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posted:2018.3.25 from:秋田県横手市 genre:ものづくり / アート・デザイン・建築
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writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
夏涼しく、冬暖かい茅葺屋根の家。
秋田県に、そんな茅葺屋根の小さな小屋をつくっている方がいます。
それがこちらの「運べる茅葺小屋」。
なんとも可愛らしいですね! 使い方は犬小屋として、
展示会のブースとして、遊具として……などなど、自由。
屋根の素材は「穂わら」「ススキ」「ヨシ」の3種類から選べます。
こちらを手がけたのは、秋田県〈佐藤茅葺店〉の佐藤偉仁(ひでと)さん。
屋根部分は佐藤さんが、組み立て式の木の土台は宮大工の方が
ひとつずつ手作業でつくっているそうです。
じつは現在、新たに茅葺き屋根を設置することは、消防法により、
特定の観光エリアにある特例区でしか認められていないのだそう。
茅葺屋根を見かけない理由は、日本人の暮らしが変わったから
という理由だけではなかったんですね。
そんな茅葺屋根に惹かれた佐藤さんは
「減っていく一方の茅葺屋根を次の世代の景色に残したい」
という思いから宮城県石巻市にある〈熊谷産業〉で修業。
2006年に独立し、地元、秋田に佐藤茅葺店を開業しました。
佐藤さんは、茅葺きの「茅」から自分たちの手でで育てているのだそう!
「現在は家業の稲作りと兼業しながら、自分たちで茅を育て、
ふたりの弟子とともに地元をはじめ、全国の茅葺屋根の工事に赴いています。
現在では新築で設けられるエリアが限られているため
補修工事が主ですが、一般住宅から重要文化財の
屋根工事にまで携わっています」(佐藤さん)
こちらは、佐藤さんのご自宅。
「自宅は風景の一部ような家にしたいと思って建てました。
全体の設計は知り合いの建築家の方に依頼し、
茅葺部分や茅葺小屋は佐藤茅葺店でつくりました。
景色がいいので、庭でおにぎりを食べても、おいしい気がします(笑)。
贅沢な生活をさせていただけて、ありがたいです。
子どもたちも伸び伸びと育てばいいなと思っています」(佐藤さん)
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とっても魅力的な茅葺屋根の家。
佐藤茅葺店の佐藤さんに、どんなメリットがあるのか聞いてみました。
「茅葺屋根は湿気の調整をしてくれ、天然のエアコンのような
役割をするので、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。
雨の日は屋根にあたる雨の音がしなくて、静かです。
建築素材としても大きなメリットがあり、
屋根で使った茅は畑のたい肥にでき、そこでまた茅を育てて屋根に
使える、サスティナブルな素材です。
それからヨーロッパではバイオマス燃料として利用されていたり、
水辺に生えるヨシは過剰な栄養を吸い取ってくるので、
水質の改善にも使われています。
何より茅葺の屋根は、他の素材では出せない温かみのある外観と、
入った時の癒される感じが魅力ですね」
佐藤茅葺店では「こんな風に茅を使ってみたい」「こんな遊具をつくってみたい」
などといった、茅の新しい使い方の相談にものってくれるそう。
また、全国の文化財住宅や神社などでも、佐藤さんの仕事を見ることができます。
詳しくは公式サイトやFacebookをチェックしてみてくださいね!
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