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小豆島 Part1
島の醤油屋に150年以上続くもの。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.060

posted:2013.4.11  from:香川県小豆島町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:中島光行

瀬戸内海の島々を舞台に、現在開催中の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2013」。
その出展準備のため小豆島にたびたび通うことになった山崎さんが
「いま、いちばん話を聞いてみたいひと」と名前を挙げたのは、
小豆島に5代続く、お醤油屋さん。醤油づくりとローカルデザインの関係とは?

杉樽仕込みの醤油蔵。その魅力とフシギ。

山崎

こんにちは! お邪魔します。

山本

お待ちしておりました。

山崎

何度見ても、迫力がありますね、この杉樽。

山本

そうですよね。
現代の醤油は、タンクで大量生産されるのがほとんどなので、珍しいと思います。
いまでも杉樽仕込み醤油で使われる杉樽の2分の1か3分の1は、
小豆島にあると聞いたことがあります。

山崎

いちばん風格のある古い杉樽が、たしか150年くらい前からの現役だと
おっしゃっていましたが、年数はどこでわかるんですか。

山本

樽屋さんに見てもらったんですけど、どうやら、
100年ちょっと前に電気の製材機が登場しているので、
それより以前のものと明確に区別がつくようです。

山崎

なるほど。

山本

それより前は木を割ってつくったみたいですね。
まずは分厚くつくっておいて、削っていくんです。

山崎

削る?

山本

はい。まず20〜30年は酒蔵で酒を仕込むのに使った後、
いちどバラして内側をカンナで削って、また組み合わせるんです。
そして、次に味噌や醤油、漬け物用へとリユースされるんですよ。

山崎

そうなんですか!

山本

そうやってそもそも長く使うものではあるんですが、
ことにうちのこの樽はもともと醤油のためにつくられたので、
一度も削ってないらしいんです。
だから、木が分厚いまま、まだまだ使い続けられそうです。

山崎

まわりについてる、このカビのようなものがいい酵母を育てるから、
うっかり触ったり掃除したりしちゃダメなんですよね……。

山本

そうなんです。母が嫁いで来た当初、あんまり汚いからと
掃除しかけたことがあって、「コラーッ!」って大声で叱られたそうです(笑)。

ヤマロクの醤油を育てる蔵

こちらが、ヤマロクの醤油を育てる蔵。「隠すものはなにもないから」と、観光客も見学自由に。代々積み重ねられた歴史の長さを感じる空間。

大杉樽の表面

樽職人さんが「150年は前につくられたもの」だという大杉樽の表面には、乳酸菌や酵母菌など、おそらく専門家も解明できないであろう良質な「菌」がたくさん。

100年前と100年先に思いをはせて。

山崎

でも、女性が蔵に入ると酵母が喜ぶんだって、前回聞いたような気がします。

山本

その通りです。いまは時期的に酵母が静かにしていますが、
暖かくなる5月頃には発酵がぐんぐんすすみ、
表面にプツプツと気泡があがってくるんです。
そのシーズンに女性が多く見学にいらっしゃると、そのプツプツがぐっと増えて、
酵母が喜んでいるのが如実にわかるんですよ(笑)。

山崎

いまこうしていると全然わからないけど、ほんと、生きてるんだなあ(笑)。

山本

そうですね。夏になると、
蔵じゅうの生きている菌が発酵する音が、音楽のように聞こえます。

山崎

それはすごいな。樽だけでなく、この蔵全体が呼吸しているということですね。

山本

ヤマロクの創業は江戸時代の終わり頃〜明治のはじめ頃で、
当初はもろみ屋なのですが、その頃から数えると
100年以上前に建てられた蔵ということになります。
もちろん木造、床は土間、壁は土壁ですから、樽に限らず、
蔵全体におそらく何百種という酵母菌や乳酸菌がずっと長いあいだ生き続けていて、
これが「ヤマロクの醤油」をつくってくれるんです。

山崎

なにものにも代え難い財産ですね。

山本

だから、蔵を大きくすることはあっても、建て替えることはできませんね。
わたしの代であちらに増築しましたが、空間としてつながっているので、
おそらく孫の代くらいには、あちらにもいい菌が移り住んでくれることでしょう。

山崎

100年先のことを考えたモノづくりですね。ほんとうに勉強になります。

(……to be continued!)

発酵が進み表面にぷつぷつと泡が浮かび始める

大豆、小麦、塩、水を混ぜ入れ、1年から4年寝かせてから搾る。暖かくなる5月頃からは発酵が進むので、まるで生きているように表面にぷつぷつと泡が浮かび始める。

information

map

ヤマロク醤油

住所:香川県小豆郡小豆島町安田甲1607

TEL:0879-082-0666

※見学は随時受付、予約不要

Web:http://yama-roku.net/

profile

YASUO YAMAMOTO 
山本康夫

1972年香川県小豆島生まれ。ヤマロク醤油5代目。大学卒業後、小豆島に戻りたくて、島の佃煮メーカーに就職。営業職で大阪に赴任後、東京に転勤。2002年、小豆島に戻り、家業のヤマロク醤油を継ぐ。

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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