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連載

気鋭のジュエリーデザイナーが
語るものづくり。
「SIRI SIRI」前編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.005

posted:2014.5.20  from:東京都港区  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。

伊勢谷友介さんがパーソナリティを、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

土地の技術で表現する統一感のあるものづくり。

オバマ大統領来日時、横にいたキャロライン・ケネディ駐日大使が着用していた
クリアガラスチェーンが連なるデザインのネックレス。
それはメゾンブランドのものではなく、
日本のジュエリーブランド〈SIRI SIRI〉のものであった。

既存の金属や宝石など、
常識的なジュエリーの素材から脱却したものづくりが特徴のSIRI SIRI。
デザイナーの岡本菜穂さんは、
学生のときは建築やスペースデザインなどを学び、インテリア業界で働いていた。
しかし、次第に自分の表現としてジュエリー製作に興味を持ち始めた。

「昔から、アンティークのジュエリーが好きでした。
学校をさぼって買いに行ったりして(笑)。
高いものもあるので、あまりたくさんは買えませんが、
店員さんからウンチクを聞くのも好きです」と語る岡本さん。
ものづくりの背景が好きな理由を続ける。

「いまのほうが技術的には進んでいるはずなのに、手でしかつくれない時代のものでしか
表現できないものが結構あります。
ありもののパーツなんかも売っていないので、
すべて自分たちの手でつくり出さなければなりません。
きちんとつくられているものは、とても美しいです」

デザイナーの岡本菜穂さん。スラッとした素敵な女性。

建築などを学んでいた岡本さんは「構造が好き」。
その部分が、自然と建築やインテリアとジュエリー結びつける。

「建築やインテリアは、人間の身体や動きにあわせてデザインしないといけません。
ジュエリーも同じく身体に身に着けるもの。
“座る”ことも、“留める”ことも同じように構造的なこと。
それを考えるのが好きで、自然とリンクしていました」

SIRI SIRIは、先述のとおり金属などを使わず、
ガラスや籐などを使ったジュエリーが特徴的だ。
自身に金属アレルギーがあったこともあり、
金属を使わないジュエリーをつくりたいという「実験精神」もある。

「かごバッグとか、ガラスのコップとか、インテリアや雑貨だといろいろな素材があるし、
女性はそういう素材が好き。
既成概念にないものでも、デザイン次第できれいなものができないかなと、
いまでも常に考え続けています」

伝統技術を取り入れる意味。

SIRI SIRIを代表するガラスの商品は、とてもカットが繊細で美しい。
それは江戸切子でできている。
江戸切子とは東京の下町に伝わる伝統的なガラスのカット技法。
だから“日本の伝統技術を取り入れたブランド”と紹介されがちだが、
それはSIRI SIRIのひとつの側面にすぎない。

「これはインテリアの話ですが、日本のプロダクトは、
いろいろなところから取って付けたようなパーツが多く、それが不自然に見えました。
一方、海外では、地元にあるものを使ってものづくりしています。
それが美しく見える要因なのではないかと思ったんです」

地元でできる範囲でやることで統一感が生まれ、“自然”な美しさが生まれ、
そうやって伝統が育まれていくという側面もある。
だからなるべく東京でのものづくりにこだわり、
“結果的に”東京下町へ通う回数が増えていった。
そのほうが、直接会ってコミュニケーションがとれる。
会って話したほうがスムーズなことも多い。至極当然のものづくり。

伝統工芸に関わって残していきたい気持ちはもちろんある。
しかしそれにこだわっているわけではないし、
誤解を恐れず言うなれば「需要のないものは廃れていってもしょうがない」ともいう。

「需要を無理矢理生み出すのではなく、いまあるもの、いま必要なものを。
それにともなう技術を残していけばいい。
技術を残すということを目的にするより、
結果的に残っていくことのほうがいいと思います」

プロダクトありきの技術であって、逆ではない。
意識せずとも、優れた技術を取り入れている。
そんな健全な流れを生んでいるのがSIRI SIRIといえる。

製作途中の「MIRROR earrings HEXAGON」ピアス。

日本の伝統美にももちろん深い興味をもっている。
しかしそのままファッションに取り入れることにあまり興味がない。

「日本人が本当の意味で洋服を着始めたのは、戦後だと思います。
ファッションもグローバルになって同じようなデザインが増えてきたときに、
西洋文化であるファッションの世界で、日本の文化をどう表現していくのか」

かつて着物の生地を活用したいという依頼があったという。

「着物の生地は、着物だから良かった柄であり色なのです。
着物になってこそひとつのデザインとして完成するもの。
だからいきなり洋服にするのはおかしいと思います。
それよりも、そこにある日本人らしさを抽出して転化できないかなと思います」

それは例えば、こんなこと。

「昔の着物そのものを復活させようとは思いませんが、
わたしは、もっと細分化して分析するんです。
例えば浮世絵でも、“余白が○分の一、人物が○分の一、
その○対○の構図が日本文化なのではないか”と仮定してみる。
そういうやり方で日本の文化を掘り下げていきたい」

エッセンスを抽出するという考え方はSIRI SIRIの商品に表れている。
ダイレクトに“和風”ではなく、あくまでコンテンポラリーなデザイン。

また、大分の地域活性のため、
竹ひごの網代編みを使ったジュエリーをつくっている。
当初「大分のデザイナーがやったほうがいいのではないか」と話したが、
県からは「いない」という回答。たしかに都市部に比べると少ないのかもしれない。
地元に密着したものづくりを広げるためには、どうしたらいいのだろうか。

「デザインはゼロからものを生み出す仕事ではなくて、
いろいろなものを見て、そのなかから抽出してアウトプットする仕事です。
そういう体験をする機会は、たしかに都会のほうが多いかもしれない。
だから一度都会に出てみるものいいと思います。
すると、ものの見方の角度が変わる。
いろいろなものを見られる環境がどんどん広がっていけばいいと思います」

自分が表現したいものに有効な技術を採用していくことが、
結果的に地元の伝統技術を活性化させることになる。
各地域のデザイナーが同様のアクションを起こしていけば、
現代的なプロダクトでありながら、伝統産業を活用できるものづくりとなる。
そんな好例といえるだろう。

後編:【日本の伝統技術を、ジュエリーに込めて。「SIRI SIRI」後編】はこちら

Information

map

SIRI SIRI

住所:東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル2F
TEL:03-6821-7771
※ショップは平日のみのアポイントメント制
http://sirisiri.jp/

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