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山形 Part3
「コミュニティデザインって
なんだろう。」

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.058

posted:2013.3.22  from:山形県山形市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:山口徹花

今回は、2月5日に「山形まなび館・MONO SCHOOL」で行われた、
山崎亮さんのトークイベント「コミュニティデザインってなんだろう。」
の様子をお届けします。

まずは萩原さんから、いくつかの質問。

萩原

山崎さんがなぜこんなにも全国から呼ばれるようになったのか。
いくつかの代表的な事例を紹介してもらいましょう。

山崎

ではまず、有馬富士公園の事例から。
ここでは、山のなかに公園をつくったものの、
どうしたらひとが来てくれるだろう、という課題を解決しました。
それを知って、竹内昌義さん(みかんぐみ)とナガオカケンメイさんから
お誘いを受けたのがマルヤガーデンズ(*1)です。

そこで、イメージとして「有馬富士公園を垂直に積んでみたらどうか」
ということを提案しました。
施設のなかでコミュニティの活動をするついでに、
買い物をするひと、お茶をしていくひとがいればいいな、という発想です。
いまは、鹿児島市内を中心にさまざまな団体が関わって、
いろんなことをやっています。

じつはこのプロジェクトをやっているときに、ぼくとは別に、
壁面緑化や屋上などを手がけたランドスケープデザイナーさんがいらっしゃって、
しかも名字が「山崎さん」だったんです。
一方、ぼくはここではランドスケープデザイナーとしてのしごとを
していませんから、ややこしい(笑)。そこでとっさに、
「コミュニティデザイナー」という肩書きを名乗ったのがはじまりなんです。

だから、世界で唯一とか日本初とかいわれるのもあたりまえなのですが、
ことば自体はむかしからありました。
でも従来は「コミュニティとともにデザインしていく」のが
コミュニティデザインでしたから、そういう意味では、
ハードを作らない「コミュニティデザイン」は、ぼくらだけかもしれないですね。

萩原

来春、東北芸術工科大学に国内初の
「コミュニティデザイン学科」が開設され(現在申請中)、
その学科長に就任される、ということですが。

山崎

東日本大震災が起こったとき、studio-L は
「すぐに東北に乗り込みません」と宣言しました。
阪神淡路大震災の経験を経て、震災直後はもちろんのこと、
じつは3年くらい後になってじわじわと
大変なことが起こるということを学んでいたからです。

だからこれまでなにもしなかったのかというともちろんそうではなくて、
この3年のあいだずっと、
「これから」ぼくたちになにができるかを考えていました。
このタイミングこそ、「よそ者」「ばか者」「若者」が必要となってくる。
そういったことを実践する組織を、芸工大のなかにつくらせてもらうことは、
とても意味のあることだと思っています。
今後、可能であれば studio-L の山形事務所を作り、スタッフが講師をつとめ、
実践的に一緒に地域の課題を解決していきたいと考えています。

萩原

「よそ者」ができることってなんでしょう。

山崎

地域の方がなんでもないと思っていることでも、よそ者がみたら
「すごくいいね!」ということがあります。
たとえば、山形空港に無料で駐車できるとかね。
そういうと、みんな苦笑いするんだけど、都市部ではあり得ないから、
ぼくらにはほんとうに豊かなんだなあと思えるんです。
ひととひとが一緒に暮らしていくための、あるべきおおらかさ、
本来のゆたかな生活を感じる。
離島のひとが山間部を、農業のひとが漁業をみても同じだと思いますね。
そういう発見を、地域のみなさんの気持ちにいかに寄り添わせて
すべりこませるかということが大事です。
よそ者の作法というものがありますね。

いきなり「○○を教えます!」と言ったり、あるいはこちらから
「やりたいこと」を掲げて入って行くと、煙たがられるに決まってます。
まずは地域の方々のはなしを「聞く」ことが第一。
「ほぅ!」「なるほど!」「すごいですね!」この3つのことばで
何時間でも「聞く」。そのなかから、人脈を知り、課題をみつけていくんです。
そうすると、ただずっと聞いてるだけで
「あいつはいいやつだ」「なかなかできる」という評価を受けたりするんですね。

だから今回も、「わたしが東北を変えます」なんて言わないし、
「救世主来たる!」なんてメディアに書かれたくない(笑)。
まずは、山形でも1年ぐらいじっくり時間をかけて
ヒアリングをすることになると思います。

*1 マルヤガーデンズ:鹿児島市の老舗百貨店跡をリノベートして2010年にあらたに開業した商業施設。テナントの間にNPOをはじめ地域住民が気軽に使用できるコミュニティスペース「ガーデン」が設けられているのが特徴。

トークイベント「コミュニティデザインってなんだろう。」のチラシ

2月5日に「山形まなび館・MONO SCHOOL」で行われた、山崎亮さんのトークイベント「コミュニティデザインってなんだろう。」。

トークイベントの会場

山崎さんと、司会進行をつとめる萩原さん。「これから山形にお越しいただく機会が増えるとのことなので、これを0回目として、今後も山崎さんとこういった場を設けたいです」

そして、参加者が山崎さんに聞いてみたいこと。

参加者A

これまでに、失敗した経験があれば教えてください。

山崎

失敗は、しないんです。成功するまでやり続ける、というほうが正確でしょうか。
1発勝負だったら失敗もするかもしれないけれど、
ぼくたちは3〜5年いますからね。徐々にものごとを進めるので、
途中でヤバいなと思っても、軌道修正する余地があるんです。
だから、事務所を立ち上げてから、いちども失敗はありません。

もちろん、いくつか難しかったなと思うことはあります。
たとえば、企画案を出したあとになって、予算がないという理由で、
「ただ、5回分のワークショップを進行する」だけの
しごと内容になってしまったとき。
告知もちらしのデザインも先方にゆだねたら、
なんと参加者がゼロ人だったんですね……。
まずしっかりヒアリングを重ね、「来てください」とお誘いすることこそが、
ぼくらのしごとだったんだ、ということを学びました。

参加者B

コミュニティデザイナーって、儲かりますか?

