連載
posted:2019.6.3 from:青森県弘前市 genre:旅行 / 食・グルメ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
「和酒を楽しもうプロジェクト」もいよいよ7年目へ。
舞台をイエノミからソトノミに移し、“酒場推薦人”の方々が、日本各地の魅力的な「ローカル酒場」をご紹介します。
writer profile
Daiji Iwase
岩瀬大二
いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆
credit
撮影:西川幸治(STUDIO・2GRAM)
家族の時間、夫婦の時間。
家での日常の会話は大切ですが、酒場だからこそ話せること、深まることがある。
弘前の郷土料理酒場で、地元のご夫婦に教えてもらったのは、
酒と食がある場所で、じっくりと、でも軽やかに語り合う幸せでした。
今回の酒場は青森県弘前市。
青森は県東側の南部エリアと県西側の津軽エリアで
食文化、気質、言語も大きく違っていることが
時に真剣に、時にバラエティ番組などでもおもしろく紹介されています。
弘前は、津軽エリア。
歴史的にも進取の気性と郷土愛に熱い土地柄で、
地元の豊かで独特な食材を使った郷土料理があります。
今回のローカル酒場は、その津軽らしい郷土料理を味わえる店、
〈菊富士〉をご案内しましょう。
今回の酒場案内人は、弘前で「料理研究一家」というユニークな活動をしている
〈古川(こがわ)家〉のご夫妻、勝也(まさや)さんと恵里さん。
2012年にスタートした愛娘と3人で活動するこのユニットでは、
郷土料理を日常の楽しいテーブルのレシピにアレンジするなど、
新しい、今だからこそ楽しめるものにするという取り組みもされています。
Page 2
勝也さんは菊富士さんの料理をこう表現します。
「菊富士さんの料理はなつかしさや、家庭料理としてのうれしさがあります。
自分たちではつくれない。でも親しみがある。
だからお酒も流し込むというのではなく、じっくりと楽しめるんです」
さて、我々もどんな美味、美酒に出会えるのでしょうか。
まずは、乾杯。
普段、家ではチューハイやハイボールが定番と言うおふたり。
そこで、選んだのは「寶CRAFT」〈青森 中まで赤~いりんご〉。
青森県五所川原市で栽培された〈御所川原〉という品種のりんごを使ったチューハイですが
勝也さんはボトルを見るなりその御所川原に注目。
「このりんごはローカルでも貴重。
五所川原の直売所にでも行かないとなかなか出会えないんです」
ひと口飲んでの感想は
「爽やか。甘すぎないのがいいですね。いがめんちや貝焼きに合いそう」(恵里さん)
「うん、食中酒として楽しめるね。アルコール8%か。飲みごたえも十分」(勝也さん)
では、早速合いそうな郷土料理をオーダーしていきましょう。
まずは、いがめんち。
レシピを簡単に紹介すると、ミンチにしたイカを野菜などと混ぜて揚げるというもの。
しかしさすがに弘前のソウルフードと言われるだけあってこだわりはすごい。
勝也さんの解説にも熱が入ります。
「イカは基本ゲソを入れますが、ハラやミミを入れるものもあります。
玉ねぎ、にんじんなど中に入れる具や野菜の違い、粉の多め少なめ、かたさ、やわらかさ、
さらにはしょうゆかソースか。そして基本は揚げですが、焼きのパターンも」
各家庭、酒場、それぞれにこだわりのいがめんちがあるのだそう。
恵里さんがつくる古川家のいがめんちは
「うちは焼きです。玉ねぎと食感もいい刻みしょうがを入れ、粉は少なめ」
勝也さんによれば「ゆるく、とろける食感」
菊富士さんのいがめんちは、ゲソだけではなくハラなどいろいろな部位を
あらびきハンバーグのような、ごろごろと弾力のある歯ごたえに仕上げたもの。
「具に入っている枝豆がいい。しっかり身があって、プロの技という感じ」
と勝也さんはうなりながら、チューハイをゴクリ。
「郷土料理と郷土のりんご。やはり合うものなんですね」
おふたりはチューハイに合いそうな郷土料理を次々とオーダー。
でも、やはり料理研究一家。舌鼓の一方で、食べるたびにこんな会話。
勝也さん「ホタテとりんごのかき揚げか。このふたつの相性はやはりいいね」
恵里さん「この、こごみの胡麻和え。とてもいい甘めの味つけね」
勝也さん「こごみのサイズも大きめだ。甘さは胡麻だけで出しているのかな?」
途中から謎解きに真剣になり始めてしまい、
「いやぁ、どうしても、うちで再現するとしたら……みたいな話になっちゃう」
と勝也さんも苦笑。
そう、おふたりは普段から、あれこれと料理、食を語り合うのが大好き。
