colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

島での暮らし方と人生を考える。
先輩移住者は、
なぜ壱岐と対馬を選んだ?

ローカルの暮らしと移住
vol.019

posted:2018.1.9  from:長崎県壱岐市・対馬市  genre:暮らしと移住 / 活性化と創生

sponsored by 長崎県

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。

writer profile

Ikuko Hyodo

兵藤育子

ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。

photographer profile

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。東京での仕事を続けながら、移住先探しの旅に出る日々。自身のコロカルでの連載『暮らしを考える旅 わが家の移住について』『美味しいアルバム』では執筆も担当。

移住者だからできる仕事の生み出し方

11月3日~5日、2泊3日のスケジュールで開催された、対馬と壱岐の移住体験ツアー。
長崎県が主催するこのツアーは、一般的な観光ツアーと異なり、
暮らすという視点で仕事や居住の候補となるような場所を見学し、
先輩移住者ともコミュニケーションを取ることのできる貴重な機会だ。

今回参加した6名は、どちらの島も初めて訪れる人ばかり。
韓国人観光客が増加している対馬で起業の可能性を探りに来た人、
海外で暮らした経験があり、家族で島暮らしをすることに興味を持っている人、
在宅勤務をしながら二拠点居住をゆくゆくはしたいと考えている人など、
参加の動機もさまざまだ。

羽田空港から飛行機でまず向かったのが、対馬市。
九州と朝鮮半島に挟まれた対馬海峡に浮かぶこの島は、
韓国の釜山まで直線距離でわずか50キロ弱。
気候条件によっては、釜山の夜景を目視できる「国境の島」だ。
到着早々、対馬名物の〈対州そば〉と、
醤油、味噌などをベースにした甘辛の焼肉ダレに漬けこんだ豚肉〈とんちゃん丼〉を堪能すると、
南北に長い島をバスで1時間ほど北上。
移動にかかる時間や景色の変化からも、島の広さを実感することができる。

対州そばは、原種に近いかたちで残っている対馬特産のそば。とんちゃん丼とともに。

最初の企業訪問は、上県町佐須奈にある〈一般社団法人MIT(ミット)〉。
代表理事を務める宮城県仙台市出身の吉野元さんが、
移住者ならではの客観的な視点やこれまでのキャリアを生かして、
対馬の資源や魅力を“みつけ・いかし・つなぐ”ことを目的に、
幅広い事業を展開している。
たとえば対馬にしか生息していないツシマヤマネコが、田んぼでエサを取ったり、
子育てしていることに着目して、減農薬米を〈佐護ツシマヤマネコ米〉としてブランド化。
吉野さんの奥様の由紀子さんが、
パッケージデザインや関連グッズを製作している。

2013年6月に創業したこの会社は、メンバーのほとんどが移住者。
吉野さんが、プロジェクターを使って説明してくれたのだが、自己紹介のあとに登場したのが、
タチウオ、ハガツオ、アナゴ、サバなど
思わず生唾を飲み込んでしまうような刺盛り写真の数々……。

「長崎のなかでも、対馬の魚が一番おいしいと思います!」と力説する吉野さん。
知り合いの漁師からこうした魚を日々おすそ分けしてもらえるだけでなく、
吉野さん自身も小さな舟を所有しているそうで、
仕事をしながら朝夕に釣りを楽しむ暮らしがここでは可能なのだとか。

ほかにも霞が関で20年以上働いていたという事務方のプロや、
漁師になりたくて移住した人、
ツシマヤマネコが好きすぎて早期退職して移住した人など、ユニークな人材ばかり。

「たとえば“半漁半MIT”じゃないですけど、MITの仕事をしながら趣味の釣りをしたり、
絵を描いたり、農業をしたり、ヤマネコを愛でたり……。
せっかく移住したのだから、好きなことを好きなだけやって新しい働き方を発信するのが、
私たちの使命なのかなと思っています」

対馬の暮らしを満喫しているMITのみなさん。霞が関で働いていたという冨永健さん(左)、吉野元さん(中)、吉野由紀子さん(右)。

急増する韓国人観光客。ビジネスチャンス到来!?

