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前橋 Part2
ゴミだって、地産地消。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.066

posted:2013.6.13  from:群馬県前橋市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:ただ(ゆかい)

今回、山崎さんが注目したのは、産業廃棄物にあたらしい命を吹き込む
「モノ:ファクトリー」を展開している株式会社ナカダイ。
1日約50トンも運び込まれる廃棄物を「素材」さらに、「ソーシャルマテリアル」
と言い換えてみれば、リサイクルのあたらしい方法だけでなく、
これからのわたしたちの生き方までもが見えてきそうです。
そんな “リマーケティングビジネス” の仕掛人とも言える、中台澄之さんを訪ねました。

「処理する」から「生産する」と言い換えてみた。

山崎

ひとくちにプラスティックといっても実はそれだけたくさんの種類があって、
だからこそ、産業廃棄物をリサイクルするための分別の質の高さが、
ナカダイの強みになっていくわけですね。

中台

それまでは鉄だけだったのに入ってくるゴミの種類は増えるわ、
匂いを嗅げ、こまかく計れと言われて、社員も相当混乱したと思います。
それで同時に、お客さんのところでの分別も徹底してもらう方法を考えました。
たとえば、生産ラインの終着点ではなく、途中に逐一ゴミ箱を置く。
プラスティックも種類がわからないのは当たり前だから、
色で分けてくださいとお願いしてみる……。そんな具合に。

山崎

そうやって、少しずつ方法が構築されていくんですね。

中台

もちろん、それだけでは十分でないとわかってはいながら、
そこそこ会社も順調だったのでなかなか着手できずにいたんです。
ところが、リーマンショックで月1000万の売上げが100万円にダウン。
ほんと瞬時に、ですよ。同じクオリティのしごとをしているのに、
これでは社員が雇えない。さすがに尻に火がついて、
なんとかしなくちゃとトヨタの生産方式を取り入れたんです。

山崎

廃棄物なのに、生産方式?

中台

ええ。当初は全く根拠もないままに(笑)。
とにかくぼくらのしごとを「廃棄物を処理する」のではなく
「解体・分別して素材を生産する」と言い直してみたんです。
で、このコンセプトに基づいたワークアウトを社員全員で行うようになりました。

山崎

社員のみなさん、よくついてこられましたね。

中台

最近では、工場見学なども行っているので、
ぼくらのしごとにたくさんの方が興味を持ってくださっていることが
目に見えてわかる。時には、彼らにとってあたり前のユンボの運転や
機械の操作を「すごーい!」ってほめられたりしますしね(笑)。
みんな、じぶんのしごとに自信をもって、ほんといい顔で働いてくれています。

ナカダイの工場に運び込まれた「ゴミ」

ナカダイの工場に運び込まれた「ゴミ」。素人目には、椅子は椅子に分別されているように思うが……脚の部分(木)、釘などの留め金(金属)、中材(ウレタン)、座面(木綿や麻など)、それに外を包むビニール(!)と、まだまだこれから手間をかけてこまかに分けなければリサイクルできない状態。

ナカダイ前橋支店では、工場見学(予約制)を受け入れている

ナカダイ前橋支店では、工場見学(予約制)を受け入れている。「見られる」ことが刺激になって、社員さんたちの姿も生き生きとしているみたい。

食べ物と同じで、廃棄物だって地産地消。

中台

入社した当初からジレンマに思っていたのは、
「ゴミゼロの社会」だと我々の業界は困るということ。
リーマンショック後、多くの工場が海外移転したことは、ぼくらにとっては
イコール「ゴミが減る」、イコール売上げが減る、なんです。

山崎

なるほど。ナカダイから最終処分場にいくときには減らすんだけど、
入ってくるものが減ると、しごとが成り立たくなる。

中台

そういうことです。うちに入ってくる廃棄物をスクラップとして、
またはリサイクル素材として出している限りは、限界がある。
それで、「廃棄物ってなんだろう?」ってことをつき詰めて、
分別を重ねていくうちに答えのようなものが見つかってきたというか。

山崎

見つかったんですか?

中台

わかったのは、廃棄物も地産地消だってことです。
たとえば、京都で出るゴミには、組ひもがたくさん出る。
うちは群馬で自動車製造業が多いから、エアバッグやシートベルトが出る。
組ひもなんて、絶対に出ない。
実際に見たことはないけど、もしかしたら亀山のゴミには
液晶がたくさん出てるんじゃないかな、と思うわけです。

山崎

なるほど。それはおもしろいなあ。

中台

地元の産業から出た廃棄物で、地元のクリエイターやこどもや市民が
再びなにかをつくるって、なんだか腑に落ちませんか? 
道の駅的というか。

山崎

うーん、道の駅的……。そう考えてみると、発想がひろがりますね。

中台

studio-Lが小豆島の町民のみなさんと取り組んでいらっしゃる
コミュニティアート「醤油の壁」も、その発想ですよね。

山崎

たしかに、発想としては近いのかもしれませんね。
ぼくらがぼんやり考えはじめていたことを、
もうすでに数千倍の規模でやっていらっしゃるということ、非常に興味深いです。

(……to be continued!)

プラスティック成型をする際の端材

プラスティック成型をする際の端材。某有名アクセサリーショップから「商品のディスプレイ台として使用したい」と申し出があり、中台さん自身もいい刺激を得たという。

雑誌『モノマガジン』とのコラボで生まれたトートバッグ

自動車のエアバッグというナカダイ前橋支店ならではの廃材を素材に、雑誌『モノマガジン』とのコラボで生まれたトートバッグ。

トートバッグを真剣に吟味する山崎亮さん

「これ、ほんとカッコイイなあ。欲しくなる」と、トートバッグを真剣に吟味する山崎さん。「でもまたエアバッグのゴミが出てこないとつくれないってことですよね!(笑)」

information

map

株式会社ナカダイ

再生資源、中間処理、廃棄物コンサルティングなどを行う会社。中間処理場である前橋支店での取扱量は1000t/月程度で、リサイクル率は95%を超える。粕川工場では、リユースを目的とした中古家具をオークションする市場、“MRC(マテリアル・リバース・センター)”を運営、その他、工場やオフィスビルの管理や廃棄物削減などのコンサルティングなども行う。2010年より、新しいモノの流れと産業を創る“リマーケティングビジネス”を展開。前橋支店内に、“発想はモノから生まれる”をコンセプトにした、「モノ:ファクトリー」を併設し、様々な“マテリアル”を発見できる「マテリアルライブラリー」、そこから生まれた商品や作品などを販売する「ストア」、ワークショップのできる「工房」を整備。工場見学やリサイクル体験プログラムなども随時受け付けている。

ナカダイ前橋支店

住所:群馬県前橋市駒形町1326

TEL:027-266-5103

Web:http://monofactory.nakadai.co.jp/

profile

SUMIYUKI NAKADAI 
中台澄之

1972年生まれ。ビジネスアーティスト/株式会社ナカダイ前橋支店支店長/モノ:ファクトリー代表。東京理科大学理学部卒業、証券会社勤務を経て、ナカダイに入社。ISO14001の認証取得や中古品オークションを行う市場の立ち上げなど、総合リサイクル業として事業を拡大。“リマーケティングビジネス”を考案し、“発想はモノから生まれる”をコンセプトに、モノ:ファクトリーを創設。使い方を創造し、捨て方をデザインするビジネスアーティストとして、さまざまな研修やイベントなどの企画、運営を行っている。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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