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わくわくサンゴ石垣島(1)

UOCOLO
旬のさかな、地のさかな図鑑
vol.012

posted:2015.3.2   from:沖縄県石垣市  genre:食・グルメ / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  南北に長い日本列島。同じ魚でもおいしい時期も違えば料理法も違います。
季節の花を愛でるように旬の魚を食したいではありませんか。そこが肉食と違う魚食の醍醐味。
魚の食べ方や生態や漁法を漁師、魚屋さん、魚類学者、板前さんなど、魚のプロに教えてもらいます。

editor’s profile

Sei Endo

遠藤 成

えんどう・せい●神奈川県川崎市生まれ。出版社を退社後、ヨットで日本一周。漁業、海生生物の生態の面白さに目覚める。東京湾の環境、漁業、海運、港湾土木をテーマにしたエンターテインメントマガジン『TOKYO BAY A GO-GO!!』編集長。

credit

取材協力
八重山漁業協同組合 観賞用漁業部会 サンゴ養殖研究班
白保魚湧く海保全協議会
石垣島沿岸レジャー安全協議会
地域広報サポート石垣島
NPO法人沖縄エコツーリズム推進協議会

参考文献
『サンゴとサンゴ礁のはなし』(本川達雄/中央公論新社)
『生命40億年全史』(リチャード・フォーティ/早川書房)
『クジラとイルカ 海も地球も大好き』(office bridge/偕成社)

珊瑚礁は青なのか、白なのか問題。

3月5日はサンゴの日だそうです。
サンゴ……。

昨年秋、連日ニュースで報じられた
中国漁船による小笠原沖での大規模なサンゴ密漁。
200隻以上の漁船が並ぶ光景を見ると
心穏やかではいられなかったのではないでしょうか。

小笠原沖はどうやら落ち着いたようですが
現在、紛糾しているのが、普天間基地移転に伴う
名護市辺野古の米軍基地建設問題。

基地建設に反対する県知事が当選したにもかかわらず
政府は強引に大浦湾のボーリング調査を押し進め
県、基地建設反対派、自然保護派の住民と激しく揉めています。

小笠原と沖縄。
美しい南の島に緊張が走っていますが
どちらも社会問題の最前線に立っているのはサンゴです。

サンゴ……。

石のように固くて、植物のような形状でも
サンゴは動物……くらいは知っていても
どんな生き物なのか、あまり考えたことがありません。

そこで「UOCOLO シーズン2」のスタートは、
このサンゴを取り上げようと
日本を代表するサンゴ礁生態系スポットである
石垣島に向かいました。

八重山諸島の石垣島と西表島の間にある広大なサンゴ礁域は石西礁湖(せきせいしょうこ)と呼ばれ、わが国最大にして、サンゴの種類にも富んだ海域。

さて、南の島で見かけるサンゴと
宝石の材料になるサンゴでは種類が違うのはご存知の通り。

ざっくりいうと、宝石になるのは
水深100〜1000mと深い海に棲息する八放サンゴ。
一方、40mより浅い海に棲息して
珊瑚礁を形成する造礁サンゴは六放サンゴです。

造礁サンゴは1300ほどの種類がありますが
琉球列島には約400種が棲息しているそうで
これはグレートバリアリーフを上回るというからすごい。

今回取り上げるのは、この造礁サンゴ(以下、サンゴ)です。

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では、まずアンケートから。
サンゴ礁というと、どちらの曲を思い出しますか?
 A. ズー・ニー・ブーの『白いサンゴ礁』(1969年)
 B. 松田聖子の『青い珊瑚礁』(1980年)

おや、ズー・ニー・ブーをご存じない?
ほら、高倉健主演の映画『野生の証明』の主題歌
『戦士の休息』(1978年)を歌った
町田義人がボーカルだったグループです。
ますます分からぬ? ああ、昭和は遠くなりにけり。

全日空沖縄のキャンペーンソングにもなった
森高千里の『私の夏』(1993年)でも
白い珊瑚礁~♪と歌われていましたっけ。

はたして珊瑚礁は白なのでしょうか、
それとも青と表現すべきなのでしょうか。

(注)お気づきの方もあろうが『青い珊瑚礁』の歌詞では「青い」のは「風」であり、
「キラキラ光る」のが「珊瑚礁」。青い珊瑚礁~♫ とは歌っていません。

健康なサンゴは赤、青、緑とお花畑のようにカラフル。
かたちも枝状、テーブル状、キャベツ状などさまざまです。
でも死ぬと白くなり、やがてそこにカビのような藻が付着し
全体がくすんだ緑色に変色してしまいます。

サンゴの白化現象という言葉を聞いたことがあるでしょう。
ですから「白い珊瑚礁」は不吉以外の何ものでもありません。

しかし、優れたソングライターでもある森高さんのこと、
決~め~た~♪ と沖縄の海に行くこと元気に宣言しながらも
恋人と別れたばかりの、かさついた心のメタファーとして
「白い珊瑚礁」と表現したのかもしれません。

んなわけないよね。

ああ、それにしても、ふた昔も前の歌になるのかあ。
秋が終われば冬がくる。本当に早いわ。

20年前は無名のライターだった森高千里ファンクラブ会員番号002の友人は
のちに『東京タワー オカンとボクと、時々オトン』(2005年)
という大ベストセラーを書くことになります。

同じく会員番号003は、当時も今も無名ですが、
『まほろ駅前番外地』などを手がける
脚本家として活躍しています。

さて、サンゴ礁といえば、
エメラルドグリーンの海が思い浮かぶように
南の海は北の海に比べると、きわめて透明です。
この一番の原因は、南の海には栄養が少ないからです。

