colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

アパートのリノベーション事例集!
アトリエ、宿泊施設、スタジオ……
リノベで生まれ変わるアパートの可能性

ローカルの暮らしと移住
vol.044

posted:2022.12.14  from:大阪府大阪府大阪市此花区  genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。

日本全国で見られる空き家問題、
その約半数は賃貸用住宅だといわれています。
老朽化した古いアパートも例外ではなく、
リノベーションによって、新たな活用方法が見出されています。

本記事では、各エリアに眠っているアパートが
新たなカタチに生まれ変わった実例をまとめてご紹介します。
アパートは建物の特性上、部屋が小分けにされていることから
工事内容に小回りが効き、低予算でもアレンジできるのが
アパートリノベの特性といえるでしょう。

アパートリノベその①:〈大辻の家〉アトリエ

大阪府大阪市此花区で建築事務所〈NO ARCHITECTS〉を営む
西山広志さんは、シェアハウス、通称〈大辻の家〉に住んでいます。
その大辻の家と繋がったアパート4室のうち2室をセルフリノベーションした事例です。

2室の空き部屋は、押し入れ付きの6畳の座敷がふた間と、
板の間の台所がひと間のL型2DK。
かなり長いあいだ空き部屋だったので、廃墟同然で
カビ臭いどんよりした空気が流れていました。

そこで西山さんは、同居人であるパティシエの遠藤倫数さん、
アパレルデザイナーの黒瀬空見さんと共用できる、
ものをつくったり考えたりするためのアトリエとして活用できないか考えます。

玄関を入ってすぐ左手は遠藤さんが使用するキッチンやバーカウンター、
その奥は共有のリビングで、みんなでごはんを食べたり、まったりできるスペースを想定。
右の突き当りの窓際あたりが黒瀬さんのブランド〈ツクリバナシ〉のアトリエです。

床は、下地の角材で高さを揃えてベニヤ板を張り、フラットなワンルームに。
玄関横の壁は、ほかの壁と仕様を変えて大壁(柱を見せない構造)にしました。
トイレ脇の押し入れを解体してできた小さな窪みは
遠藤さんの自転車のカスタムスペースになりました。

この時点ではまだ塗装はされておらず完工には至っていなかったものの
自由なスペースを自分たちらしく楽しく暮らしていけるように
つくり変えていく、という思いのもとに工事を進めていきました。

記事はこちら:NO ARCHITECTS vol.8:シェアしたみんなが思うようにつくる家 後編

アパートリノベその②:〈キッチンスタジオ アオイエ〉キッチンスタジオ

埼玉県熊谷市にある設計事務所〈ハクワークス〉の白田和裕さんは
建築家でありながら空き家を使った施設の運営を行っています。

白田さんの地元である埼玉県草加市で、
〈リノベーションスクール@そうか〉というイベントに参加した際、
プロジェクトの題材は取り壊しを待つばかりだった
草加駅前にある2階建て、木造風呂無し賃貸アパートでした。
スクールに参加した10人で構成されたユニットで
近隣のエリアに変化をもたらす事業提案に取り組みました。

白田さんチームは、地域コミュニティが弱体化する草加で、
食を通じて人がつながる地域の食卓のような場所をコンセプトに
料理教室を軸とした、新たな場づくりとして
〈キッチンスタジオ アオイエ〉を提案。

一部の違法な部分を適法化したり、断熱性能や耐震性の
向上を行いつつ、予算を抑えるため塗装は自分たちでやるなど
知恵を絞りながら進めていきました。

アオイエの隣には再建築不可の土地があり、そこに畑をつくり
畑で採れた野菜を使って料理をすることも考えました。

完成後、地元の飲食店のシェフや店主が
料理教室の講師を務めることで、さらに人とまちとがつながっていきました。
SNSでグループができたり、開催を楽しみにしてくれる方々も増えていっているようです。

