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土祭だより Vol.6

ローカルアートレポート
vol.020

posted:2012.9.23   from:栃木県芳賀郡益子町  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

editor's profile

Rumiko Suzuki

鈴木るみこ

すずき・るみこ●静岡県出身。出版社勤務を経て渡仏後、フリーランスに。女性誌や生活関連書籍の編集&執筆に携わり、2002年には初代編集長と2人で『クウネル』を立ちあげる。10年間編集に携わったあと、つぎにやるべき楽しいことを模索中。編著に『スマイルフード』『パリのすみっこ』等。

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撮影(メイン画像):矢野津々美

栃木県益子町。古くから窯業と農業を営んできたこのまちで、
9月の新月から月が満ちるまで、15日をかけて開催される土祭/ヒジサイ。
この土と月の祭りで何が行われるのか。
ひとりの編集者が滞在し、日々の様子を書きおこしていきます。

9月20日 ゆっくり満ちるもの

考えてみれば、2週間もつづくお祭りというのは、そうない。
長くて3日。それも週末などにあて、日常を忘れ
集中的に賑わいで燃えつきるといったものが多いのではないか。
土祭にしても、もちろん2週間まるまる益子の日常機能が停止するわけではなく、
週末が過ぎてウィークデーになれば、勤め人は会社に行き、子どもは学校に行くという、
ごくふつうの生活が戻ってくる。

火曜以降は、訪れる観光客もちらほらになった。
しかし、ふだんどおりの益子の営みのすぐ隣には
アートや特設ショップなどが依然として存在しているわけで、
高揚感が底に流れる静けさというか、日常と非日常が混在する面白い空気を感じている。
エッジのきいた現代アートの会場の受付で、
ボランティアのおじさんがこっくりこっくり居眠りしている様子などは、
なんとも、ほのぼのとしていい。

初日のセミナーで、小倉美惠子さんは
お祭りとイベントの違いから話をはじめていたのが印象的だった。
その意識が風土に向いているとお祭りになり、人に向いているとイベントになると。
新月の奉納演奏会から、満月の千秋楽まで。
風土と先人にじゅうぶんな感謝を捧げるのに、2週間は長すぎない。
月のテンポでゆっくり満ちるものを土祭はめざしている。

以下、昨日と今日の断片。

益子の陶芸家の若杉集さん、造形作家の庄司千晶さん、染め絵作家の冨山麻由子さんによる「益子の土を用いたそれぞれの表現」。築年明治38年の陶器店、岩下太平商店にて。(撮影:矢野津々美)

同上の展示。益子の地層を表現した作品についていた言葉。

19日の6時からは、スターネット「recode」で、土祭の総合アートディレクターをつとめる吉谷博光さんの映像作品『土祭』が上映された。前回の初日未明から満月の直会までを追った、土祭の精神あるいはエッセンスともいえる作品。その後、急遽依頼されて、なぜかわたしが吉谷さんの対談相手に。(撮影:矢野津々美)

上映とライブの合間には、ヒジノワにも出店している「色実茶寮」さんによる軽食が販売された。おむすび、おいしかった。(撮影:矢野津々美)

「土祭」のエンディングソングを歌ったarcoさんによるライブ。歌は益子の山中で録音され、同じその日にarcoさんは、お腹に新しい命が宿ったことを知ったのだとか。(撮影:矢野津々美)

戦前に窯業技術の伝習所として使用されていた小峰邸は、地元食材を使った益子の家庭料理が味わえる「土祭食堂」としてオープン。陶器店が軒を連ねる城内坂の路地裏、毎日11時半〜15時の営業。(撮影:矢野津々美)

畳に座って、わいわいと。(撮影:矢野津々美)

道祖土の信号から駅に向かう途中の右、見目陶苑の敷地には、かつての益子のまち並みを彷彿とさせる魅力的な建物が並ぶ。その奥の窯場が、小松義夫さんの写真展「たてものの未来 土の家」の会場。

映っているもの、小ささ、飾り方、どれもユニーク。

ときどき、ここで店を出すというワゴン車の移動パン屋さん「泉’sベーカリー」に遭遇。濱田庄司がブルガリアから持ち帰り、いまも濱田家に受け継がれているというヨーグルト種を分けてもらい、酵母に使用しているそうだ。

益子焼共販センターのシンボル、巨大たぬき。益子の今昔の移りかわりを、どう見ているのだろう。

共販センターの隣にある陶芸教室。

歩いていると突然に出現するビルボード。「益子の山には古い地層がむきだしになった箇所が幾つかあって、過去が現在に横溢してくるふしぎな感覚をおぼえる。それと同じ感覚をまちのなかでも起こしてみようと思った」と、アートディレクターの吉谷さんは、そんなことをいっていた。死んでしまった先人たちがいまの益子に蘇る。それがすべて働く姿であることに、どれだけの人が気づいているのだろう。

吸い込まれそうな夕暮れの空。

変わらない日常。

information

map

EARTH ART FESTA
土祭2012

2012年9月16日(日)~9月30日(日)
栃木県益子町内各所
http://hijisai.jp

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