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中崎町 Part3
潰すわけにはいかない茶屋なんです。

山崎亮 ローカルデザイン・スタディ
vol.037

posted:2012.10.19  from:大阪府大阪市北区中崎町  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。

writer's profile

Maki Takahashi
高橋マキ

たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/

credit

撮影:内藤貞保

公共的な役割を果たすカフェのための流儀を模索する「common cafe」プロデューサーの
山納洋さんと山崎亮さんの対談を、4回にわたってお届けします。

カフェを山に持ち込んだらどうだろう。

山崎

山納さんの取り組みのひとつである「六甲山カフェ」というプロジェクトも
なかなか興味深く、注目しています。

山納

始まりは、アウトドア情報センター所長の下城民夫さんと交わした
飲み屋のたわごとだったんですが、本気で取り組むことになってしまいました(笑)。

山崎

当時はまだ「山ガール」なんて存在しませんもんねえ。

山納

六甲山は、近代登山発祥の地とされる山で、
ぼくが子どものころから親しんだ場所でもあります。
山に登るのは中高年の愛好家かボーイスカウトの子どもたちか、
という時代に「山にカフェを持ち込んでみたらどうだろう」と。
2004年の9月に「六甲山カフェ」について話し合う場を設けました。
そこには、山崎さんもお越しいただいたのですが……。

山崎

そうでしたね。

山納

下城さん、山崎さんをはじめ、山と渓谷社の方々もいらっしゃったりして、
話がトントンと進み、11月には六甲山でイベントを開催することになるんです。
というか、やらざるを得なくなっていた(笑)。

山崎

はじめは単発のイベントだったわけですね。

山納

ええ。でも、六甲山でおいしいコーヒーが飲みたいね、
という思いを共有する仲間とともに、2005年の秋に3か月だけ
日曜カフェを開くようになります。
その後、メンバーのひとりが週末営業を続けていたんですが、
こんどは、軒先を借りていた茶屋の店主から
「おでんも手伝ってくれへんか」という打診があり、こちらからも
「ぼくらのやりたいコーヒーやケーキやワインも出していいですか?」
という提案を出して、2008年より本格的に
茶屋での「六甲山カフェ」がスタートしました。

山崎

なるほど。

山納

日本の近代登山やロッククライミングはここから始まったとも言われる場所で、
この大谷茶屋は昭和9年創業で、
茶屋の機能としてはおそらくそれよりずっと前からあるんです。
高齢化や継承者不足という理由で、簡単に潰すわけにはいかないんです。

「扇町Talkin’About」というイベントで「六甲山カフェ」について話し合った時の写真。中央奥に、山崎さんの姿も。(写真提供:山納洋)

大谷茶屋の軒先で営業していた時代の「六甲山カフェ」(2006-2007)。当時は4月から11月まで、毎週末に営業していた。この写真が撮られたのは11月末頃で、気温は2℃!(写真提供:山納洋)

大谷茶屋には、茶屋の建物とは別に、洞穴のようなスペースがある。六甲山カフェはここで毎週末に営業している。2008年撮影。(写真提供:山納洋)

2008年4月に、大谷茶屋での「六甲山カフェ」がスタートした。真ん中が大谷茶屋の大谷政子さん。六甲山カフェの船津智美さん、古家慶子さんと一緒に。(写真提供:山納洋)

「譲り店」ならではのムズカシさに直面。

山納

ただ、昔ながらの登山客のお客さんと、
カフェを目当てにやってくる新しいお客さんが入り交じる空間になるわけです。

山崎

ええ。

山納

そうすると「自分のやりたいカフェ」を強く主張するひと、
思いが強すぎるひとが店主を務めるのは、とても難しいんです。

山崎

そうですね。店主が「この音楽を聴いてくれ」というタイプのカフェだと困る。
「それよりこっちの山の話を聞いてくれ」と、
お客さんは思っているわけですからね。

山納

「譲り店」でうまくコミュニティを形成するには、
ものすごく高いスキルが求められるんだなあということを
ひしひしと実感しています。基本的に、コミュニティカフェには、
よりどころを求めるひとが集うわけですから、
山崎さんのことばを借りれば「傾聴する」という姿勢をもった店主でないと
成立しにくいんだな、と。

山崎

ぼくらのしごとと一緒ですね。
じぶんが組織づくりやプランニングの専門家だからといって
正解の手法をローカルに持ち込んでも受け入れられない。
そのまちならではのしきたりや流儀をしっかり聞いて知ったうえで、
まちのひとがやりたいことを引き出さなければ成り立ちません。
「譲り店」は、店舗というハードだけではなく、
その場でずっと醸成されてきた、えも言われぬ雰囲気だとか、ひとの関係だとか、
暗黙のルールだとか、そういうものを引き継ぐことですから、難しいと思います。
だからこそ、全国でそういう店を探して、しっかり伝えたいですね。

山納

タイミングとしてはまさに「今」ですね。
先に話題に挙げた「入船食堂」も、80歳近い店主が
どうにかこうにか続けている状況です。でも、まちや店が持っている物語を、
ソーシャルキャピタルとしてきっちり次の時代に遺したい。
もちろん、経営的に成り立たないものもあるので、本職を辞めない、
助成金を得るなどの手段をとれることも大事かもしれません。

山崎

本職を辞めないでこれだけのことをやっている山納さんのはたらき方が、
その最たるモデルですね。生活のための本業を持ちながら、
余暇活動に近いカタチで社会貢献的にじぶんが楽しいと感じることをやっていたら、
こういう状態になっていた。これって、すごくおもしろい生き方だと思います。

(……to be continued!)

「六甲山カフェ」の店内風景。2012年1月撮影。この日の店主は「どいぱん」土井明子さん。カウンターでは、山についての話で盛り上がることが多い。(写真提供:山納洋)

「譲り店の店主には、傾聴するという姿勢が求められるということがわかってきました」(山納)。

「長年かけて醸成された人間関係や雰囲気ごと受け継ぐ。これは、決して簡単なことではないですよね」(山崎)。

profile

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HIROSHI YAMANOU
山納 洋

1993年大阪ガス入社。神戸アートビレッッジセンター、扇町ミュージアムスクエア、メビック扇町、財団法人大阪21世紀協会での企画・プロデュース業務を歴任。2010年より大阪ガス近畿圏部において地域活性化、社会貢献事業に関わる。一方で、カフェ空間のシェア活動「common cafe」、「六甲山カフェ」、トークサロン企画「御堂筋Talkin’Aabout」などをプロデュースしている。著書に『common cafe ー人と人が出会う場のつくりかたー』『カフェという場のつくり方 自分らしい起業のススメ』がある。http://www.talkin-about.com/cafe/

profile

RYO YAMAZAKI
山崎 亮

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、共著に『まちの幸福論』(NHK出版)、『コミュニティデザインの仕事』(株式会社ブックエンド)、『幸せに向かうデザイン』(日経BP社)、編著に『つくること、つくらないこと』(学芸出版社)などがある。

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