連載
posted:2022.12.28 from:山口県萩市 genre:暮らしと移住 / 活性化と創生
PR 山口県
〈 この連載・企画は… 〉
ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。
writer profile
Mayo Hayashi
林 真世
はやし・まよ●福岡県出身。木工デザインや保育職、飲食関係などさまざまな職種を経験し、現在はフリーランスのライターとして活動中。東京から福岡へ帰郷し九州の魅力を発信したいとおもしろい人やモノを探しては、気づくとコーヒーブレイクばかりしている好奇心旺盛な1984年生まれ。実家で暮らす祖母との会話がなによりの栄養源。
移住への第一歩として、まずは地元の人たちに話を聞くのが近道だと考える。
でも実際には、都心で地方在住者や移住者に
どうやって出会えばいいかわからないという人もいるだろう。
先日、山口県萩市での移住に関するイベントが都内で開催された。
2022年10月2日(日)、場所は東京・有楽町の〈東京交通会館〉。
今年度4回目の開催となる〈YY! ターンカレッジ〉は、
山口県と密接につながりながら
新しい働き方・暮らし方・生き方を見つけた先輩たちなどと語り合えるイベントだ。
今回は「山口とつながる」part.1として、
「地域へのイリグチからシゴトまで」をテーマに開催、約40名の参加者が集まった。
ゲストは〈株式会社b.note〉の代表取締役である新井達夫さん、
〈萩市商工観光部 企業誘致推進課〉課長の大平憲二さん、
〈萩市総合政策部おいでませ、豊かな暮らし応援課〉課長補佐の
釼物(けんもつ)佳代子さん。
「地域の入口」となる拠点をつくる3名が、萩市内でどんな事業や取り組みを行っているか、
地域とのつながりや地域性を交えながら“萩の魅力”を探っていった。
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まずは釼物さんが萩市の地理や交通などの基本情報について解説した。
人口は約4万4千人(令和4年8月末時点)。
昭和30年をピークに進む人口減少の課題に対して、
市では部や課の垣根を超えて、少子化対策、移住者支援などに力を入れている。
そして令和4年4月に「萩に来てもらうきっかけになる情報を発信しよう」と
旧明倫小学校校舎の〈萩・明倫学舎〉に〈はぎポルト -暮らしの案内所-〉をオープンし、
情報発信や地域交流の場となっていることなどがスライドを使って説明された。
はぎポルトは、オープン前から市民と交流しながら一緒につくり上げていったという。
なかでも萩mapは、空き家やお困りごとを可視化したり、
観光ガイドブックには掲載されていないような萩のローカル&ディープな情報を紹介している。
特に力を入れているのが「協力者募集」。
「お祭りやるんだけど担い手がいない」といったときに、
市外の人に協力してもらえるような仕組みだ。
萩市に立ち寄った際にはぜひ、はぎポルト-暮らしの案内所-へ。
地域の声やリアルな情報に触れることができそうだ。
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次に、b.noteの代表取締役・新井達夫さんの事業について話題が移る。
山口県宇部市出身の新井さんは、
萩出身の藤田伝三郎氏を創始者とする藤田観光株式会社を経て、2009年にb.noteを設立。
現在は、萩市浜崎地区で伝統的建造物群保存地区に指定される建物4棟を活用し、
飲食、物販、宿泊、イベントスペースを運営する。
今年7月にはプロジェクトの中心的な施設として
〈舸子176(かこいちななろく)〉をオープンしたばかりだ。
舸子176は、b.noteが手がけた話題の空間だ。
舸子176の入る建物は、かつて海産物問屋として使われていた浜崎の藤井家町屋。
今では珍しい商家建築の特徴である蔀戸(しとみど)が残る、
築200年の歴史あるその建物を
レストラン・喫茶・ギャラリーからなるフラッグシップ拠点として再生した。
プロジェクト名を『浜崎二ツ櫂船旗(はまさきふたつがいせんき)』とし、
舸子176だけではなく、ギャラリーの〈舸子の蔵〉や、宿〈閂168〉、
貸しスペース〈廻69〉、日本茶や中国茶が味わえる茶屋〈百茶一芯〉、
月に1度のレストラン〈六気〉などさまざまに展開している。
