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小豆島 Part3
ぼくが木樽をつくることにした理由。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.063

posted:2013.5.2  from:香川県小豆島町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:中島光行

瀬戸内海の島々を舞台に、現在開催中の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2013」。
その出展準備のため小豆島にたびたび通うことになった山崎さんが
「いま、いちばん話を聞いてみたいひと」と名前を挙げたのは、
小豆島に5代続く、お醤油屋さん。醤油づくりとローカルデザインの関係とは?

戦後初めて、醤油屋として新樽をオーダー。

山崎

こちらが、5代目の建てたあたらしい蔵ですね。

山本

そうです。建て替えるわけにいかないので、蔵を半分だけ直す。
上部で空間がつながっているので、浮遊菌で発酵させているわけです。
これを続けると、孫の代くらいでこちらにもじゅうぶんないい菌がつく。
そのころまた、孫かあるいは次の代があちらを直す。
そういうふうにできているんです。
ぼくはたまたま、そういう代にあたった、と(笑)。

山崎

やっぱりはなしが100年単位なんですね……。
こちらは、ならんでいる樽もあたらしく見えます。

山本

2009年に仕込んだ12本のうち、新樽が9本、あとの3本は、
さきほどおはなししたように削って組み直したリユース樽です。

山崎

なるほど。組み直して、リユース。

山本

醤油屋として桶屋に新樽を発注したのは、うちが戦後初だそうです。

山崎

ええっ!? 戦後初? 知らないことばかりだなあ。

山本

木樽で醤油をつくってるところ自体が少ないですからね。
うちが発注しているのは大阪堺市の桶屋さんなんですが、
2000年に戦後初めて新樽をつくったんだそうです。

山崎

戦後55年もつくらなかったのに、その年になにかきっかけがあったんでしょうか。

山本

長野県小布施町の「枡一市村酒造場」で、
セーラ・マリ・カミングスさんが「なぜ木樽で日本酒をつくらないのか」と、
木樽仕込みの限定醸造をはじめたことがきっかけです。

山崎

セーラさんだったんですね。

山本

それ以降はほかの酒造も木樽仕込みをはじめるところが出てきて、
件の桶屋さんは現在、年2〜3本の新樽をつくり、
20〜30本の組み直しをしているそうです。

山崎亮さん

「戦後55年も新樽がつくられなかったなんて、ほんとうに驚きです。山本さんのおはなしは、知らなかったけれど、知らなければならないことばかりです」(山崎)

子、孫、ひ孫のことを考えると今がタイムリミット。

山崎

いい醤油をつくるためには、桶屋さんも続いてもらわないと困りますもん。

山本

そうなんです。もしも桶屋さんがなくなって技術が途絶えたら、
うちはたとえば50年後、子孫ひ孫の代に困るわけです。

山崎

後継者もなかなか難しいでしょうしね。

山本

それなら、なんとか続けてもらえるようにしごとをお願いしなければと、
2009年に借りられるだけのお金を借りて、うちも新樽を発注したんです。

山崎

なるほど。

山本

でもその桶屋の職人さん兄弟ももう60代なので、
「じぶんでも組み直せるようにしとけよ」と言われて。

山崎

それでじぶんでも?

山本

はい。大工さんと一緒に修行に行きました。
いまは竹で箍(たが)を編む訓練をしていますが、これがなかなか難しくて。

山崎

職人技ですもんね。一筋縄ではいかないはずです。

山本

大工さんたちはともかく、ぼくは人生初カンナがけからの修行ですからね(笑)。
しかもさらにこんどは、竹を割る道具をつくる鍛冶屋さんが86歳で廃業。
さすがに鍛冶屋はできないので、さいごの客として必要な道具、
銑(せん)を譲ってもらったんですが、
いよいよそういう時代になってきたのかという危機感で、
いわば悔しさをバネに樽づくりに挑んでいるという調子です。

(……to be continued!)

山本康夫さん

人生初めてのカンナがけから樽づくりに挑戦している山本さん。「桶職人さんに怒鳴られて、悔しくて、でもそれをバネにしてがんばっています」

木樽の前で対談中

「この樽は、職人さんに教わりながら、ぼくたちが組み立てました。孫の代には、いい樽に育っていてほしい。……というか、まず、漏れないことを祈りたい(笑)」と、ほがらかに笑う山本さん。

information

map

ヤマロク醤油

住所:香川県小豆郡小豆島町安田甲1607

TEL:0879-082-0666

※見学は随時受付、予約不要

Web:http://yama-roku.net/

profile

YASUO YAMAMOTO 
山本康夫

1972年香川県小豆島生まれ。ヤマロク醤油5代目。大学卒業後、小豆島に戻りたくて、島の佃煮メーカーに就職。営業職で大阪に赴任後、東京に転勤。2002年、小豆島に戻り、家業のヤマロク醤油を継ぐ。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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