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脱サラ同級生でスタート!
岩手県一関ブランドの
“切りもち”づくり

東北の田園 一関&平泉
これから始めるガイドブック
vol.015

posted:2018.11.7  from:岩手県一関市  genre:食・グルメ / 活性化と創生

PR 一関市

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県南の岩手県一関市と平泉町は、豊かな田園のまち。
東北有数の穀倉地帯で、ユニークな「もち食」文化も根づいてきた。
そんなまちの新しいガイドブックとなるような、コンテンツづくりが始まった。

writer profile

Kiyoko Hayashi

林貴代子

はやし・きよこ●宮崎県出身。旅・食・酒の分野を得意とするライター・イラストレーター。旅行会社でwebディレクターを担当後、フリーランスに転身。お酒好きが高じて、唎酒師の資格を取得。最近は野草・薬草にも興味あり。

credit

撮影:水野昭子

一ノ関駅から西に20分ほど車を走らせると、
「厳美渓」という国の名勝天然記念物に指定されている名勝が。
滝・奇岩・甌穴(おうけつ)と変化にとんだ景色が広がり、
訪れる人を魅了する観光スポット。
「空飛ぶだんご」という、対岸からロープ伝いにだんごが運ばれてくる
名物茶屋で知る人も多いのでは?

厳美渓の美しさもさることながら、この一帯は
夏は緑、秋は黄金の海となる、広大な田んぼが続く美しい稲作地帯。
田んぼの多くは〈こがねもち〉という品種の“もち米”が栽培されている。

こがねもちの田んぼ。

こがねもちの田んぼ。

特に厳美渓近くにある道の駅の裏手の田んぼは、
ほぼすべてがこがねもちの作付け地。
約47ヘクタール、おおよそ東京ドーム10個分にもなる
もち米の田んぼを管理するのは〈一関もちの里生産組合〉。
今年で組合創立4年目を迎えるこちらは、
地元の同級生である佐藤好基さん、阿部和利さんを中心に7名でスタートした組合だ。

「〈アイリスオーヤマ〉さんがもち事業を始めたいという話があって、
もち米の生産者を募集していたんです。
僕が4年前に脱サラして一関に戻ってきたときにその話をうけて、
じゃあ何人かでもち米つくるか! って同級生仲間に声をかけて
スタートさせたのが、ことの発端ですね。
佐藤も建設会社勤めだったんですが、家庭の事情が重なって退職して、
今は農業メインでやっているんです」(阿部さん)

小・中・高の同級生だったという阿部和利さん(左)、佐藤好基さん(右)。

小・中・高の同級生だったという阿部和利さん(左)、佐藤好基さん(右)。

この一帯は“もち米団地”と呼ばれており、
組合がスタートする前から、もち米の作付けエリアだった。
それまでは農家がそれぞれに生産し、出荷していたが、
その作業を集約し共同出荷をしようと、組合を発足し、舵をとることになった。

一関産のもち米をアイリスフーズに卸し、実際に切りもちがつくられるようになったが、
気になったのは、商品の原材料名に
「水稲もち米(国内産)」としか表記されないこと。

大企業にもなれば、安定的製造とリスク分散のため、
もち米はひとつの地域からだけでなく、日本各地から仕入れる。
また、もち米には〈こがねもち〉〈ひめのもち〉〈もち美人〉といったさまざまな種類があり、
それらをブレンドすれば「国内産」という表記になってしまうのだ。

「せっかく“もちの里・一関”といわれるエリアでつくった米なのに、
“一関”の名前が出ないんです。
市でも、厳美渓の道の駅の看板でも、“もちの里”ってPRしていて、
そのすぐそばで我々がもち米をつくっているのに、
それがどこにもわからない状態だったんです」(佐藤さん)

一関の農家がつくったもち米であるということが
目に見えてわかる商品にすることで、一関が“もちの里”であることのPRになり、
この先、もちをフックとした新たなアクションにも発展するのでは……
そう考えた佐藤さんと阿部さんは、ある行動に出た。

