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長野 Part4
企業でも組織でも個人でもない、
はたらきの場。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.055

posted:2013.3.1  from:長野県長野市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer profile

Maki Takahashi

高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:ただ(ゆかい)

はじまりは、2009年。長野市の善光寺門前町に位置する古い建築物のリノベーション。
建築家、編集者、デザイナーの7人でまちづくりを考える、「ボンクラ」という、
ちょっとふしぎな名前の異業種ユニットを訪ねました。

グループだけど、一枚岩じゃない。

山崎

この「KANEMATSU」を5年間とんでもなく安い賃料で借りて
運営することになったボンクラのメンバー7名は、
どうやって決まったんですか?
太田さんと広瀬さんとのあいだには、
親子ほどの歳の差があるということですけど……。

太田

飲み会に居合わせたメンバーです(笑)。
ぼくはその日、新潟にいたんですが、
宮本さんから「今晩飲むけど」という電話を受けて、
なんだかすぐ帰らなきゃいけない気がして飛んで戻ってきたという(笑)。

宮本

そうそう、小布施ミニマラソンの打ち上げでビアガーデンに行ったときだ。
厳密にはそれ以前にも何度かミーティングのようなことはやっていたんですけどね。

山崎

伝説の飲み会になってしまったわけだ(笑)。
で、そのビアガーデンに居合わせた7人が、
ボンクラというLLP(有限責任事業組合)を結成するんですね。

広瀬

そうです。ただの仲良しグループではなく、
きっちり継続していこうよという約束のような
ケジメのような意味合いでハンコを捺しました。
ボクが喜寿(77歳)になるまで、と契約書に記しています。

宮本

その延長として、いつかは
「楽しいことやって儲かるようになったらうれしいね」と。

山崎

なるほど。賃貸契約もまずは5年という制限があるわけですから、
LLPというのはいい選択でしたね。

宮本

それぞれが自立していながら、ときどきお互いに手伝いながらはたらける、
いい関係がつくれていると思います。
企業でも組織でも個人でもない、その中間のような「はたらきの場」。

広瀬

つまり、グループだけど、一枚岩じゃないんです。
しごとも、地域との関わりも、全員一丸ではなく、
プロジェクトごとに、できるひと、やりたいひとが
個別にフレキシブルに機能するようなイメージですね。

山崎

あるプロジェクトではリーダーを務めるひとが、ほかのプロジェクトでは
当日会場の椅子を並べるだけのこともある、ということですね。
でも、ボンクラ全体としては「関わってる」。

広瀬

これからはそういう時代だと思っています。

薪窯のピッツェリア「TIKU - 」

「KANEMATSU」のすぐご近所。仙台で修業後、長野にUターンした店主が、2012年の3月11日に開業した薪窯のピッツェリア「TIKU -- 」。

なんでもない古民家を改装した店内。席数は決して多くないので、お昼どきには行列もできる。仲介は、もちろん「MYROOM」の倉石智典さん。

「しふぉん菓恋」。2011年11月の開業

「TIKU -- 」のお隣に、仲良く並ぶのは「しふぉん菓恋」。2011年11月の開業。ふんわりやさしい味わいで、門前のケーキ屋さんとして親しまれている。

この「場」のポテンシャルをもっと生かして。

山崎

たとえば、田中陽明さんが春蒔プロジェクト(*1)を始めた当初も
そんなふうに始まったと記憶していて、同時代性を感じます。

宮本

そうなんです。ボンクラを始めようというタイミングで、
足を運んだBankARTのイベントで同じテーブルを囲んだのが、
春蒔プロジェクトの田中陽明さん、東京R不動産の馬場正尊さん、
紺屋2023プロジェクトの野田恒雄さんというスゴいメンバーだったんです。
とはいえ、当時のぼくらは、彼らのことを全然知らなかったんですけれど(笑)、
それをご縁にいろいろ相談にのってもらいました。

山崎

まさに、春蒔プロジェクトとR不動産を
足して2で割ったようなイメージですもんね。

太田

みなさんとはなしたことは、すべてが目からウロコでしたね。
それまでモヤモヤと考えていたことが確信に変わり、
「1秒でも早く長野に帰って、ぼくらも始めなくちゃ!」
という気持ちになりました。

山崎

地の利を考えれば、いまでは馬場さんのほうがうらやましがるかもしれませんね。
長野のこのまちを拠点に、東京とは違う仕組みがつくっていけたら、さらにいい。

太田

そうですね。ぼくらももう4年目ですから、
そろそろ次のステップを考えなくては、というタイミングです。

広瀬

5年後のことを考えないとね。
ここまでやってきて、実際にまちが動いたという手応えがあるので、
続けていきたいなあとは思っています。

宮本

「KANEMATSU」のポテンシャルは、こんなもんじゃないぞ、
と思っていますから(笑)。

太田

うん、ことしはさらにがんばりますよ!