記事はこちら:草加市〈キッチンスタジオ アオイエ〉 人と人、人とまちがつながる ダイニングキッチン

次のページ
オーナーも住人も自らリノベをする「ロッコーハイツ」

Page 2

アパートリノベその③:〈ロッコーハイツ〉住居

千葉県松戸市〈MAD City〉が手がける〈ロッコーハイツ〉は、
昭和40年代に建てられた5階建てのエレベーターなし物件。
東武野田線の六実(むつみ)駅か、新京成線の本山駅からいずれも歩いて15~20分のところにあります。
空き室が目立つ5階は、和室のみに旧式の風呂釜という
リフォームしなければ借り手がつかないような状況でした。

まずは管理人室をセルフリノベで壁を壊して白く塗るところからスタート。
失敗しても都度やり直しながら約3か月かけて部屋を完成させました。

モデルルームの完成に伴い、住人の募集をかけても、
問い合わせが芳しくない状況が約2か月続いたときに、
トシさんは2番目に状態の悪い部屋のリノベーションに乗り出します。
工事のプロセスを〈ロッコーハイツ〉のWebやSNSで発信しても
なかなか問い合わせが来ないなか、
MAD City不動産をTVで取材してもらう機会があり、
〈ロッコーハイツ〉を紹介すると早速反響がありました。

リノベ経験者がいること、そしてリノベの自由度の高いことが功を奏し
ひとり目の入居者が決まったことをきっかけにぞくぞくと入居が決まっていきます。

床は根太を組むところからやり直してフローリングにしたり、
玄関にタイルを敷き詰めたり、トシさんにもサポートを受けながら
各入居者たちは自由にリノベーションを楽しんでいるようです。

記事はこちら:MAD City vol.5: オーナーも住人も自らリノベ。 進化し続ける「ロッコーハイツ」

アパートリノベその④:〈kumagusuku〉ホステル

京都市の委託により、「若手芸術家等の移住・制作・発表の場づくり」を
主目的とし活動を行う非営利組織〈HAPS〉は、美術予備校講師や
美大の非常勤講師を務めながら作家を続けてきた矢津吉隆さんから
アートを通して人と人がじっくり関われる宿〈kumagusuku〉をつくる構想を聞きました。

事業の実績がなかった矢津さんは、〈瀬戸内国際芸術祭2013〉に
誘われたのを機に、期間限定のプロジェクトとして、井上大輔さんとともに
セルフリノベーションでアートを鑑賞できる滞在施設を実現します。
想像以上の盛り上がりに〈kumagusuku〉の方向性に確信を抱きました。

京都に戻った矢津さんは物件探しに難航していましたが、
シェアスタジオを運営する、〈A.S.K. atelier shere kyoto〉の
小笹義朋さんがスポンサーとして関わってくれることになり状況は好転。

1階と2階を合わせて160平米以上ある木造の元アパートが見つかり
リノベーションはスタートしました。
3か月にわたり、構造の補強、新たな壁の制作、屋根を軽量化し葺き替え、
床張り、設備の新設など、進めていきました。
1階部分にはアートスペースをつくり、存在感を放つ3本の柱を設置。
漆作家の染谷聡さんが、神聖なものとして神社などに祀られる御柱に見立てたものだそう。
メイン階段には一段ごとに下地や漆塗りの工程を表現しました。

その後、晴れて内覧会、トークイベントを開催し無事にオープン。
定期的にアートの展示が行われ、映像や写真作品など、
館内で過ごしながら時間をかけて味わえる施設になりました。

記事はこちら:アートを通して、 人と人が関わる宿泊施設 KYOTO ART HOSTEL kumagusuku HAPS vol.5

築古物件でも、創意工夫次第で魅力的な空間に
印象を変えられるアパートリノベーション。

建物に再度命を吹き込み、付加価値を加え、
新たなローカルのストーリーが生まれていく。

歴史ある資源を有効活用することは、
サスティナブルな社会づくりへ貢献するための一歩です。

Feature  特集記事&おすすめ記事