栄養が少ないから、植物プランクトンが大量には発生しない。
だから、それを食べる動物プランクトンも増えない。
というわけで、海水が濁らないのです。

餌となる動物プランクトンが少ないために
第6回で紹介したように
南の海で孵化したカツオの稚魚は
共食いをしながら成長します。

ところが、南の海でもサンゴ礁の周りには
実にたくさんの種類の生き物がいます。

『サンゴとサンゴ礁のはなし』(本川達雄・著)によると
サンゴ礁が海に占める面積の割合は1%にすぎませんが、
全海水魚のうちの3分の1以上の種が
このサンゴ礁域に棲んでいるというから驚きです。
(注)サンゴ礁域が海のどれくらいを占めるかは、0.2%という論文もある。

八重山におけるサンゴ礁に囲まれた浅い海=礁池(イノー)で一番多く漁獲される魚はブダイ(イラブチャー)25.4トン。ナンヨウブダイ(オオバチャー)21.2トン(ともに2013年)

なぜ、こんなに種類が豊富なのかというと
サンゴがエビや小魚などの餌になるからです。

しかもサンゴ礁の複雑な地形は小さな生き物にとって絶好の隠れ家であり
かつ、絶好の産卵場所でもあります。

小さな生き物がたくさんいれば
それらを狙う大きな生き物も集まってきます。
だからサンゴ礁は「海の熱帯雨林」と呼ばれるように
多様性に富んでいるのです。

ちょっと待てよ。
あの固いサンゴが餌にって? と思いますよね。

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砂浜に打ち上げられた白いサンゴは
死んだサンゴの骨格部分です。

骨には小さな穴がたくさんあいていて
生きているサンゴはこのひとつひとつの穴の中に
イソギンチャクによく似たサンゴの個体(ポリプ)が入っています。

このポリプをついばむ魚もいれば
年に一度産む卵や、ポリプが分泌する粘液を食べる生き物もいます。
サンゴは栄養の貴重な供給源。いわば「海のオアシス」なのです。

ポリプは海中に豊富に溶けている
炭酸カルシウムを利用して骨格をつくります。

骨格の成長スピードは種によってさまざまで
枝サンゴの代表格であるミドリイシは
1か月で1〜2cmほど伸びますが、
塊状のハマサンゴは年に数ミリ成長するかどうかです。

南の海で見かけるサンゴは
このポリプがたくさん集まっている群体の骨格です。

沖縄や小笠原などの海岸でみられる白い砂は、
このサンゴの骨格がくだけて細かくなり、
海岸に打ちよせられたものです。

死んだサンゴなどが堆積してできるのが石灰岩。
石垣島は珊瑚礁が隆起してできたので
島には大きな鍾乳洞があります。

石垣島鍾乳洞は全長3.2km。そのうちの660mが公開されている。ここの鍾乳石は3年で1mmほど成長するらしい。

サンゴから石灰岩ができ、それが溶け出して
ふたたび珊瑚礁のような造形物を作り上げるのですから
自然とは、まったくもって不思議なものです。

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サンゴは不滅の火の鳥か?

ひとつのサンゴの群体には、数百から
大きなものでは数万のポリプが集まっていますが、
実はこれ、すべてひとつの個体から分裂して増殖したクローンです。

サンゴは雌雄同体で、卵を産む有性生殖をするとともに
分裂して増殖する無性生殖もします。

ですから、最初の個体が死んでしまっても
分裂した、まったく同じDNAを持つクローンは生きています。
そのクローンが死んでも、そのまたクローンが生き続ける。

ということはですよ、みなさん!
サンゴに寿命はないともいえるのです。

ポリプは触手を伸ばして餌を捕まえます。夜のほうが活動は活発です。

すげえよ、永遠の命だよ……。
なんか、100年に一度自らを火で焼いて再生し続ける
手塚治虫の『火の鳥』(1954〜1986年)っぽくなってきたぞ!

ただし、絶滅しないかぎりです。

原生するサンゴが地球上に登場したのは約2億年前。
それ以前にも、やはり骨格を持つ古代サンゴがいましたが、
2億5100万年前の大量絶滅の際に
他の多くの生物と一緒に姿を消してしまいました。

生命の歴史は、大量絶滅の繰り返しの歴史でもあります。
古生代の「代」やカンブリア紀の「紀」は
大量絶滅などにより、繁栄していた生物の多くが死に絶え
新たな生物が出現しことを示す区分です。

多細胞生物が出現した約6億年前から現在までに
5回の大規模な大量絶滅がありました。

オルドビス紀末(約4億4400万年前)
三葉虫など全ての生物種の85%が絶滅

デボン紀後期(約3億7400万年前)
甲冑魚をはじめとした全ての生物種の82%が絶滅

ペルム紀末(約2億5100万年前)
地球の歴史上最大の大量絶滅。全生物種の95%が絶滅

三畳紀末(約1億9960万年前)
アンモナイトなど、全ての生物種の76%が絶滅

白亜紀末(約6550万年前)
恐竜など、全ての生物種の70%が絶滅

いやはや何億年前とかになると、まったく実感がわきません。

スケールの大きな昔話のようですが、実はそうでもなくて、
大量絶滅は現在進行中だというのが多くの生物学者の見解です。

これまでの大量絶滅の原因は、彗星や隕石などの衝突説、
地殻変動説、地磁気消滅説など、いろいろな説があります。

しかし、現在、大量絶滅を引き起こしているのは、
いうまでもなく人類による生物圏の破壊。
これから100年の間に、地球上の生物の半分の種が
絶滅するという予想もあるくらいです。

シェー!(約50年前)

柄にもなく真面目な話になってしまったので
今日はこの辺で、いったん休憩といたしましょう!

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