根室市街地から南西に約20km、太平洋につきだした落石岬。
落石漁港を越えて岬を目指すと、ゲートがあり、
そこに車を停めて灯台まで歩く道があります。
草に覆われた道をしばらく歩いていくと、
窓が閉ざされたコンクリート製の堅牢な建物が現れます。
かつて無線局として使われていた建物で、
現在は根室市出身の版画家、池田良二さんのアトリエになっており、
また「落石計画」というアートプロジェクトの活動の舞台として使われています。

旧無線局の建物を過ぎてしばらく歩くと、木道がまっすぐ続きます。
木道の両側に広がるのは、アカエゾマツの森。
厚い苔で覆われた木の根元が盛り上がっていて、
水芭蕉の大きな葉を広げています。
鬱蒼としたシダ植物も生えていて、
まるで太古の森に迷い込んだような不思議な場所です。
森の中でふと視線を感じてあたりを見回すと、エゾシカの親子がいました。

エゾシカの親子。森の中では、自分が自然界におじゃまさせてもらっていると感じます。
途中にはサカイツツジの自生地があり、
5月下旬から6月中旬にかけて紅紫色の花が咲きます。
サカイツツジは東アジア北部に分布する植物で、
日本ではここ落石岬でのみ発見されているという貴重な花です。

歩きやすい木道が海に向かってのびています。
約600mの木道をまっすぐ歩き、森を抜けると、
赤と白のコントラストが美しい灯台が見えてきました。
視界を隔てるものが何もない、広大なグリーンの草地と広い空。
その先にコロンとした形の灯台がたたずんでいます。
落石灯台は、1890(明治23)年、
北海道で10番目に設置された歴史のある灯台で、
『日本の灯台50選』にも選ばれています。
白い建物に入った赤いラインは、積雪があっても目立つようにするためのもの。
2010年までは、霧笛信号も行っており、GPSが普及した時代でも
年配の漁師さんにとって重要な役割を果たしていたといいます。

人の気配もなく、風の音のみ。灯台が静かにたたずんでいます。
高さ40 メートルの断崖絶壁には柵などはなく、
そのまま海へと美しい稜線を描いてそびえ立っています。
かすかに踏みしめられた道をたどって海へも近づいていけます。
一面笹や草に覆われた緑色の大地、吸い込まれそうな海と波しぶき……。
どことなくイングランドやアイルランドの風景を思わせます。


ダイナミックな風景が続きます。散策道は笹で覆われているので、トレッキング向きの服装で。
落石湿原には北海道でも珍しい植物が咲いています。
5~6月はユキワリコザクラやマイヅルソウ、シコタンタンポポ、
6~8月はシコタンキンポウゲやチシシマフウロ、
10月ぐらまではエゾノコギリソウやエゾリンドウなど
高山植物がかわいらしい花を咲かせます。

ハマナシの可憐な花。ふと目をやるといろいろな植物が咲いています。
根室には〈フットパス〉というウォーキングコースがいくつかあり、
このコースもそのひとつ。
“フットパス”とは、もともとイギリス発祥の言葉。
イギリスでは私有地の牧場や森林でも“人が歩く権利(通行権)”が認められていて、
私有地でもフットパスなら誰でも歩くことができます。
そうした歩くための道からヒントを得て、
根室でも牧草地や海岸線を歩けるフットパスがいくつか整備されています。
ゲートから落石灯台までは往復で約1時間ほど。
落石岬の突端まで一周するコースもあり、約3時間ほどかかります。
専用のルートマップが落石給油所や落石漁業協同組合、
根室観光インフォメーションセンター、道の駅ねむろで販売されているので、
マップを手がかりに、根室を感じるフットパスを歩いてみては。

こちらのガイドブックには落石岬灯台など、根室市内の自然の見所が記されています。英語、中国語もあり。
inforamation
落石岬灯台