恵里さんによれば「お互いすごくしゃべります(笑)」
Page 3
そもそも共通の趣味であり特技が、「食」。
つくることも、食べることも、そこからなにかを考えることも好き。
実はお互いの親も食関係の仕事に従事。
勝也さんの実家は兼業農家で、お父さんは元板前、お母さんも料理好き、
恵里さんのお母さんは、菊富士さんからほど近い場所で飲食店を営んでいます。
蓄積してきた郷土料理との関係もあり、
また、食によっていろいろな幸せが広がることも理解されています。
そのふたりが話し合いながら食べてきた日常の食。
これを思い切って外に出してみようと決断したことから
「料理研究一家」の活動は始まりました。
チューハイをしみじみと飲みながら、
「子どもを育てる時に、食について体験し学んだこと。これを伝えたいなと」と、また笑顔。
父としての強さと、食が好きな人としての喜びが伝わってきます。
おふたりからはこんな言葉も。
「どんなことがあっても、日々暮らすうえでは、なにかを食べて生きていく」
それを楽しく、真剣に考える。だからふたりの会話は止まらない。
家でそれだけ会話しているなら酒場では何を話すのでしょうか。
「まずはいつもと同じような会話です」と笑う勝也さん。
「ただ家にいる時よりも、酒場だともっと深く話せますね」と恵里さん。
勝也さんも、「家にいる時より、頭が整理できます」
酒を切り上げて、試作を始めるということもなく、
プロの技を探りながら、話しを深め、広げることができる。
それが次のヒントにつながる。
おふたりにとって酒場は、食と会話に没頭できる場所なのです。
そのおふたりが「プロがつくる、親しみがある家庭料理」
だから落ち着く、という菊富士。
板垣重敏社長兼本店長に聞くと、まさにその通りの答えが。
「郷土料理の店ですが、そのことよりも
温かみのある家庭料理であることを大切にしています」
もちろん郷土料理酒場として地元の食材にはこだわります。
それを提供しながら、目指すのはお母さんの味。
「実際に母と一緒に考えながらやってきました。
ホタテとりんごのかき揚げもそういう中から生まれてきたんです。
うちは女性のお客様が多いのですが、落ち着くんでしょうね」
津軽の伝統料理というよりも、津軽で生きてきた女性の強さや温かさをこめた料理。
そこに東京などいろいろな場所で修業をしてきた板垣さんの感性や技を加えたのが
菊富士流の郷土料理酒場のスタイル。
カウンターもあり、そこではひとり飲みの女性も多くいらっしゃるのだとか。
「たまに、カウンターを挟んで一緒に乾杯。
私は休肝日ってなに? っていうぐらいお酒好きなので(笑)」
メニューには津軽の日本酒もずらりとオンリスト。
焼酎をはじめ、ほかの酒メニューも、ただ豊富なだけではなく
板垣さんの酒飲みとしてのセンスと欲が見えてきます。
さて、その後の料理もあれこれと分析しながら楽しむおふたり。
最後はこれも津軽では欠かせない家庭料理〈けの汁(しる)〉で締めましょう。
大根、にんじん、ごぼうなどの根菜や、山菜の塩漬け、
油揚げや高野豆腐(津軽ではしみ豆腐と呼ぶ)といった大豆の加工品を
いれたお味噌汁で締め、なのですが……
恵里さん「野菜の切り方はうちより大きいよね」
勝也さん「大豆系のもので気になるのがあるな。これなんだろう?」
始まってしまいました。そしてまた1杯。
郷土料理と相性抜群、地元のりんごでつくったチューハイが、
潤滑油になってしまったようです。
ご当地の素材を使用し、素材に合うベースアルコールにこだわり、
手間を惜しまない「ひとてま造り」製法で仕上げる地域限定のチューハイ
「寶CRAFT」シリーズ。
これまでも柑橘類をはじめいろいろなご当地系素材が登場。
そして今回登場するのは青森のりんご。
使用されるりんごは、青森県五所川原市で栽培された
爽やかな酸味と、果肉まで赤いことが特徴の品種〈御所川原〉。
勝也さんによれば「このりんごに目をつけたのがすごい」とのことで、
さらに、「御所川原ならではの爽やかな酸味で飲み飽きしません」
菊富士の板垣さんは
「樽貯蔵熟成焼酎を使うなど、いろいろ手間をかけた複雑さがありますね。
それを感じさせながらも爽やかさや酸味とのバランスがいい。
貝焼きやいがめんちとの相性がいいんですよ」
りんご王国青森から生まれたりんごのチューハイ。味はもちろん
「色もとってもきれい」とおふたりは中まで赤~いチューハイに見とれていました。
青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の東北6県限定販売。
information
菊富士
Feature 特集記事&おすすめ記事