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山を楽しむ「山活!」
十数年後の山の未来へ
想いを馳せて

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
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posted:2016.5.26  from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

春に欠かせない山の手入れとは?

エコビレッジづくりの可能性を探るために、この春、わたしは山を買った。
ここに家を建てたりビレッジ化したりするプランはまだまだ先の話になるが、
木が伐採された笹原のようなこの地をどのように活用していくのか、
いま計画を練る段階に入っている。
山での活動、略して「山活!」と勝手に命名し、
まず、わが山の隣の土地を所有し、山に詳しい日端義美さんに弟子入り(?)しつつ、
山の手入れや楽しみ方を教わることを始めている。

ゴールデンウィークは絶好の「山活!デー」だ。
日端さんは、わが山のとなりとともに、岩見沢の上幌地区にも山を持っている。
5月2日、この上幌の山で、日端さんが理事を務める〈みどりのおやゆび チュプ〉の
メンバーによる、春のこの時期に欠かせない山の整備が行われた。
〈みどりのおやゆび チュプ〉とは、以前この連載(第7回)で紹介した
岩見沢を中心に活動をしている〈自然エネルギーを考える会〉が、
NPO法人の申請をするにあたって新たにつけた名称で、
日端さんの山で自然の恵みを暮らしに還元する
さまざまな活動を行っている(ちなみにわたしもメンバー)。

まず行われたのが、山ブドウとコクワの棚上げ。枝を棚に広げるようにすると秋に実が収穫しやすくなる。

棚上げしていない状態のコクワ。蔓が絡みついたような状態になっている。コクワは、サルナシという木の愛称。実は素朴な甘みがあってキウイフルーツに似た味わいがする。

クルミなどの幹から出た新しい枝を剪定する。この枝より上部にある枝の生育を妨げないようにするための作業。

この日のメインの作業となったのはニセアカシアの駆除だ。
幼木のうちに根元から切り倒し、切り株に農薬を塗布するというもの。
ニセアカシアは北米原産のマメ科の木で、荒れ地でもよく育つことから、
緑化のために、明治以降に導入された。
ハチミツの蜜源になるなど役立つ面もあるようだが、
繁殖力が旺盛なため、生態系バランスが崩れてしまう恐れも指摘されており、
近年では駆除が必要だと考えられるようになっている。

たしかに日端さんの山を歩いてみると、草原のあちこちに
ニセアカシアの幼木が1〜2メートルくらい伸びているのを見つけることができた。
しかも根元から切り倒しても、脇から再び芽が出てくるようで、
簡単には駆除できないものだという。
外来種が多くなっている現状を考えると、木々を伐採した土地を放置しておくだけでは、
多様性を持つ本来の森の姿に戻るわけではないのだということを実感した。

草原となっているところにもニセアカシアの幼木が多数見つかった。数か月で1メートル以上も伸びるという。

息子も伐採のお手伝い。ニセアカシアには大きなトゲがあるので、刺さらないように注意しながら。

みんなで汗を流したあとは、この時期の山のお楽しみ!
フキ、ヨモギ、イラクサ、ニリンソウなど山菜採りに精を出した。
「今日の晩のおかずが一品これでできるねー」なんて、
おしゃべりしながら葉をつんでいく。
日端さんをはじめ会のメンバーのみなさんは、山菜にもとても詳しく、
これは胡麻和えにするといいよなど、食べ方もいろいろと教えてくれた。

ヨモギ。すりつぶして団子に入れるだけでなく、若芽は天ぷらにしてもおいしいそうだ。

可憐な白い花をつけるニリンソウ。こちらもおひたしなどで食べられる。

つんだ山菜を家に帰ってさっそく調理。写真はイラクサ。葉にトゲがあるが、ゆでて胡麻和えにしてみると、葉の味が濃くておいしい。

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どんな桜を植える…!?

