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山形 Part2
山形まなび館のなりたちについて。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.057

posted:2013.3.15  from:山形県山形市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:山口徹花

約80年間の小学校としての役目をまっとうした建物を、
「ものづくり支援」「観光交流」「学び舎」を基本コンセプトに
「山形まなび館・MONO SCHOOL」として新たに生まれ変わらせ、
仲間とともにその運営に携わった萩原尚季さん。
山崎さんと一緒に、その3年間の足跡をたどります。

現代に見合った学び舎の仕組みづくり。

山崎

窓の向こう側に見えてるのが新校舎ですか?

萩原

そうです。いまも約200人の小学生が学んでいます。
ぼくらが管理しているのは、コの字の旧校舎の中央棟のみです。
東棟は市が管理する資料館、西棟は市民が自由に使える交流ルームになっています。

山崎

2010年4月に萩原さんたちが事業を委託したときは、建物はもうこの状態で?

萩原

そうですね。きれいに改装された状態で、
ソフトの部分をまかされたということです。
「まなび館」という名称だけは先に決まっていて、
中心市街地の活性化、ものづくり支援、学び舎、の
3つの機能を兼ね備えた事業者ということで選定されました。

山崎

芸工大(*1)の卒業生が始めたというこの「穀雨カフェ」のあり方も、
とてもいいと思いました。まさに、あたらしいはたらき、生き方ですよね。

萩原

ありがとうございます。
カタチが不ぞろいで市場に流通しない野菜をリヤカーで売り歩いていた彼女たちを
支援できる場があればと生まれたカフェです。
夏季は野菜をカレーにして提供したり、決まった曜日に直売したりしています。
ここ、もとは職員室だったんですよ。

山崎

椅子や机も、以前の小学校のものですか?

萩原

それが、もともとここにあったものは改装の際に処分されてしまったので、
ぼくらが改めてコツコツとよその学校や公民館、旅館などから
集めてきたリサイクル品を使用しています。

山崎

今日のトークの会場になる部屋は、普段はどのように活用されているんですか?

萩原

あちらは観光案内室です。でも、もとが図書室なので、
山形市立図書館で廃棄される雑誌のバックナンバーなどを定期的にもらいうけて、
誰にでも読んでいただけるように架設しています。
普段は地元メーカーの家具を置かせてもらい、
ゆったりと時間を過ごしてもらえるよう工夫をしています。

山崎

大きな書店が少ないまちで、デザイン系の本や雑誌が
いろいろ読める場所があるのってうれしいですよね。

*1 東北芸術工科大学:2014年4月に国内初の「コミュニティデザイン学科」を新設すると発表(現在申請中)。山崎さんは、その学科長に就任の予定。

カフェ「穀雨」

カフェ「穀雨」。ゆったりとした時間が過ごせる。はじめはリヤカーで「まがりものの野菜」を売り歩いていた大学の後輩たちを支援する場として始まったのだそう。彼女たちも3月でここを卒業する。

カフェ「穀雨」の机と椅子

机や椅子は、小学校で使われていたものではなく、コロンのメンバーがこの場所のために足で集めてきたリサイクル品。「そういえば、小学校の椅子や机より背が高いもんね」と山崎さん。

ひとが集い、実のなる木のような存在に。

山崎

大学から山形ということは、ご出身は?

萩原

茨城県ですが、ちいさいころから親が転勤族で、
海外も含め、いろんなまちで育ってきました。

山崎

うちも転勤族だったからよくわかるな。
じぶんで「住むまち」を決められるのって大学生からですもんね。

萩原

そうですね。ようやく友だちもできて、
人生で初めて、愛着を感じたまちかもしれません。
そのクラスメートで「コロン」というデザイン事務所を立ち上げたんです。

山崎

そうだったんだ。

萩原

そばも温泉も日本酒も暮らしの環境も、すべてがカルチャーショックでしたね。
もちろん、いい意味で(笑)。
そんなよそ者ということで、ある方から
「萩原さんは風土にたとえると、『土のひと』ではなく『木のひと』だ」
と言われたことがあります。

山崎

うん。とまり木、でもありますね。

萩原

山崎さんやナガオカケンメイさんのようなひとが、
鳥や風のように外からおいしそうな種を運んでくれるのを受け入れて実らせて、
山形という土地に根づかせることができたらと。
市内の人材を活性させるということも大切でしょうが、
一方で外からの刺激や市内外、もっといえば県内外のひとが集まる場も必要で、
それがぼくらの役割なんじゃないかなあと、いまは考えています。

(……to be continued!)

廊下で販売される地元の果物

廊下では、農家さんが持ってきてくださる市場に出ない野菜や果物、近隣の方の手づくりジャムやパンなどが販売されている。

閲覧可能な数々の雑誌

山形市立図書館で定期的に廃棄される雑誌や書籍を、コロン的な視点でセレクトしてもらい受けてきた。「これだけそろってると、若いひとたちにとっては、めちゃくちゃありがたいですよね」と山崎さん。

information

map

山形まなび館・MONO SCHOOL

県下初の鉄筋コンンクリート学校建築として、昭和2年に建てられた「山形市立第一小学校」が、約80年間の小学校としての役目をまっとうし、平成22年4月に「ものづくり支援」「観光交流」「学び舎」の拠点として生まれ変わった。

住所:山形県山形市本町1-5-19

TEL:023-623-2285(管理事務室)

開館時間:9:00〜18:00(交流ルームは〜21:30)

休館日:月曜(祝の場合は翌日)および12月31日、1月1日

Web:http://www.y-manabikan.com/

profile

TAKAKI HAGIWARA 
萩原尚季

アートディレクター。1976年茨城県生まれ。2000年東北芸術工科大学を卒業後、同大学の大学院に進学。スウェーデンへの交換留学経験から2001年デザイン事務所「コロン」を立ち上げ、2010年「株式会社コロン」となる。同年、山形市立第一小学校旧校舎活用の委託業者に選定。4月「山形まなび館・MONO SCHOOL」としてリニューアルオープン、その運営方法で2012年度「グッドデザイン・ベスト100」を受賞した。

Web:http://www.colon-graphic.com/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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