連載
posted:2015.12.28 from:石川県金沢市 genre:食・グルメ / 買い物・お取り寄せ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
伝統を継承するということは、昔のものをそのまま受け継ぐだけではありません。
わたしたちの生活に合うよう工夫しながら、次世代に伝えることが、伝統を守ることにつながります。
酒造りの伝統を守りつつ次世代につなげる宝酒造と、
ローカルな素材を活かしてとっておきのつまみを提案するcolocalのタッグで
「きょうのイエノミ 旅するイエノミ」はじまりはじまり。
writer's profile
Yayoi Okazaki
岡崎弥生
おかざき・やよい●兵庫県、大阪府、神奈川県、福岡県、東京都(ちょっとだけ愛知県)と移り住み、現在は神奈川県藤沢市在住のローカルライター。最近めっきりイエノミ派となった夫のために、おつまみ作りに励む主婦でもある。
credit
撮影:津留崎徹花
仕事を終えたご褒美はおいしいお酒とおつまみ。
リラックスしたいなら、きょうはイエノミにしませんか。
神奈川県・横須賀市在住の料理研究家・飛田和緒さんに教わった、
手軽で簡単、しかもちょっとした旅気分が味わえる
日本各地のおいしいものと三浦半島の旬の食材を使った、
和酒に合うおつまみを季節感たっぷりにご紹介していきます。
いよいよ冬本番、温かい鍋料理が恋しい季節です。
料理研究家・飛田和緒さんの家でも鍋は年末年始の定番メニュー。
おせち用に出回り始めた鴨ロースを使ったクレソン鍋に
水煮缶を使った手軽な豆のマリネサラダ
いまだけのお楽しみ、金沢の〈かぶらずし〉を並べてみると
ちょっと華やいだ雰囲気のイエノミに早変わり。
シャンパングラスのスパークリング清酒と合わせると
お正月のおもてなしにも良さそうですよ。
「うん、ホントにうれしい、ひさしぶりだもの」
きょうの飛田さんがテンション高めなのも
大のお気に入り、金沢・髙木糀商店のかぶらずしが届いたから。
「これ、12月と1月だけしか販売していないのよね」
なにかとあわただしい時期だけに、取り寄せる間合いが難しい。
しかも、そう数多くはつくっていないので
タイミングを逃すと、また1年待つことになるのです。
「もう最初に食べたときから、どんぴしゃって感じで」
世の中にこんなおいしいものがあるんだ!
そう感動した初めての出会いは10年前に訪れた金沢だとか。
以来、ずっと食べられる時期を心待ちにするという
飛田さん好みのかぶらずしってどんな味わいなんでしょうか。
金沢ではおせち料理でもあるという、かぶらずしは
滋賀のふなずしと同様、伝統的な“熟れずし”の一種です。
切り分けてみると、カブの間からブリの切り身がちらり。
ひとくちいただくと、うーん、ふかふか、しゃくしゃく!
上品で柔らかな甘みに、とろりとしたブリの塩気がほどよいアクセント。
とびきり上等で分厚い千枚漬け×ブリという感じ?
「そうでしょ、驚くほど繊細なお味なの」
いつもあっというまにひとりで1個食べちゃうと、飛田さん。
その気持ちも、これならよくわかる。
特に日本酒のアテにすると、さすが米麹の発酵食品、抜群の相性ですね。
このかぶらずしをつくっている髙木糀商店は
天保元年創業の老舗で、金沢の〈ひがし茶屋街〉のすぐ近く。
ちょうどかぶらずしの仕込みが終わった時期に訪れた飛田さん
「香箱ガニ目当てで行った旅だったのに」
味見させてもらったかぶらずしのおいしさの方が衝撃だったとか。
「桶を片づける、冬仕舞いの光景も見せていただいて」
作業場と住まいが一体になった江戸末期築の町家や道具など
古いモノを大事に手入れして使っている様子が
ものすごく飛田さんの印象に残っているそうです。
電話をしてみると、お店はまさに忙しさの真っただ中。
お正月のかぶらずし用に糀を買い求める人も多く
12月になるとスーパーにも専用の糀売り場ができるんだとか。
「私の実家でも、祖母や母が必ずつくっていましたね。
でも今年は、まだ冷え込みがいまひとつ弱くて
さあ、かぶらずしをつくろうという感じにはならないかも」
そう笑いながら、若奥さんの髙木真利子さんが応対してくれました。
いま髙木糀商店で販売している、かぶらずしも
もともとは、お世話になった方へ御歳暮として配っていたもの。
それを10年前に商品化したのが8代目の若旦那・竜さん。
廃業も仕方ないとご両親が考えていた家業をあえて継ぎ
味噌も木桶で仕込むなど、こだわりを持つご主人だけに
糀を使った郷土料理・かぶらずしへの思いは人一倍深いようです。
というのも、かぶらずしは家ごとに味わいがそれぞれ違う。
「塩加減やブリの厚さでも、全然違ってくるみたいですよ」
だから髙木家では、樽を開けるごとに必ずみんなで試食。
小さなお子さんふたりも、おいしい、おいしいと食べるそうです。
「私自身は小さい頃、そうは思えなかったのに」
ウチのはクセがなくて食べやすいんでしょうねと、真利子さん。
その秘密が、かぶらずし専用に米糀からつくった自家製甘酒。
カブも去年から加賀野菜で定評ある農家さんのものに切り替えたとか。
ブリとカブを別々に塩漬けし、それを合わせて甘酒でまた漬ける。