「“純一関産”の切りもちをつくれないかと、アイリスさんに交渉したんです。
いろいろな検討事項や、クリアしなければならない諸問題を協議した結果、
なんとか一関産米だけを用いた切りもちをつくってもらうことになりました」(佐藤さん)

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もちパックに詰まった、たくさんの思い

アイリスフーズの協力を得て、“純一関産”の切りもちをつくったが、
その後は自分たちで販売するという課題がある。

「まずは、我々でパッケージをつくって、
“純一関産”と銘打って売り出すことにしたんです」(阿部さん)

組合で制作したもちパック。

組合で制作したもちパック。

パッケージの制作には、以前一関で“地域おこし協力隊”として活動していた、
デザイナーの佐藤佑樹さんに協力してもらうことに。
デザインだけでなく、生産者の確認ができる管理体制など、
約1年をかけてさまざまな課題に取り組み、クリアしてきた。
もちろん原材料名には「水稲もち米(一関産)」の表記が。

できあがった箱の中には、一関産こがねもち100%の切りもちパックが2袋、
一関・平泉に伝わるもち文化や、もち料理が食べられる飲食店情報がまとまった「もちMAP」、
和洋中のおかずからスイーツまで、12のもちレシピが載った「おもちレシピ」が。

もちパックの中身。もちを食べるのが楽しくなるような情報に加え、一関のもち食文化や伝統を伝え、守ろうとする思いが伝わってくる。

もちパックの中身。もちを食べるのが楽しくなるような情報に加え、一関のもち食文化や伝統を伝え、守ろうとする思いが伝わってくる。

「パッケージをつくっているなかで、
一関市から『もちMAP』を入れてほしいという声があがったり、
アイリスさんのほうでも『おもちレシピ』の冊子を用意してくださって。
我々がつくったもち米が、アイリスさんの協力で切りもちという商品になって、
一関市とアイリスさんにも冊子提供で乗っかってもらい、
今回のもちパックができました。
そこから我々の活動が一関のPRになれば、
こんないいことはないと思うんです」(佐藤さん)

市内のホテルや旅館の土産物売り場を中心に、今年3月から販売開始したもちセット。
「ほかの人にも紹介するから分けてほしい」
「協力するよ」という声が各所からあがり、売り上げは順調だという。

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“一関産もち”という産地ブランドを目指して

「今、東北お土産パックの商品化を考えているんです。
宮城のひとめぼれ、秋田のあきたこまち、山形のつや姫、岩手の一関のもち。
この東北3県のブランド米と、我々のもちを、
ひとつのパッケージにしてしまおうと思っていて」(阿部さん)

郵便局で販売するギフトパックに、このパッケージを提案しているという阿部さん。
岩手の商品だけでなく、東北全体を応援する商品にしたいという。
また今後、もち米づくりにも一層こだわり、
減農薬、有機栽培など、消費者が求めているものに、と考えているのだとか。

“もちの里”と呼ばれる一関でも、近年はもちを食べる機会は減りつつある。
もちを食べるとなれば、前日から米を浸水し、蒸かし、つくという工程が必要。
今はそうしたひと手間をかける人が減っているからだという。

「もちは“手間を食べる”っていうからね。昔は手間を惜しんでも食べたいものだった。
でも、こういった切りもちにすることで、手軽に食べられる状態になれば、
一関でも食べる回数は増えていくと思うんです」(阿部さん)

2018年のこがねもち収穫の風景。(写真提供:一関もちの里生産組合)

2018年のこがねもち収穫の風景。(写真提供:一関もちの里生産組合)

かつての一関や平泉がそうであったように、
もっと日常にもちがあり、もちで祝い、もちで送り、もちで労う。
組合がスタートさせた取り組みは、
一関の伝統的な食文化を取り戻す、ひとつのきっかけやアイテムになりそうだ。

“新潟県魚沼産コシヒカリ”といった産地ブランド米があるように、
“岩手県一関産のもち”という産地ブランドもちが認知される日も、
そう遠くないかも知れない。

information

一関もちの里生産組合

住所:岩手県一関市萩荘字上宇津野64

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