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桜が満開になる、山の姿を思い描いて

5月8日にも日端さんの山を訪ねた。
「山の将来計画をたてるんなら、いま時期の桜を見ておいたほうがいい」
というお誘いがあったからだ。
日端さんの上幌地区の山に向かうと、緑の葉がようやく芽吹き始めた木々の
あいだをぬうように、桜があちこちで開花をしていた。
濃い色のピンクから、真っ白な花まであって、トーンが微妙に異なった桜は見飽きない。
公園などではない個人が所有する山で、これだけの種類の桜が咲いているなんて!

日端さんの山で。北海道の代表的な桜はエゾヤマザクラ。本州にもヤマザクラはあるが、北の厳しい寒さによりピンク色がひときわ鮮やかなのが特徴なのだそうだ。

日端さんは、桜を各地から持ってきて、さまざまな種類を育てている。

うっとり見とれているわたしに、日端さんはこう言った。
「開花時期にまず桜を見てさ、気に入った花が咲くものを選んで、
それを挿し木にしたり、タネを植えたりして、増やしたらいいんだよ」
挿し木にするのは6月下旬のことだという。
今年も日端さんは、桜の苗をつくる予定があるそうで、
「手伝ってくれたら苗を分けてあげてもいいよ」とニッコリと微笑んだ。

なんと!! わが山にどんな桜を植えようか、なんて考える日がくるとは!!!
テンションは急上昇して、いざ桜を見回ってみたのだが……、
あれもキレイ、これもキレイと思え、とても選べなかった。
東京生まれのわたしにとって桜と言えばソメイヨシノだが、
日端さんの山にはヤマザクラをはじめ、さまざまな種類の桜が植わっている。
1種類の桜が大量に咲いている状態を見慣れていたためか、
種類の多さに目移りし、ああ白いのもピンクのも、濃いピンクのも捨てがたいと、
気持ちは空回りするばかり……。

「日端さん〜、どれもよく見えてしまって選べません!」と正直に言ってみると、
真っ白い花が咲くリョクガクザクラとチシマザクラの系統という
淡いピンクの桜をすすめてくれた。
ポイントは、低木で花が目の前で楽しめること、
花時期がほかの桜に比べ遅いことだった。
「あったかい時期に花見したいでしょ」と、今度はニヤリと笑う日端さん。
確かに!

北海道の桜は、だいたいゴールデンウィークが始まった頃から見ごろを迎える。
ただ、この時期の花見はまだまだ寒い。
お弁当を広げて宴会をするんだったら、ゴールデンウィーク明けくらいがベスト。
花見のことを考えて桜の樹種を選ぶなんて。
花も団子も大事にする精神が、なんとも微笑ましい気持ちになった。

ピンク色の色素を持たないリョクガクザクラ(緑萼桜)。花びらが白く葉は鮮やかなグリーンをしていた。

日端さんがすすめてくれたリョクガクザクラは低木で下のほうから枝が広がっている。5月初旬はまだ三分咲き。これから花のピークを迎える。

わたしが買った山は、木が伐採されてしまったあとなので、
いまのところ、だだっ広い笹原だが、こうやって十数年後の未来を想像して
木を植えていくなんて、なんて夢のある話なのだろう。

少女時代、東京の世田谷に住んでいたわたしは、
大学通りに咲く桜並木を自転車で駆け抜けるのが何よりの楽しみだった。
桜のトンネルをくぐりながら、樹齢50年は過ぎているだろう大木を見て、
ここに木を植えた人のことに想いを馳せたことがある。
わたしが生まれるずっと以前、ここに小さな苗木を植えた人がいる。
その人は、苗木を植えるとき、木が成長し
美しい花をつける姿を思い描いていただろうか。
小さい苗木が、やがて空も覆うように育つことを想像したのだろうか。
あのとき急にセンチメンタルな気分になった、当時の自分のことを思い出した。

そしていま、自分が小さな桜の木を植える機会がめぐってくるとは!
山の未来を考えるってすてきだな〜。山っていいなぁ〜。
桜の木々の合間から見える里の景色を見ながら、しみじみと思った。

日端さんの山からは岩見沢の農村風景が見渡せる。木々の合間にポツポツと桜が咲いているのが北海道らしい春の風景だ。本州のソメイヨシノの並木道とはまた違った味わいがある。

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