山崎

たのしみです!

*1 春蒔プロジェクト:「co-lab」というクリエイターのシェアードコラボレーションスタジオを企画運営しながら、この集合体をクリエイションシンクタンクとし、企業や商品の主にデザインによるブランディング業務を請け、クリエイティブディレクションするプロジェクト。主宰・田中陽明。http://co-lab.jp/

セルフリノベーション中の物件

セルフリノベーション中の物件。落書きにひかれて声をかけてみたら、「上階に住んでます」という大学生の男の子が生活している部屋まで見せてくれた。

「KANEMATSU」の天井を支える太い梁

「KANEMATSU」の天井を支える太い梁。100年という長い年月の重みをずっしりと感じる。

山崎亮さんと広瀬毅さん

広瀬さんは、山崎さんが講師をつとめる「東京芸術学舎」のプログラム「ふるさとという最前線」の生徒さん。「喜寿を迎えるまで、このままたのしいことを続けていられるようにがんばりますよ」

information

map

KANEMATSU

長野県善光寺門前に位置する建物。倉庫として使われていた3つの蔵を、鉄骨や木造の平屋でつなぎ、現在は、ここをプロデュースするクリエイティブユニット「ボンクラ」のシェアオフィスのほか、カフェ、古本屋、不動産屋などが入居する。

住所:長野県長野市東町207-1

Web:http://bonnecura.naganoblog.jp/

profile

TAKESHI HIROSE 
広瀬 毅

1961年石川県金沢市生まれ。横浜国立大学工学部建築学科を卒業。長野で設計事務所に勤務の後1998年に広瀬毅|建築設計室を設立。長野県建築士会まちづくり委員長。2009年に「LLP.ボンクラ」を7人の仲間で立ち上げ、事務所を長野市善光寺門前の工場として使われた古い倉庫「KANEMATSU」に移転。ストックを生かす建築のあり方を模索している。また中山間地のコミュニティのこれからを考えるうちコミュニティ・デザインに出会う。東京芸術学舎の山崎亮氏の講座を受講し、さまざまな地域の人々と交流を深めている。代表作に『霊仙寺の家』(長野県建築文化賞最優秀賞/飯綱町)、『仙仁温泉岩の湯』(須坂市)。リノベーションでは『リプロ表参道』(長野市)、『日和カフェ・まちなみカントリープレスオフィス』(長野市)などがある。

Web:http://hirose-aa.com/

profile

NOBUYUKI OTA 
太田伸幸

1981年長野県上田市(旧丸子町)生まれ。美容室、建築関係、デザインプロダクション勤務の後、 2008年マンズデザイン主宰。広告のデザイン・アートディレクションの他、長野市内中学校への 美術授業ボランティア、地元の芸術家とともに地域と関わるアート活動企画・主催。2009年~シェアオフィス「KANEMATSU」協同運営。

Web:http://www.manz.jp/

profile

KEI MIYAMOTO 
宮本 圭

1970年長野県生まれ。工学院大学工学研究科建築学修了後、宮本忠長建築設計事務所勤務を経て、シーンデザイン一級建築士事務所を設立。建築とその周辺にあるものを面白く結びつけていくためのプロジェクトに多数携わる。ツリーハウスプロジェクト、絵馬プロジェクトなど。2009年に有限責任事業組合ボンクラを立ち上げ、善光寺門前にある素敵な古い建物で、建築家・編集者・デザイナーが集まり、単なる建築の再生だけでなく、地域やコミュニティの再生も視野に入れたプロジェクトカネマツを実践中。

Web:http://scenedesign.jp/

profile

RYO YAMAZAKI 
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。

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