完成まで2か月弱もの時間をかけて、ゆっくりじっくりおいしくなるのです。
それにしても、こんなに手間がかかるものをつくる家が
いまでも多いという土地柄にあらためてびっくり。
なんでも金沢には“鰤起こし”という言葉があって
11月から12月にかけて、雷とともにあられまじりの冷たい雨がふる。
それが冬に入る前の合図だと、真利子さんに教えてもらいましたが
その言葉からもブリへの格別な思いが伝わってきます。
寒くなるほどにおいしくなる日本海のブリと畑のカブ
このふたつを合わせて発酵させるとは、なんと斬新な発想でしょうか。
先人の知恵と工夫を、金沢の人たちは大事に守り伝えている。
糀は、そのおいしさに欠かせない存在なんですね。
〈髙木糀商店〉(石川県/金沢市)のかぶらずし
●お取り寄せデータ
住所:石川県金沢市東山1-9-3
電話:076-252-7461
FAX:076-251-5501
営業時間:9:00~19:00 無休
Webサイト:http://takagikouji.com/
※かぶらずしは1個1500円(税抜)。注文は電話かファックスで。
※12月~1月の期間限定商品で、数に限りがあるのでご注意を。
寒くなってくると、飛田さんはそわそわし始めます。
「そろそろ鴨肉が近所の店に入荷するのよ」
鴨ロースの塊を買ったら、まずつくるのがこの鍋。
定番の鴨×ねぎにクレソンをどっさり加えるのが飛田さん流。
どうやらクレソンは、小さい頃の想い出の味だそうです。
「ウチの父って山歩きが好きな人なので」
サンショウウオを探そうなんていいながら山に連れて行かれ
丹沢や北アルプスなどの沢で、クレソンを摘んだのだとか。
「火を通すともりもり食べられるし、自然と大好きになったの」
なるほど、意外な組み合わせにも思えますが
いただいてみると、この鴨とクレソンが本当に合う。
しかも鴨のダシがよく出たおつゆがとびっきりおいしい!
コツとしては、鴨とネギを前もってさっと焼いておくこと。
またクレソンは葉と茎に分けておくこと。
「葉はしゃぶしゃぶの要領で食べるといいわよ」
簡単なのにおいしいし、ご馳走感もある。
飛田さんでなくとも、鴨のシーズンが待ち遠しくなりますよ。
鴨とクレソン鍋
●つくりかた
1 クレソンは葉と茎に分け、食べやすい大きさに切る。
2 白ネギは長さを揃えて切る。
3 鴨ロースを薄切りにして、塩、胡椒をふる。
4 2と3をグリルパンで焼き目をつける。
5 土鍋に昆布出汁を入れ、薄口醤油と塩少々でうどん出汁程度に味つけする。
6 4と1の茎部分を5に入れて煮る。
7 食べる直前に1の葉部分を入れてさっと煮る。
※グリルパンがなければフライパンで。いったん焼くことでネギと鴨が香ばしくなる。
※昆布水(ポットに水と昆布を入れて冷蔵保存)をつくっておけば手軽にできる。
※鴨挽肉を団子状にして入れるとさらにおいしくいただける。
飛田さんは毎日食べたいくらいの豆好きですが
ご主人はなぜか“豆の食感”がダメなんだとか。
ただしペーストにしたものや、カレーの具材としてなら大丈夫なので
手軽に使える豆の水煮缶は飛田家の常備品だそうです。
この水煮缶とツナ缶を利用したサラダは、本当に簡単。
きょうはヒヨコ豆とキドニービーンズを使いましたが
彩りのきれいなミックス豆や大豆などお好きな豆でどうぞ。
注意すべき点は、ただひとつ。
あらかじめ、豆やツナの塩加減を確認しておいてくださいね。
お好みで、細かく切ったハムやピクルスを入れたり
ドレッシングとあえてみるのもおもしろい。
豆料理は面倒だし、あまり好きじゃないと思っている人ほど
ぜひ試してほしい、アレンジ自在でハマる常備菜です。
豆のマリネサラダ
●つくりかた
1 ヒヨコ豆、キドニービーンズの水煮缶をザルで水切りする。
2 紫玉ねぎを細かくみじん切りにする。
3 1と2をボウルで合わせ、ツナ缶を丸ごと加える。
4 3に塩、胡椒、オリーブオイルにワインビネガー少々を加える。
5 4をよくなじませる。
※マヨネーズやヨーグルト、香菜のみじん切りを加えてもおいしい。
※ツナ缶は水煮でもオイル煮でもOK。日持ちは冷蔵保存で約3日。
美しいブルーのボトルですっかりおなじみ
スパークリング清酒「澪」は、お米と米麹だけでつくられた和酒。
おせち料理はもちろん、どんなお料理とも相性が良く
飲み心地も軽くさわやかなので、特に女性にはお薦めです。
今度のお正月は、おいしいおつまみとシャンパングラスを用意して
おめでたい気分で「澪」を楽しんでみませんか。
日本の伝統行事は、やはり和酒で祝いたいものですね。
○問合せ先/宝酒造株式会社
お客様相談室
TEL 075-241-5111(平日9:00~17:00)
profile
KAZUWO HIDA
飛田和緒
1964年東京生まれ。8年前からレーシングドライバーの夫、娘の花之子ちゃん、愛猫のクロと南葉山で暮らす。東京時代の便利な生活から一変し、早起きが習慣に。ご主人が仕事で留守がちなため、仕事はもちろん、買い出しやお弁当作りにと忙しい日々を過ごしている。毎日の食卓で楽しめる普段着の料理が得意。高校3年間を長野で暮らした経験もあり。
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