザインスタディ
十和田編・目次

[ff_get_smallserieslinks post_ids="tpc-thi-yamazaki-018, tpc-thi-yamazaki-019, tpc-thi-yamazaki-020, tpc-thi-yamazaki-021"]

今年度から青森県の十和田市現代美術館副館長に就任した
美術家の藤 浩志さんと山崎さんとの対談をお届けします(全4回)。

福岡県糸島市から青森県十和田市へ。

山崎

こんにちは。来ちゃいましたよ、藤さん!

藤

ほんとだよねえ。はるばるありがとう。関西からだとずいぶん遠かったでしょう。

山崎

開館のときにも一度来ているんですけどね。

藤

そうか、そうか。

山崎

この間、東京で会ったときに副館長就任のことをおうかがいして、
とにかく驚きました。

藤

ぼく自身もびっくりしているからね(笑)。

山崎

これまで住まれていた糸島は、ひきはらって?

藤

いや、糸島の海沿いに新築の家ができたばっかりで、
しばらくは、糸島と十和田を行ったり来たりの生活になるのかな。

山崎

福岡から青森……大移動ですね。

藤

ところがね、青森の地域性って、ぼくが生まれ育った
鹿児島に近いんじゃないかなって感じてるんです。

山崎

あ、端っこと端っこ同士で?

藤

そう! 日本地図をふたつに折り畳むとぴったり合いそうでしょう、
位置も県のカタチも(笑)。
日本の文化って同心円状に広がっているともいわれているから、
言葉のイントネーションや人柄も含め
「端っこ感」みたいなところに妙に親近感があるんですよ。

山崎

それは興味深いですね。

藤

それに、なにより今は被災地が沈み込んでいるから、
周辺ががんばって東北全体が盛り上がっていかなきゃという気持ちがあります。
そういう意味でも、今は九州より東北を拠点にしていたいって思ったのが
大きなきっかけです。

十和田市現代美術館の廊下

美術館の設計は、西沢立衛。大小さまざまのいくつかの展示室が廊下でつながれていて、まるで双六(すごろく)盤のよう。

チェ・ジョンファの「フラワー・ホース」

韓国を代表するアーティスト、チェ・ジョンファの「フラワー・ホース」。美術館のある官庁街通りは別名“駒街道”といい、馬をモチーフにした彫刻作品が出迎えてくれる。

まずは種を集め、対話を重ねて「手当て」をする。

山崎

具体的にこのまちで、あるいは十和田市現代美術館で
「こんなことやってみよう」という案はすでにおありなんですか?

藤

まだないよ!(笑)

山崎

今日はそこのところを聞きに来たんですけど……
来るのがちょっと早すぎましたか(笑)。

藤

いや、なんとなくならあります。(笑)。

山崎

ぜひ、そこのところをお願いします。

藤

最大の興味はやはり、この美術館がアートセンター、
つまり「拠点」として作られていること。
そして、観光、集客というレイヤーでみると、
今のところすでに成功している事例であるということ。
ただ、地域の活動を作っていくという点では多分まだうまくいっていない。
ここですね。これが、ぼくがこのまちに呼ばれた理由だと思っている。

山崎

なるほど。

藤

そこで考えないといけないのは、どうやって興味や関心を集めて、
別の仕組みをつくるかということ。

山崎

そうですね。

藤

鹿児島同様、この辺りはとにかく自然が深い。
そのなかに潜在する「種」のような価値を見い出して集まっているひとに
興味があるんです。

山崎

つまり、消費や流通といった視点の価値観ではないもの?

藤

ええ。たとえば、自然、昆虫、苔、水、環境……
こういったことに興味をもって価値を見いだし、
実践的にここで生活を作ろうとしているひとがいる。
そんなひとたちのことばを聞き、対話を重ね、
彼らのやっていることが「大事だよね」ということをちゃんと確認したい。

山崎

十和田市現代美術館が、地域にひらかれた「アートセンター」として
どう機能できるか、というところですね。

藤

美術館には、保存と普及という役割がありますからね。
日本全体も、これまでの右肩上がりじゃないこの時代、
これからどうやって地域を守りながら次の世代に繋いでのこすか、
ということについて対話したい。

山崎

なるほど。

藤

むかしから個人的に活性化ということばが苦手なので、
「豊穣化」とか「なにかを醸し出す」と表現できる状況を作り出していければ、と。
そのために、まずは対話を重ね、いまの状況に「手を当てる」。
そんなことやってみたいと、いまは考えています。

(……to be continued!)

官庁街通り

十和田市現代美術館の構想は「官庁街通り全体を美術館に見立てる」というコンセプトから始まった。そんなはなしを聞きながら、まちを少し歩いてみる。

information

map

十和田市現代美術館

青森県十和田市が推進するアートによるまちづくりプロジェクト、Arts Towada(アーツ・トワダ)の拠点施設として、2008年4月に開館した現代美術館。アート作品が街に対して展示されているかのような開放的な空間構成を持ち、まちづくりプロジェクトの拠点施設としてつくられた特徴ある美術館となっている。

住所:青森県十和田市西二番町10-9

TEL:0176-20-1127

Web:http://towadaartcenter.com/

profile

HIROSHI FUJI 
藤 浩志

1960年鹿児島生まれの美術家。京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了し、翌年よりパプアニューギニア国立芸術学校講師、建築企画・都市計画コンサルタント勤務を経て、藤浩志企画制作室を設立。対話と地域実験の場を作る美術類のデモンストレーションを実践。2012年4月より十和田市現代美術館副館長に就任。

Web:http://geco.jp/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

writer profile

高橋マキ Maki Takahashi
たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

Recommend 注目のコンテンツ

今月の特集
奈良県
奈良県

奈良県

奈良県は、豊かな自然と日本始まりの歴史が息づく古都です。世界遺産の東大寺や春日大社をはじめ、歴史ある寺社仏閣が緑の中に佇み、奈良公園のエリアでは鹿たちが穏やかに暮らしています。吉野の桜や山々の彩りなど、四季折々の美しい風景も大きな魅力です。飛鳥から続く伝統や文化、神秘的な空気感が日々の暮らしに溶け込み、訪れる人に穏やかで特別な時間を届けてくれる地域です。

奈良県の特集ページへ

Spotlight 今、読んでほしい、
このまちのこと

「はじまりの地・奈良」は知れば知るほど面白い

「はじまりの地・奈良」は知れば知るほど面白い

Special 関連サイト

What's New 最新記事