続いて訪れたのは、
対馬最北の比田勝でオープンを控える(取材当時。2017年11月オープン)
〈ホテルDAEMADO(テマド)比田勝〉。
船でやってくる韓国人観光客の多くは、比田勝港国際ターミナルで下船することもあり、
この辺りはハングルの看板がかなり目につく。
当ホテルもそんな観光客の利用を見込んでつくられたそうで、
「DAEMADO」は韓国語で対馬を意味している。

「韓国人にとって対馬は、最も近い海外旅行先。
今まで比田勝には大型の宿泊施設がなく、日帰りする方が多かったのですが、
今後は楽しみ方も変わってくると思います」
と、総支配人の豊福誠一郎さん。
急増する来島者数に対して宿泊施設などをはじめとする受け皿は
まだまだ足りていないそうで、
比田勝は今後発展していくであろう注目のエリアであることがうかがえた。

ホテルDAEMADO比田勝の開業を機に福岡から移住してきた、総支配人の豊福誠一郎さん。島の人の優しさに日々助けられているそう。

その晩行われた交流会には、MITの吉野元さんと由紀子さん、
そして同じくMITの理事を務める漁師の細井尉佐義さんが参加。
17年前に移住してきたという細井さんは、吉野さんたちも一目置く先輩移住者で、
一本釣りで生計が立てられる漁場を探して、対馬に辿り着いた“Iターン漁師”。
移住当初は第一次産業が今ほど注目されていなかったため、
漁師を取り巻く環境は厳しかったこと、
自然環境保全と資源保護を第一に考えた持続可能な漁業を対馬で実践していること、
そして対馬の暮らしの魅力などを熱く語ってくれた。

交流会は対馬でとれた刺し身と韓国料理で。

翌日は、最も人口の多い厳原地区にある〈対馬バーガーKiYo〉を訪問。
Uターンして2009年に同店をオープンした新庄清孝さんは、
ご当地バーガーブームの波に乗るかたちで、対馬バーガーを考案。
対馬の特産であるひじきを練り込んだパテと、
プリプリのイカを甘めのソースで絡めたハンバーガーなのだが、
韓国人観光客がブログやSNSに投稿したことがきっかけで、
日本よりも先に韓国で注目されるように。今では島内に2店舗、釜山に1店舗、
そして福岡にも移動式店舗を展開するほどの人気ぶりで、
対馬におけるビジネスチャンスをこんなふうに語ってくれた。

甘辛の和風ソースが絶妙な対馬バーガー。

「ほかの離島と違うのは、150キロ圏内に釜山や福岡などの大都市があること。
これらのエリアを含めてビジネスを考えると、いろんなチャンスが見えてきますし、
対馬で生まれたものを使って外で勝負するという意味では、
すごくおもしろい場所だと思います」

彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)と豊玉姫命(とよたまひめのみこと)を祀り、竜宮伝説が残る和多都美神社。

和多都美神社の背後にそびえる烏帽子岳の展望台から、対馬のリアス式海岸を一望。

次のページ
ゲストハウスでのすてきな出会い

Page 2

釣り師と海女が営む、壱岐で話題のゲストハウスへ

厳原港からジェットフォイルに乗って、1時間ほどで壱岐本島の芦辺港へ。
『魏志倭人伝』や『日本書紀』にも登場する壱岐には、貴重な遺跡や古墳、
そして150を超える神社が点在している。

まずは全国的にも有名な壱岐牛を生産する〈野元牧場〉を見学することに。
野元牧場の野元勝博さんは、繁殖と肥育を早くから一貫して行い、
壱岐生まれ壱岐育ちのブランド牛を全国区にした功労者。
さらに畜産によって出る堆肥を、お米やアスパラガス栽培に利用することで
循環型の農畜産業を実践している。
畜産農家としては県内で最も早く法人化をしており、現在は約280頭の肥育牛と、
約90頭の繁殖牛を飼育。今後は雇用を増やして、トータル1000頭を目指しているそう。

愛情深く牛を育てる、野元牧場の野元勝博さんと奥様の芳枝さん。

続いて、壱岐焼酎の〈玄海酒造〉へ。
麦焼酎発祥の地といわれる壱岐には、現在7つの蔵があり、
玄海酒造は〈むぎ焼酎壱岐〉や〈壱岐スーパーゴールド〉などが看板商品。
製造工程を見学させてもらい、貴重な原酒も試飲。
米麹と大麦を1:2で使用するのが特徴で、かめや樽などに貯蔵することによって、
さまざまな味わいが生まれるそう。
若い従業員も多く、壱岐牛にしろ焼酎にしろ地元の特産品をつくっている誇りが感じられた。

玄海酒造にて、タンクの中で発酵している米麹に興味津々。

長崎県では2番目に大きな平野がある壱岐は、米どころでもある。

2日目の宿泊先は、〈みなとやゲストハウス〉。
壱岐出身の釣り師である大川漁志さんと、
岩手県陸前高田市出身で海女として移住した奥様の香菜さんが
2016年春にオープンさせた、壱岐でも話題のゲストハウスだ。

