シマフクロウ、アカゲラ、シマエナガ。
北海道に生息している鳥が描かれた、かわいらしいパッケージのチーズたち。
“チカプ”とはアイヌ語で“鳥”という意味。
そんな鳥たちが遊びにくるような、
自然豊かな場所に〈チーズ工房チカプ〉はあります。
根室市の市街地からも車で20分と少し離れていて、
深い森に包まれた場所です。

かわいい青い看板が目印。
工房を営んでいるのは菊地亮太さん、芙美子さんご夫妻。
亮太さんは神奈川出身、芙美子さんは長崎出身。
ふたりとも、都内でそれぞれシステムエンジニア、
WEBデザイナーの仕事をしていました。
そんな夫妻が根室でチーズ工房を始めるきっかけをくれたのは、
芙美子さんのお姉さんでした。
お姉さんはご夫婦で、もともとこの場所にあった牧場を譲り受け、
新規就農して〈横峯牧場〉を始めて、放牧で牛を育てていました。
「一度遊びに来たら?」
と声をかけられて、初めて訪れた根室。
北海道とはいえ本当に何もなくて驚いたそうです。

「もっとおいしいチーズがつくれるはず! と、毎回思います(笑)」と話す菊地さんご夫妻。
「三友牧場さんのチーズを食べたら、びっくりするほどおいしかったんです。
食べることも好きだったし、
こんなチーズをつくれるようになれたら……と思って」
お姉さんたちの牧場にはチーズの工房も併設され、
次の人がすぐにできるようにと、チーズをつくるための機材も揃っていました。
そこで、ふたりは都内の仕事を辞め、
中標津にある〈三友牧場〉で1年4か月、チーズづくりを学びました。


チーズ工房兼ショップ。
その後1年間は、工房で試作を繰り返しました。
工房があったとはいえ、長年使われてなかったチーズの熟成庫は、
チーズづくりのためのいい菌がいなくなっていて、
最初はうまくいきませんでした。
チーズの菌がすみ続けるようになるまでに、
何度も何度も試作品をつくっては捨てての繰り返しだったそうです。


ハードタイプの長期熟成チーズ“シマフクロウ”を作っているところ。
なんとか納得できるチーズができるまで約1年。
工房をオープンしたのは、2013年12月のことでした。
現在は5種類のチーズをメインに作っています。
チカプのチーズの原料は、牛乳と塩だけ。
チーズに使われる牛乳は、お姉さんたちが営む横峯牧場のもので、
夏は放牧で、草原の草を食べるので、風味豊かでさっぱりとした味わい。
冬は脂肪分が高くてミルキーです。
季節により味がちがう牛乳を使うので、毎回が菌との真剣勝負。
なかでも、長期熟成で深い味わいのシマフクロウをつくるチャンスは
放牧をしている夏のシーズンだけで、後の半年は熟成期間。
失敗してもすぐにつくり直すことはできません。
「調整が大変だけれど、じっくりと向き合っていこうと思います。
そうした味の違いも知ってほしいし、
楽しんでもらえるようなチーズをつくっていきたいです」
野鳥が棲む地で、ふたりのチーズづくりへの挑戦は続きます。

深い森に囲まれた牧草地に建つチーズ工房。
information
チーズ工房チカプ
