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posted:2021.7.20 from:秋田県秋田市 genre:アート・デザイン・建築
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writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
「生活・産業」「食」「工芸」「美術」「舞台」という5つの軸で
「あきた」のこれまでの200年と
これからの200年を探る展覧会『200年をたがやす』が
〈秋田市文化創造館〉を拠点に開催中です。
秋田市文化創造館は、2021年3月に開館した文化交流施設。
展示や公演を観賞者として受けとるだけの場所ではなく、
ジャンルに囚われないあらゆる活動の拠点になることを意図してつくられました。
オープニング企画としてはじまった展覧会『200年をたがやす』でも、
無料で自由に行き来できる空間に、秋田にまつわる美術作品や伝統工芸品、
食のレシピや進行中の市民プロジェクトの断片など、一見バラバラな分野の表現が、
建物の1階から3階、屋外のデッキや芝生広場にまで並びます。
美術館のように「順路」はなく、
何をどこから見始めていいかわからないという印象も受けるかもしれませんが、
過ごし方も受け取り方も「来館者自身に開拓してもらいたい」と自由。
異なる活動が交わることはもちろん、
会場にはブランコやベンチ、椅子やテーブルなどもあり、
勉強したり、読書をしたり、
「日常生活の一部が、美術作品やプロジェクトと隣り合うような広場」
を目指して設計されています。入館料も無料です。
ブランコのそばには、秋田県十文字町(現・横手市)の農家に生まれ、
「農民の暮らし」をテーマに、農業に従事しながら創作活動を行った
農民彫刻家・皆川嘉左ヱ門さんの作品が並び、
公園で遊ぶように作品を味わうことができます。
皆川嘉左ヱ門さんは米の輸入自由化に反対したデモ活動や、
減反田を用いた野外美術ギャラリー〈減反画廊〉の運営でも知られ、
本展覧会では「活動家」としての側面にも注目。
3階では家族へのインタビュー映像も公開されています。
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会場を歩いていると、足下に設置された丸いマークが目に入ってきました。
2階の大きな鏡の下に設けられたスポットは、
〈まちのリビング〉と名付けられていました。
寝転がって作品や建物を見上げてもよし、円窓から注ぐ光を浴びて昼寝をしてもよし、
クションを積み上げて遊んでもよし。家のリビングにいるように、
リラックスして楽しんでほしいと設計された仕掛けです。
ほかにも〈小石テラス〉〈大岩遊具〉など、
各所に名前がつけられており、なんでもない一角が特別な場所に見えてきます。
視点を変えるおもしろさを味わえる一方、
それだけではない過ごし方もしていいよという提案も。
アイデア次第でいろんな楽しみ方ができる空間です。
〈自習スペース〉と同じフロアにあるのは、
〈大館曲げわっぱ〉〈秋田杉桶樽〉〈樺細工〉〈川連漆器〉
という秋田の国指定伝統的工芸品をテーマにしたスペース。
商品となった完成品だけではなく、材料や道具、
つくり手とつかい手のインタビュー映像やエピソードが紹介されています。
『森から暮らしへ』というテーマがかかげられているように、
秋田の国指定伝統的工芸品は、
どの素材も杉や桜、漆といった、木々から生まれていることも特徴のひとつ。
〈縁台〉や〈端材アトリエ〉と名づけられたスペースに座ると、
森の香りを感じながら、つくり手・つかい手の言葉にふれることができます。
会場では、今後職人による実演・ワークショップも予定(要申込・一部有料)。
職人の技を間近に感じることができるチャンスです。
どれも直して使い続けることができる道具。
つくる過程や修理方法を聞けば、より愛着が沸き、
この先も使い伝えていきたいと思うのでは。
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9月26日までの会期中、展示が「更新」され、
変化していくことや、プロジェクトや作品づくりの
「過程」を垣間見ることができるのも本展覧会のおもしろさ。
会期を2回に分け、現在の会期『みせる』の前を『つくる』とし、
『みせる』期間にお披露目する作品の制作過程や
インタビューの様子などが展覧会の一部として公開されてきました。
舞台分野では8月、9月に
演劇公演『soda city funk』(全9回・要申込)の上演が予定されていますが、
〈稽古場〉と名付けられた会場の一角(2階)では、
稽古の様子を来館者が自由に見ることができます(開催日は不定期)。
演劇の台本は、〈秋田竿燈まつり〉〈秋田万歳〉〈白岩ささら〉など
秋田県内の祭り・民俗芸能に関わる人への取材や、
秋田に暮らす人から募った「祭りや昔話のエピソード」から
言葉を集め制作されました。
〈稽古場〉には取材の過程で感じた
演出家・児玉絵梨奈さんの言葉や、取材音源なども展示されています。
公演を観る前と観た後では、違う思いを抱くかもしれません。
公演には秋田市在住の学生や社会人を出演者に迎え、
民俗芸能に携わる人が経験するという
「神様が憑依するような超日常の感覚」の再現に挑みます。
気になる場所や、深めたいと思う場所は、十人十色。
ここでは紹介しきれないたくさんの表現が展開されています。
日を変えて訪れれば、物理的に変化しているものがあることはもちろん、
たとえ同日でも、違うジャンルの展示を体感した後、先に訪れたスペースに戻ると、
関係がないと思っていたものがつながっていたり、
見えていなかったものに気がついたり、
目線や感じ方も変化していく展覧会です。
「生活と表現の交わる広場」として設計され、
オープン後も変化し続けていく展覧会『200年をたがやす』。
秋田でたがやされる文化の一端に触れ、
秋田の新しい側面に出会えたり、作品をつくったり、
プロジェクトに参加したことがない人も、
表現や活動をはじめるきっかけやひらめきを得られるかもしれません。
もちろんただただぼんやりしたり、おしゃべりしたりするのも自由。
思い思いに「あきた」をあそびに出かけてみませんか?
information
展覧会『200年をたがやす』
会期:開催中~2021年9月26日(日)
『つくる』:2021年3月21日(日)~6月18日(金)(終了)
『みせる』:2021年7月1日(木)~9月26日(日)
開館時間:9:00〜21:00(サテライト会場Newテラス広小路は19:00まで)
定休日:火曜
主会場:秋田市文化創造館
住所:秋田県秋田市千秋明徳町3-16
入館料:無料
Web:展覧会『200年をたがやす』
information
実演・ワークショップ『“つくる”と“なおす”』
川連漆器 編:2021年7月18日(日)、25日(日)、31日(土)
大館曲げわっぱ 編:2021年7月24日(土)
秋田杉桶樽 編:2021年8月7日(土) ※実演のみ
樺細工 編:2021年9月23日(木・祝)
ワークショップ参加費:有料(回により異なる・要申込) ※実演観覧は無料
information
演劇公演『soda city funk』
公演日
2021年8月14日(土)、15日(日)、21日(土)、28日(土)、29日(日)、
9月12日(日)、18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)
※8月15日(日)、21日(土)、9月12日(日)は、終演後にアフタートークを予定
開場:14:45
開演:15:00(16:00終演予定)
入場料:無料(要申込)
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