山崎

「儲かる」という定義自体を変えたいですよね。
studio-Lの梅田事務所と、伊賀事務所では、所員の可処分所得が異なります。
端的にいえば、梅田だと家賃6万のところが、伊賀だと1万円で済む、
というのがからくりですよね。
それに、地方から季節の農産物が送られてくる、ひとに感謝される、
ともだちが増える……これだって、ぼくたちにとっては「儲け」だと思っています。
そういう意味では、「ぼろ儲け」ですね(笑)。

参加者C

対立した意見が出たときはどうしますか?

山崎

基本的には、どうもしません。
所員のなかには「両案を乗り越えるC案」が出せる
スマートな人間もいますが、まずは一旦そのまま放っておいて、
「どちらか、先にできるほうからやってみましょう」といってみます。
すぐできること、3年後にできること、10年後にできるかもしれないこと、
と分析するんです。やっているうちに未来は変わっていくものですから、
行動前の机上の意見を無理に統合しなくてもいいと思いますよ。

参加者D

どうやってひとを集めるんですか?
ひとつのワークショップやプロジェクトは何人ぐらいでやるんですか?

山崎

集めるのではなく、誘いにいきます。まずはプロジェクトの担当者に
「このまちでおもしろいことやってそうなひとを3人紹介してください」という。
その3人にまた同じことをお願いする。これをくり返して、100人くらい会う。
その経緯のなかで、たくさんのひとから「アイツはすごい」といわれる、
いわばキーマンがやって来てくれたら、いろんなことがうまくいきます。
公募をかけるのは、そのあとですね。

そうすると、公募から集まった「まちづくり大好きな100人」と、
ヒアリングを経てぼくたちが来てほしいと思った
「もともとまちづくりに興味がなかったひと100人」の組み合わせを
つくることができます。公募で集まった200人と初めましてで対面するより、
なかにすでに声をかけたひとがいて「ヤァ、ヤァ」なんていうと、
ぼくたちのよそ者感が薄れて、和やかないい雰囲気がつくれるという
効能もあるので、まずはこういった事前の準備を丁寧にやります。

参加者E

古着屋を経営しています。高い駐車場代を払いたくないという理由で、
若者がぼくらのまちに来てくれなくなり、郊外に流れています。
なんとかそういう課題を解決したいのに、
力を合わせるべき3つの商店街が友好的になってくれません。
どうしたらこころが伝わりますか。

山崎

やはり、その方たちの話を聞きにいく。教えてもらう。
彼らに認められることを実行する。それに尽きると思います。
「これをやるとうまくいく」とは言えません。
おそらく全国のどこの商店街も同じ状況で、
逆にそういう喧嘩もできなくなったら、いよいよヤバい。

だから、まだ潜在的な力がある元気な商店街なんだ、と
発想を転換してみてはどうでしょう。これまでのぼくたちの事例でいうと、
初回WSはそのコミュニティの年長者何名かに
「若手をひとりづつ連れてきてください」とお願いし、
そこでは年長者のみなさんにしゃべってもらう。

そのあと「お忙しいでしょうから、2回目以降は
みなさんから推薦していただいた若者に実働してもらいますね」と
さりげなくバトンをつなぎ、その代わりに
大御所のみなさんにも毎回きちんと議事録報告をする。
そんな仕組みにしたことがありますね。これはなかなかうまくいきましたよ!

(……to be continued!)

休憩を挟んで第2部へ

休憩を挟んで第2部。「せっかくだから、隣り合わせたひとと、まずはにっこり笑顔で挨拶してみましょうか」と山崎さん。少しのあいだ、自己紹介タイム。さまざまな思いでこの場に足を運んだひとたちが、この一声を呼び水に、たった数分の間にどんどんつながっていく。

隣の部屋のトークをカフェのスクリーンでも見れるようにセッティングされた第2会場

当日参加者も多く、急遽、隣の部屋のトークをカフェのスクリーンでも見れるようにセッティングされた第2会場。こちらでも、質問や意見が活発に飛び交う。

まちの真ん中で古着屋を営む若き経営者

最後の質問は、まちの真ん中で古着屋を営む若き経営者から。まさに、全国でおなじ悩みを抱える店主が多いのではないだろうか。「答えはないけれど」と前置きした上での山崎さんのおはなしには、たくさんのヒントがあった。

information

map

山形まなび館・MONO SCHOOL

県下初の鉄筋コンンクリート学校建築として、昭和2年に建てられた「山形市立第一小学校」が、約80年間の小学校としての役目をまっとうし、平成22年4月に「ものづくり支援」「観光交流」「学び舎」の拠点として生まれ変わった。

住所:山形県山形市本町1-5-19

TEL:023-623-2285(管理事務室)

開館時間:9:00〜18:00(交流ルームは〜21:30)

休館日:月曜(祝の場合は翌日)および12月31日、1月1日

Web:http://www.y-manabikan.com/

profile

TAKAKI HAGIWARA 
萩原尚季

アートディレクター。1976年茨城県生まれ。2000年東北芸術工科大学を卒業後、同大学の大学院に進学。スウェーデンへの交換留学経験から2001年デザイン事務所「コロン」を立ち上げ、2010年「株式会社コロン」となる。同年、山形市立第一小学校旧校舎活用の委託業者に選定。4月「山形まなび館・MONO SCHOOL」としてリニューアルオープン、その運営方法で2012年度「グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。

Web:http://www.colon-graphic.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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