連載
posted:2017.6.1 from:高知県高知市 genre:食・グルメ / 活性化と創生
sponsored
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつの商店街(地域)をねり歩きながら、パンと具材を集めて勝手にサンドイッチを作る旅。
そこでしか食べられないオリジナルなサンド、果たしてどんなものができるのか?
writer profile
Kozakai Maruko
小堺丸子
こざかい・まるこ●東京都出身。読みものサイト「デイリーポータルZ」ライター。江戸っ子ぽいとよく言われますが新潟と茨城のハーフです。好きなものは犬と酸っぱいもの全般。それと、地元の人に頼って穴場を聞きながら周る旅が好きで上記サイトでレポートしたりしています。
credit / note
撮影:水野昭子
「商店街サンド」とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチを作ってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。
今回やってきたのは高知県。
高知といえばご存知、坂本龍馬や中岡慎太郎など、
幕末に活躍した英雄をたくさん生み出したことで有名である。
今年で大政奉還から150年を迎えるのを機に
高知県内23か所の施設で貴重な歴史資料が見られる
〈志国高知 幕末維新博〉も開催されている。
今回はそんな高知県のなかでも一番の賑わいをみせる
高知市にやってきた。
幕末の志士ゆかりの地が多くあるのをはじめ、
景勝地である桂浜、江戸時代そのままの姿を伝える高知城、
〈日本がっかり名所〉のひとつとして名高いはりまや橋など
たくさんの見どころが詰まっている。
高知駅からもほど近くにあるはりまや橋からスタートした。
高知県民謡の〈よさこい節〉の歌詞にも出てくるというが、
なるほど、、言われないと通り過ぎてしまいそうなくらい控えめな橋である。
しかしそこから見える大通りには、かわいらしい路面電車がひっきりなしに走り、
風情があってなかなかいい。
はりまや橋のすぐ近くには帯屋町商店街という大きい商店街があるのだけれど、
テイクアウトできるお店はあまりないとのこと。
そこで、追手筋で開かれる〈日曜市〉をメインに歩くことにした。
日曜市は、なんと300年以上も続いているという歴史ある街路市だ。
大通りから高知城へ向けて約1キロも続き、
あちこちからやってきたお店が約410店も連なる。
終日路上で開かれる市としては日本一の規模だそう。
うわ~っと思わず声がもれる。
これだけお店が並ぶのだもの、食材が豊富だ!
いや逆か。
海と山、川と自然に恵まれている高知だからこそ
これだけ多くのお店が出せるのだ。
野菜や果物はツヤツヤと輝き、高知ならではの
食べ物や飲み物が並んでいた。
黄色、赤、緑。
まっすぐに、清々しいほどの鮮やかな色の食材が並ぶ。
見ているだけで「うまい!」と叫びそうになるほど美しい。
これはヘルシーなサンドイッチになりそうな予感である。
両側に並ぶお店は、その場で飲食できるものも多くて
まるでお祭りのようだ。
お店の人たちもよく話かけてくれるから、
ついつい手を伸ばしてつまんでしまう。
そう言えば高知の人は相手の懐に入るのがうまい印象がある。
初対面でもグッと距離が近いというか、
だれが相手であっても本音で話してくれるような、そういう感じだ。
そこでハッと気づく。
高知県は何年か前より〈ひとつの大家族〉を
スローガンにしているのだ。
高知にかかわる人・興味のある人はみんな家族であり
〈高知家〉の一員であるというわけだ。
正直、現地に来るまでピンとこなかったのだけど、
この街路市を体験したら少しその意味がわかってきた。
ちょっとしたご縁があればすぐ打ち解ける、
そんな気質を持っているように感じられた。
さてさて、本題のサンドづくりだ。
横山さんと何にしようか相談しながらかき集めた。
すると、これまでにないほどの早さで食材が集まる集まる!
Page 2
まずはパンをゲット。
生クリーム入りのこちらの食パンは、
いつもすぐに売り切れてしまうという人気商品で
実際、このあと1時間後には完売していた。
ふんわりとやわらかく、甘い香りがただよう。
早起きしてよかった!