みやとやゲストハウスの大川漁志さんと香菜さん。

夕食は漁志さんが腕を奮ったエスニック。
新鮮な魚介類や野菜が並ぶ食卓を囲み、地域おこし協力隊として
大阪から家族6人で移住した石原一彦さんも参加して、
交流会はアットホームな雰囲気で行われた。
島でゲストハウスを営むことにはやはり憧れのイメージがあるようで、
参加者も興味津々。漁志さんを囲んで、
「どうしてゲストハウスを始めたの?」「やってみて一番大変なことは?」など、
さまざまな質問が。

「一番大変だったのは物件探し。地元出身の僕でも、
島中を1年半かけて探しました。
島は人間関係が大事だから、知り合いのいない状態で空き家探しをするのは
かなり大変だと思う。いきなり移住するのではなく、うちみたいな宿に滞在して、
その間、知り合いを増やしたり、仕事や住む場所を探したほうがうまくいく気がします」

と、今までいろんな移住者を見てきた漁志さんから具体的なアドバイスも。
一方の香菜さんは、東京でアパレル関係の仕事をしていたときに
東日本大震災が発生して、地元で被災した家族とともに親戚を頼って長崎へ一時避難。

「この先、何をしなかったら後悔するかなと考えたとき、
地元が海の近くでいずれはそういう環境で暮らしたかったので、
その時期を早めようと思ったんです」

大好きな素潜りができる仕事といえば海女さんだと思い、
長崎で働きながら探していたところ壱岐で募集があり、地域おこし協力隊として移住。
島で25年ぶりとなる海女の後継者として、5~9月の漁期は海に潜りウニを採っている。

オープンして2年も経っていないにもかかわらず、
全国からのリピーター率が高い、みなとや。
この晩も馴染みの宿泊客や地元の人が自然と集まってきて、
ツアー参加者といつの間にか仲良くなっていた。
「みんなが想像するようなスローライフは、ここにはないです(笑)。
気持ちと愛情がないと、ゲストハウスは続きませんよ」という漁志さんの本音が、
充実した島暮らしを物語っていた。

ゲストハウスの宿泊客や地元の人、ツアー参加者……、初対面とは思えないほど打ち解けていた。

オーナーも、ゲストも、近所の人もみんなでお見送りしてくれた。

次のページ
壱岐の仕事を見学

Page 3

移住成功の鍵となるのは、人との出会い

3日目は、医療分野で使われていた技術を野菜栽培に応用した
「アイメック栽培システム」で、
糖度の高いミディトマトを生産している直営農場〈しおかぜファーム〉や、
オリーブの葉をパウダー状にしてお茶やパンなどを商品化している〈壱岐オリーブ園〉、
原の辻遺跡公園の倉庫をサテライトオフィスやコワーキングスペース、
セミナースペースなどに改装した〈壱岐テレワークセンター〉を見学。
さまざまな働き方、暮らし方をイメージできる内容となった。

土を使わずに、特殊なフィルムで甘いトマトを栽培している、しおかぜファーム。

見晴らしのよい高台にオリーブ畑が広がる、壱岐オリーブ園。

IT関連の企業や事業者に注目されている、壱岐テレワークセンター。

自然がつくった愛嬌のある「猿岩」で記念撮影。

ツアーを終えた参加者からは、次のような感想が。

「対馬は北部を中心に見ましたが、
これからおもしろくなりそうな場所という印象を受けました。
欲をいえば、対馬でも若い人たちのコミュニティーとももう少し交流してみたかった」

「漠然としていた移住が具体的にイメージできました。
もっと見て回りたいところがあるので、次は母と一緒に来てみたい。
ツアーの前よりも、今のほうがワクワクしています」

どちらの島でも先輩移住者たちが言っていたのは、人との出会いの大切さ。
移住先として興味を持つ入り口はいろいろだが、実際にその場所へ足を運び、
魅力的な人たちと出会うことが大きな一歩になるのだと、実感できるツアーだった。

空港に子どもと一緒に見送りに来てくれた、先輩移住者。短いながらも、印象深い出会いがたくさんあった。

information

ながさき移住サポートセンター(長崎本部)

住所:長崎県長崎市尾上町3-1

TEL:095-894-3581(直通) 095-824-1111(内線3581~3583)

営業時間:9:00~17:00(月~金)※祝祭日、12/29~1/3を除く

Email:iju@pref.nagasaki.lg.jp

information

ながさき移住サポートセンター(東京窓口)

住所:東京都千代田区有楽町2-10-1

TEL:080-7735-3852(直通) 03-6273-4401(代表)

営業時間:10:00~18:00(火~日)※祝祭日、8/11~16、12/25~1/4を除く

Email:nagasaki@furusatokaiki.net

長崎移住支援公式ホームページ

http://nagasaki-iju.jp/

Feature  注目情報&特集記事「日本のクリエイティブ」

Recommend