ハードワークのために静岡へ。YouTube登録者45万人、世界が注目するギタリスト・ソエジマトシキ

ホームスタジオ〈Kimama Studio〉でギターを演奏するネオ・ソウル・ギタリストのソエジマトシキさん(撮影:五十嵐一晴氏)
やわらかな音色と心地よいグルーヴで、世界中のリスナーを魅了するネオ・ソウル・ギタリスト、ソエジマトシキさん。5年前、活動の拠点を首都圏から静岡市へ移した彼の目的は、のんびり暮らすことではなく、音楽にいっそう打ち込むため。日々を過ごす部屋と新たに構えたスタジオを訪ね、静岡で広がった活動や、街の人々とのつながりについて聞いた。

音楽に打ち込むための「攻めの移住」

佐賀県出身のソエジマさんは、大学進学を機に上京。埼玉県で暮らしながら、東京・池袋でギター教室を営んでいた。2018年末、教室の集客を目的にYouTubeを開始。ギターの演奏方法を解説する動画を配信していたが、コロナ禍を機にレッスンのオンライン化が進み、住む場所を問い直すようになったという。

「レッスンがほとんどオンラインで完結するようになって、東京に住まなくてもいいのかなと思い始めました。ミュージシャンって東京にいなきゃいけない、みたいな空気もあるじゃないですか。そこに反骨精神が生まれて、逆に地方へ行ったほうが格好いいんじゃないかって(笑)。あとは子どもが生まれたことも、移住を決めるきっかけに。下田や湘南のような海辺の町にも憧れはあったんですが、縁もゆかりもない土地へ行くより、知っている場所のほうがいい。妻の実家があり、家族の拠点があることは、静岡を選ぶ大きな理由になりました」

ソエジマさんが構えるホームスタジオ〈Kimama Studio〉で取材。YouTubeの撮影をはじめ、ゲストミュージシャンとのセッションやライブレコーディング、カバーアルバムの制作などがここで行われている。

誰とも比べず、自分の音楽に集中したい

音楽仲間が多く、日々刺激に触れられる東京。その環境から離れたことで、自分のアイデアとじっくり向き合う時間が生まれた。

「東京に住んでいた頃は、よく友達や先輩のライブに頻繁に足を運んでいました。でも静岡からだとそうはいかない。でも、出かける機会が減ったぶん、自分のために使える時間が増えて。刺激を受け続けるよりも、思いついたアイデアを自分のペースでじっくり試す。そんな働き方が、僕には合っていたんですよね」

住まいの広さも活動の形に変化を与えたという。

「以前はマンションの一室で、誰かと一緒に動画を撮ったりするスペースがありませんでした。でも、ここへ来てからは、みんなでゆっくり演奏する映像を撮るようになって。それがYouTubeでも人気のコンテンツになりました。東京の家でもできたと思うんですが、そもそも人を呼んで演奏しようという発想にならなかった。広いスペースがあると、やってみたいことも広がる。空間の広さは、メンタルにもかなり影響するんだと思います」

2022年に公開した「Feel Like Makin’ Love」のカバー映像は、海外を中心に大きな反響を集め、再生回数は760万回を突破。YouTubeのチャンネル登録者数も45万人を超えている(2026年9月時点)。

「移住した当初は、ライブに来てくれるお客さんが少なくても、映像を通して世界に音楽を届けたいと思っていました。ただ、ここまで広がるとは想像していなかったですね。最初は面白がって動画を見てもらって、少しずつ海外にもファンができて。その人たちがいるから、今はいろいろな場所でライブができています」

静岡の仲間との音楽を、世界へ届ける

静岡で暮らし始めてから、映像を撮影する人や演奏を録音する人など、制作をともにする地元の仲間が増えていった。当初は自分で行っていた動画制作も、今では東京と静岡の仲間とチームを組んで進めている。

「一緒に撮影したり、録音したりしてくれる仲間ができました。僕が海外と仕事をしていたり、つくった動画がたくさんの人に見られたりすることを、すごく面白がってくれるんです。静岡にいながら、外の世界とつながる活動をしていることに、やりがいを感じてくれているんだと思います」

東京にいたころとの違いを感じるのは、親しくなれる距離感だという。

「お店に行くと、すぐにオーナーと仲良くなれるんです。僕の活動も面白がってくれて、『今度、場所を貸してくれませんか?』と聞くと、いいよって。場所を借りて、そこで撮った映像が僕のYouTubeでたくさんの人に見られることをお店の人も喜んでくれるんです。緩やかなチームワークみたいなものがあります」

地域の人との出会いから、演奏のための舞台を一緒につくる機会も生まれた。庭師や職人が集うイベント「術 -JUTSU-」では、庭師である〈Niwanotoki Design〉の仲佐修二さんとコラボレーション。静岡市中心部の青葉シンボルロードに、演奏のために石や木々を運び込み、一日限りの風景をつくり上げた。

「地元の人と『庭師と何かやれたりしないですか?』という話になって、お互いが本気になったんです。もともとは普通のステージだったんですが、僕らが出るとなって、そこまでつくってくれた。木も全部、その日のために持ってきているんですよ。こういうことは、静岡だからできたんだと思います」

これからは地元での協働をさらに広げながら、映像とライブの両方で、世界のリスナーとのつながりを深めていきたいと、ソエジマさん。

「オンラインでは、カバー曲をまた発信していきたいですね。これまでは再生数を意識していた部分もあったんですが、最近は世界のファンとの共通言語になると感じていて。『この曲、いいよね』『僕も好き』と、言語が違っても音楽を通して会話ができるんです。ライブでは海外での単独公演を重ねて、大きなフェスにも出たい。そして静岡では、音楽家に限らず、地元のアーティストとコラボレーションしていきたいです。静岡に暮らす音楽家としての認知もあげたい。ここでしかできないものをつくって、世界の人に見てもらえたら、すごく面白いですよね」

Information

ソエジマトシキ

そえじま・としき/1992年佐賀県生まれ。インストゥルメンタル作品を中心に発表し、国内外でライブを行う。YouTubeのチャンネル登録者数は45万人を超える。オンラインギタースクール「Soul Guitar Lab」主宰。2021年より静岡市在住。

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