タアサイは、育てやすく、実はどこでもつくれるそうだが、
特に嶺北のように標高が高く寒暖差が激しいところで
作られたものはよりおいしいらしい。
一見固そうだけど、レタスのような感覚で
そのままかじって食べられるそうだ。
横山さんが言うには「日曜市にきたら芋天はマスト」だそうだ。
こういった街路市やスーパーでも売られていて、
高知県のソウルフードとも言われている。
要はさつまいもの天ぷらなのだけど、
東京で見るものよりも衣が分厚くてコロコロしてる。
それにしても高知、芋の料理はやはり多いなあ。
高知といえば太平洋でとれる海産物も豊富。
どうしてもカツオのイメージが強いけれど、
ちりめんじゃこもたくさん収穫される。
なかでも人気なのは「釜揚げしらす」。
釜ゆでしたあと少しだけ天日干しにしたものなので水分が程よく、
ふわふわでプリプリ食感。
高知ではこの釜揚げしらすをご飯に乗せ、
さらにゆず酢をかけて食べるそうだ。
高知はショウガやミョウガの生産が国内で圧倒的に多い、
薬味大国でもある。
日曜市にもたくさん並んでいて、
どれも東京の半分から3分の1のお値段で手に入る。
もし高知に旅をすることあれば、自分へのお土産として
買って帰るのもいいかもしれない。
さて、そんな薬味をサンドに入れるためにはアレが必要だ。
包丁である。
実は刃物も高知の特産品のひとつだ。
土佐打刃物(とさうちはもの)と呼ばれ、400年以上の歴史がある。
昔から多くの木材を全国に搬出し、林業が盛んな高知。
木を伐採するために丈夫で質のいい刃物が必要とされたことが
ルーツなのだとか。
はらんぼはカツオのなかでも一番脂がのっている部位だそうだ。
一尾につきひと切れしかとれないのでとても貴重。
見つけた真空パック状のものは、塩や黒胡椒、タレで味つけされていて、
そのまま食べることができる。
これ絶対お酒に合うやつだ。200円とお買い得なのもうれしい。
日曜市のゴール地点にある高知城の広場でサンドづくりをすることにした。
今回はいつにもなく野菜が豊富で彩り豊かでうれしい。
メインとなるはらんぼと芋天が地味に感じてしまうほどである。
Page 3
見た目への反省は大いにありつつも、
栄養満点のオリジナルサンドができた。
今回のポイントは、主役級のカツオや芋天を凌ぐほどの
個性豊かな食材が多いところだ。
まるで坂本龍馬や中岡慎太郎と時代を共にした
武市半平太や岩崎弥太郎、ジョン万次郎らのようじゃないか。
(筆者の勝手なイメージです)
あまりうまく重ねられなかったため一気に
頬張ることはままならなかった。
しかし爆弾おにぎりの要領で、どこをかじってもおいしいサンドに。
ひとくちめ。
度を超えるくらい衣がサクサクの芋天は、中はしっとりとしてとても甘く、
それを濃厚で瑞々しく、歯切れのよいタアサイが受け止める。うまい!
ふたくちめ。
はらんぼの、噛むほどに広がっていく燻されたような渋い塩味を
苦みのまだ少ない若いにんじんと、これまた瑞々しいトマトが引き締める。うまい!
みくちめ。
ふたくちめまでは感じ取れなかった
ショウガやミョウガ、ちりめんじゃこ、文旦の存在が
徐々に風味として感じられてくる。うまい!
海のものもあり、山のものもあり。
ほんとにチームワークがよくできてる。まるで……
「まるでひとつの大家族、高知家みたいでしょ?」と横山さん。
ああっ、先に言われてしまった。
●高知の日曜市サンドレシピ
・生クリーム食パン(6枚切り) 320円
・タアサイ 150円
・フルーツトマト 1個100円
・釜揚げしらす100g 340円
・文旦 200円
・ショウガ 200円
・にんじん 150円
・ミョウガ 100円
・鰹のはらんぼ(塩味) 200円
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
合計 1760円
Page 4
<おまけ>
最後に、今回サンドでは周らなかった帯屋町商店街を
少しのぞいてみることに。するとすごい人だかり!
実はこの日は、毎年3月に行われる〈土佐のおきゃく〉という大宴会イベントの最終日。
商店街が宴会場と化し、
外には屋台どころかコタツがたくさん並び、
昼間から飲み食いする人たちであふれている。
日曜市も賑やかだったけど、
こちらの商店街も違った意味ですごく賑やかになっている。
この〈おきゃく〉のために帰省する人も多いようで
酒の聖地と呼ばれる所以がよーくわかった。
私は気づけば地元の方とお酒を飲みかわし、
なぜか観客の前でところてんを必死にすすっていた。
平均で5~7杯のところ、たった2杯しか食べられなかったけど、
目の前にいたおばあちゃんが「無理しないでいいからねえ~」と
孫のように応援してくれていたのがうれしかった。
これが高知家なのだな、と鼻からところてん(鰹ダシ)が
出るのを堪えながら思った。
商店街サンド #15 -- Spherical Image -- RICOH THETA
Information
高知県日曜市
Feature 特集記事&おすすめ記事