新井さんの拠点は神奈川県鎌倉市。
萩には、まちの資産の使い方を見直し、まちの楽しさをかたちにするプランニング、
リノベーションのため7年以上も通っているという。
「萩の浜崎地区を中心に古い建物を改装して新しい空間づくりをしています。
閂168、廻69のように数字があるのは、浜崎地区の番地です。
萩に通って8年目になりますが、
最初の頃、空き家は多いのに御先祖様や仏壇などの問題で
なかなか売ってもらえなかったんです。手放されるのはほぼ崩れかけた家で……。
宿になった蔵は、屋根に穴が空いていて部屋の中に雨が降って大変でした(笑)」
地域の空き家を時間をかけてリノベーションしていった新井さん。
今では多種多様なアプローチで地域と密接に関わっている。
また、地域で暮らしている人や移住を考えている人のなかには、
つくったものを販売したり飲食業を始めたい人も少なからずいるだろう。
貸しスペースの廻69は、
これから地域でビジネスを始めたい人にちょうどいい実験の場となりそうだ。
1か月のレンタル料が、なんと“年齢×500円”という設定なのだ。
「え? 10歳なら10×500で5000円でひと月借りられるんですか?」
「80歳でも4万円。手が出ない価格じゃないしやりたい人は多そう」などと
会場では声が上がり、参加者も興味津々。
「1日単位でももちろん借りられてその場合は売り上げの10%。
今はちょうど、萩焼が好きすぎて10年間萩に通っている女性が
器とコーヒーのお店をやっています」(新井さん)
廻69の内装は、コロナ禍の時間を使って従業員でDIYをしてつくり込んだという。
新井さんは、「地域おこしをやろう」と思って事業に取り組んでいるのではなく、
あくまで結果としてそうなっているという。
「先日、この通りにあるお菓子屋さんのおばあさんが
『暖簾を変えたの。最近なんとなく人がたくさん歩いている気がするから』
と言っていたんです。そうやって、暖簾を新しいものに変えようという“気持ち”が、
まち全体を変えていくんですね」と新井さんは話す。
浜崎地区は歴史ある土地だが、萩市のなかで最も変わり始めているエリアだ。
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萩市商工観光部の大平さんは、萩市への企業誘致を積極的に行う。
「企業のサテライトオフィスや、
インターネット環境があれば仕事ができる方のためにコワーキングスペースをつくっています。
都心でのPRとしては、幕張メッセのIT関連の展示会で
萩市の企業誘致の取り組みを紹介した結果、
萩市まで視察に来られる企業も増えました」(大平さん)
そんなハード面の整備に加え、萩の魅力を高める活動にも大平さんは余念がない。
それが〈萩LOVE〉という、
萩が好きな仲間たちと「できることをやってみよう」と始めたフリースタイルの活動だ。
かつて船が格納され、
国指定史跡に認定されている〈旧萩藩御船倉〉でコンサートを開催したり、
県内のご飯のお供を楽しむ「MESHI TOMO FES」にも参加する。
さらには萩の高校生と一緒に萩LOVEのホームページを制作するほか、
他県の修学旅行の学生を萩の高校生が地域を案内する取り組みのサポートも行っている。
しかしながら本格的に移住となると、いったんは躊躇してしまうもの。
そこで注目されるのがひとまず仮で住んでみる「お試し暮らし」だ。
すでに1棟が運営されており、それに続くプロジェクトになる。
老朽化したJRの三見駅舎を撤去する計画が出ていた際に萩市が駅舎を譲り受け、
現在、第2棟のお試し暮らし住宅として整備中だ。
令和5年4月にオープンするため少し先ではあるが、
萩での暮らしを一度体験してみたいという人には心待ちのプロジェクトではないだろうか。
萩市は、地域の情報発信を担う場づくりや、古い建物やまち並みを残しながらも地域の発展、
人々の交流の輪を着実に広げている。
そして移住者にとって働きやすい環境の整備を行う。
仕事面や暮らしに疑問や不安があればいつでも萩市に相談してみよう。
次回のやまぐちYY! ターンカレッジは来年の2月、3月に開催予定。
気になる方はぜひ足を運んでみては?
information
やまぐち YY! ターンカレッジ
WEB:やまぐち YY! ターンカレッジ
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